グラタン
もう、頭の中はグラタンだ。
…意味がわからないが、グラタンなのだ。
グラタンのまま、帰宅すると母親が
「あ、寮梧…」
と、心配そうなそして…なにかいいたげにこちらをみていた。
グラタンだからかな…
頭からグラタン溢れちゃったかな…って、思っていると、母親は…
「璦奈ちゃん、大変そうね」
って言った。
「えっ⁉︎璦奈どうしたの⁉︎なにかあったの⁉︎どうしたって言うんだよ⁉︎」
と、すごい剣幕で聞いてしまった。
母親は、目を丸くして驚いていた。
「どうしたのよ…?あんたがどうしちゃったのよ?」
って、びっくりされた。
「…オレは…グラタンだから」
「え?グラタン食べたいの?」
「ううん、それより璦奈がどうしたの?」
「なんか、入院したって」
「えっ⁉︎ど、どこの病院⁉︎オレ今すぐ行ってくる‼︎」
「ダメよ。面会謝絶よ」
…
「なんでだよ‼︎オレは…オレはっ…」
…
オレは…ほんとうの父親でもなければ、家族でもない。
…今は、ただの幼馴染だ。
そんなやつが、病院に行ってもなおさら入れてもらえないか…。
「お母さんもね、お見舞いに行こうって思ったんだけど、璦奈ちゃんのおかあさんがね、しばらくだれとも話せる状態じゃないって…」
「あか…っ」
赤ちゃんは、大丈夫かって思わず言ってしまいそうになってしまった。
自分の母親だからって、なんでも言っていいわけじゃないよな…。
だって、オレはただの幼馴染なだけなんだから…。
そもそも、璦奈の妊娠知らないかもだし…
オレは…
ほんとうの父親でもないし…
璦奈…
大丈夫かよ…
最近寝れないとか言ってたもんな…
オレがもっと早くに…
早くに璦奈と結婚の約束をしていれば…
ごめんな。
璦奈…
心で、いまさらだけど詫びた。
「あ、それで伝言ね。璦奈ちゃんのおかあさんから、寮梧に伝えてほしいことがるって」
「なに⁉︎」
「ごめんなさいだって」
「なにが⁉︎」
「詳しくは、わからない。でも、璦奈ちゃんが寮梧にごめんなさいってずっとうわごとみたいに言っているから、とりあえずごめんなさいを伝えてほしいって」
…
ごめんなさい⁉︎
なにがごめんなんだよ⁈
こっちがごめんなんだよ‼︎
一人で抱え込ませてごめんなんだよ‼︎
オレ…
ほんと…
使えねーやつだな…
自分が情けねー…
好きなやつを守ることすらできなかった…
璦奈…
ごめんな。
璦奈も…赤ちゃんも…ごめん。
どうか、二人が無事でありますように。
オレは、願うことしかできなかった。
…
透みたいに…
透みたいに、オレは璦奈を救うことができるのだろうか?
…
どうしたらいいんだよ⁉︎
まず、情報が少なすぎて身動きがとれない…。
そもそも、電話しても出ないし…
でも…
とりあえず、文章だけは送った。
読むか読まないか、わからないけど…
でも、なにもしないよりはマシなんじゃないかって思って、
(なにがあっても、オレは璦奈の味方をする。だから、相談したくなったときは話聞くから、いつでも言ってね。ひとりで無理すんなよ)って送った。
返事は来なかったけど、オレは毎日璦奈に文章を送り続けた。
その数日後、璦奈のおかあさんがうちにやってきた。
というか、学校から帰ったらすでにうちにいた。
オレに話があるのだと。
なんだろう…
あんまり璦奈のおかあさんをみるかぎり、あまりいいことじゃない気がするな…。
てか、なんか…おかあさん痩せたな。
璦奈も心配だけど…
おかあさんも、心配になるほどのやつれ具合と、なんともいえないせつなそうな表情をしていた。
…
続く。




