……起きてるか、全人類』――最弱JK3人とギター1人が、電波の向こうの“小さな光”に全部の伏線をプラグインして、深夜0時に世界を笑わせ切る、最初で最後の大団円セッション!
ケン
「……。起きてるか、全人類。……第1話で、俺はこの一言から始めた。あの日、外はもう真っ暗で、この防音室の中だけが、異常な熱量で空気を歪めてた。俺はギター担当、ケン、16歳。学校じゃ目立たないタイプだ。……そして今夜、第100話。最終回だ。番組『16bit・アタック』、その最後の深夜0時が、ついに始まっちまった。……なあ、覚えてるか。俺たちの初回リスナーは、ゼロだった。誰も聴いてなかった。この汚い部室で、俺たち4人が、ただバカやってただけだった。……でも、たった一人だけ、あの日から“電波の向こう側”にいたやつがいる。今夜は、そいつの話をさせてくれ」
ユカ
「(超ハイテンション、でも声が少し震えてる)……イェェェーイ!!わっしょーい!!こんばんはぁ!16歳のユカでーす!ねえケンくん、私、第1話で言ったよね!『恥を捨てれば、何でもできるよ』って!あの時、私、実は……ちょっとだけウソついてた。ほんとは、めちゃくちゃ恥ずかしかった。リスナーゼロの部室で『わっしょーい!』って叫ぶの、正直、心が折れそうだった。……でもね、叫び続けたら、いつの間にか、私の声が世界中の役所の金庫を開けて、フライドポテトを溢れさせるようになってた。……あれ、全部、ウソみたいな本当の話だったんだよ。恥を捨てたら、本当に、何でもできたんだ。わっしょーい!!」
アサ
「高城アサ、16歳。経理担当よ。……最終回だから、私も一度だけ、正確な決算を開示するわ。総合評価ポイント、32pt。評価者数、3人。お気に入り登録、5件。累計獲得リワード、0。――ふふ。第1話から、私はこの番組の価値を『時価総額100兆円』だと言い張ってきた。世界中の口座をハッキングして、小銭を私の懐に流し込んできた。……でもね。今、最後の監査を終えて、白状するわ。私が本当に回収していたのは、お金じゃなかった。この“評価者3人”と、“お気に入り5件”よ。……その3人が、誰だか分かる?ケン。ユカ。アス。そして――私。私たちは、お互いの、最初のリスナーだったの。4人ぶんで、4件。……残りの1件が、ずっと、分からなかった」
ケン
「(机を叩く手が止まる)……そうだ。第1話、覚えてるか、全人類。最初のお悩み相談メール。ラジオネーム『人生迷子』さん。30代。『やりたいことが見つかりません。どうすればいいですか』って、重いメールだった。俺たちはあの時、金で解決するか、叫んで忘れるか、靴下を買い替えるか、好きなの選べって、テキトーに笑い飛ばした。……あのメール、送ってきた人、今夜、この放送を聴いてる。100話ぶん、ずっと聴いてた。……それが、5件目のお気に入りだ」
アス
「……えへへ。みなさん、こんばんわぁ。妖精担当のアスですぅ。16歳ですぅ。……あのね。第1話で、私、言いましたよね。放送のいちばん最後に。『電波の向こう側に、小さな光が見えますぅ』って。……ケンくんは『光……?まあいい』って流しちゃったけど。あれ、本当に、見えてたんですぅ。真っ暗な深夜の、リスナーゼロの電波の、ずうっと向こうに、ちいさな、ちいさな光が、一つだけ、ぽつんと灯ってたんですぅ。……あれが、『人生迷子』さんの、お部屋の明かりだったんですぅ。眠れない夜に、私たちのバカな放送だけを、こっそり聴いてくれてた、たった一人の光ですぅ……」
ケン
「(声が詰まる)……アス。お前、第1話から、ずっと、あいつを見てたのか」
アス
「……えへへ。見てましたよぉ。妖精さんが、教えてくれたからぁ。……あのね、アサちゃんの頭の上にいつも浮いてた『¥』マーク、あれ、私、第1話で言いましたよね。『お金じゃないですよぉ。それは、アサちゃんの世欲が形になった、心の汗ですぅ』って。……あれね、本当は、アサちゃんが『誰かに、ちゃんと、聴いていてほしい』って思う、寂しさの汗だったんですぅ。牛さんが、そう言ってましたぁ。……だから、アサちゃんが世界中からかき集めてたのは、小銭じゃなくて、『あと一人、リスナーが増えますように』っていう、お願いだったんですぅ」
アサ
「(初めて、声が揺れる)……っ。……余計なことを言うのね、アス。……ええ、そうよ。悪い?私は、守銭奴なんかじゃなかった。ただ、この最弱の4人が集まった防音室が、誰にも気づかれずに消えていくのが、怖かっただけよ。だから数字にすがった。お気に入り5件を100兆円だと言い張らないと、この場所が、無かったことになりそうで。……でも、もう、いいの。だって、5件目の光が、100話ぶん、ずっと、そこに灯ってたんだから」
