話とは…
璦奈のおかあさんの話とは…なんだろう。
やっぱり…あの件……ですよね?
璦奈の妊娠…
このことに関しては、璦奈と一緒のときにご両親にもご挨拶をと思っていたのに、璦奈が不在で…しかも、どこをどう話していいのやら…
そもそも、璦奈はどうご両親に伝えているのか…それすらもわからない状態だ。
璦奈から聞いている話と食い違ってるって言われたら…どうすれば…。
って思っていると、実は璦奈のおかあさんは、オレにお願いがあってきたのだそうだ。
お願い…?
なんだろう…
まさか…
父親候補から外れてくださいとか…だったりして…
もしかして、ほんとうの父親が現れた?
だから、璦奈と連絡取れなくなったってこと⁉︎
…
それは…
「とりあえず寮梧、座りなさいよ?」
母親が、椅子をひいてくれた。
…
「あ…そうだった…失礼します。」
璦奈のおかあさんの前の席に座った。
ヤバい…
なんて言われるんだ…
璦奈の前から消えてって言われるんじゃ…
…
「ごめんなさいね、突然押しかけてしまって…」
「いえ、それで…お願いって…」
璦奈のおかあさんは、とても言いづらそうに口をひらいた。
「実は…」
「はい…」
ごくりと息を呑んだ。
…
「璦奈は、今とてもまともに人と話せる状態じゃないの。」
「えっ⁉︎それは、どういう…」
「精神的に、まいっちゃったってところかしらね。だからだれとも接触したくないって言ってて…でも、寮梧くんには…璦奈はあいたくないって言っているんだけど、でも心のどこかで寮梧くんを求めているような気がしてね。最近わたしともあんまり口を聞いてくれなくて…なにかを塞ぎ込んでて…だから、寮梧くんになら、素直に話すんじゃないかって思うの。だから申し訳ないけど、璦奈にあってほしいの」
「そりゃ、もちろんです‼︎オレこそ、今すぐにでも会いたいです‼︎」
「ほんと?ありがとう。ただ…」
「ただ…なんですか?」
…
「璦奈…寮梧くんにおかしな話をしてくるかと思うの。ちょっとびっくりするかもしれないのだけど、璦奈の話を聞いてもらいたい。もしかしたら璦奈は、取り乱すかもしれない。その時は、わたしにすぐ連絡して。話は聞こえないけど、すぐに駆けつけて来れる場所に待機しているから。」
「…わかりました。」
「ごめんなさいね。いきなり押しかけて、こんなお願いしちゃって」
「いえ、全然大丈夫です」
「あと…」
まだあった…
「あと…?なんで…すか…」
「あの…場所なんだけど…」
「はい」
「県外なの」
…
遠っ…
なんで県外なのだろうか?
「あの、全然県外でもオレは行きますけど、でもなんで県外なんですか?」
…
「いろいろ調べて、そこがいいかなってなってね。だから、少し遠くなってしまうの。ごめんなさいね」
「あ、まったく問題ないです。いつ行きますか?なんならオレ今からでも…」
「寮梧、落ち着きなさいって。ごめんなさいね、うちの子璦奈ちゃんのことになると、すぐこうなっちゃうの」
「嬉しいことよ、ありがとうね、寮梧くん。でも、今日はもう暗くなっちゃうから、明後日の土曜日なんてどうかしら?」
…
明後日…
璦奈と赤ちゃんのために、とりあえずバイトをはじめたが、今は璦奈を優先しなきゃだ。
あとで、早速連絡先を交換したバイト仲間に、シフト変更をお願いしてみよう。
「はい、大丈夫です」
「そう、ありがとう」
璦奈のおかあさんは、少しホッとしたように眉を下げた。
「さ、どうぞお茶飲んで」
「ありがとう」
ホッとしたのか、母と璦奈のおかあさんの表情が和らいだので、オレも少しホッとして肩の力が抜けた。
県外の病院なのは、びっくりだったけど、でもやっと璦奈にあえることが、オレはなによりも嬉しかった。
続く。