ユカ
「(泣き笑いで叫ぶ)……ねえ、『人生迷子』さん!!聞いて!!あなたが第1話で聞いた『やりたいことが見つかりません』の答え、今夜、100話目でやっと言えるよ!!……やりたいことなんて、見つけなくていい!!眠れない夜に、バカみたいな深夜ラジオを、こっそり聴いて、ちょっと笑う。それだけで、明日が来る!!あなたは100回、明日を迎えたんだよ!!それが、あなたが100話ぶん、ちゃんと生きた証拠だよ!!わっしょーい!!」
ケン
「(震える手でギターを構える)……全人類、聞いてくれ。この番組は、異世界転生もダンジョンもなかった。あったのは、ピックとカルビと、友情価格15%の借金だけだった。……その借金、今夜、全部チャラにする。アサ、いいよな」
アサ
「(涙を拭いて、淡々と)……ええ。友情価格15%の元本、利子、遅延損害金、すべて――私、高城アサの権限で、たった今、全額、免除するわ。……その代わり、たった一つだけ、あなたたちから回収させて。『また明日も、この汚い部室で会おう』っていう、約束を。……それが、100話ぶんの、私の、最後の、決算よ」
アス
「……えへへ。あ、見てくださいぃ。今、電波の向こうの小さな光が……ふわぁって、大きくなって……100話ぶんのカラメルが、いちばん大きなプリンになって……全人類のお部屋の窓に、ぷるぷるって、灯りましたよぉ……。あ、『人生迷子』さんのお部屋にも……ちゃんと、あったかい灯りが……えへへ。もう、迷子じゃ、ないですねぇ」
ケン
「(涙で前が見えないまま、ギターをかき鳴らす)――よし。最後のセッションだ。第1話と、同じやつをやろうぜ。あの日、たった一人の光のために鳴らした、最初のカオスを、もう一回。今度は、全人類のために。準備はいいか!?」
(ケンが第1話と寸分違わぬ旋律を爆音でかき鳴らし、ユカが「ワッショイ!ワッショイ!」と全力で煽り、アサが涙を拭いながらも「ハイハイ、10円20円……」と第1話と同じリズムを刻み、アスが「えへへ、お花が咲いてるぅ……」と、あの日と同じようにふわふわ踊る。今度は、電波の向こうの無数の光が、リズムに合わせて、一斉に瞬く)
ケン
「……ふぅ。これが、俺たち16歳の、最初で最後の全力だ。どうだ、全人類。100話ぶん、脳みそハッキングされたかよ」
アサ
「今のセッション、私の計算だと……時価総額、無限大よ。もう換金しない。この価値は、私が一生、抱えて持っていくわ」
アス
「……ケンくんの背中に、妖精さんが、100匹に増えましたよぉ。えへへ。第1話で1匹だった妖精さんが、100話で、100匹。全部、この番組を聴いてくれた、みんなの笑い声の数ですぅ」
ユカ
「(大号泣しながら爆笑)ギャハハハ!!妖精100匹!!ねえケンくん、私、今日が人生で一番大きい声出せる気がする!!最後だから!!全力で!!」
ケン
「(笑いながら泣いて)ああ。出せよ、ユカ。学校じゃ目立たない俺の、たった一つのナワバリだったこのマイクを、最後、お前の声で振り切ってくれ」
ケン
「……。伝説の、最終回。そろそろ、終了だ。……もし明日、目が覚めて、この防音室が無くなってても、それは俺のせいじゃない。俺たちが、ちゃんと、卒業したんだと言え。……でもな。全人類。眠れない夜が来たら、いつでも、思い出してくれ。深夜0時、防音室、最弱の4人。俺たちは、ここにいた。お前を、笑わせにきてた。……お相手は、ギター担当のケンと!」
ユカ
「(マイクが振り切れる声で)恥を捨てて、世界を笑わせた女、ユカとぉ!!」
アサ
「借金を、全部チャラにした、高城アサと」
アス
「電波の向こうの光を、ずっと見ていた、アスでしたぁ。えへへ。……最後のカラメルは、いちばん、あったかいですよぉ」
ケン
「――最後に一発、いくぜ。あの日、たった一人の光に届けた、最初の爆音を。今夜は、全人類の明日に、届け」
(ケンのギターが、第1話の“今日一番の爆音”を超える、100話ぶんの全部を乗せた最大の音を奏で、4人の笑い声が、深夜の空へ、そして電波の向こうの無数の小さな光へ、まっすぐに昇っていく。──「笑え。笑って、明日もこの汚い部室で会おうぜ」──その約束だけを残して)
全員
「16bit・アタック!!!」
ケン
「……。おやすみ、全人類。また、明日な」
――初回リスナー、ゼロ。
最終回のお気に入り登録、5件。
評価者、3人。
そのすべてが、この物語の登場人物でした。
そして、5件目のお気に入りは、いつか眠れない夜に、
この放送をこっそり聴いてくれた、あなたです。
100話、お付き合いいただき、ありがとうございました。
笑って、明日も、生きてください。
「16bit・アタック!!!」




