第13話:ちょっとそこまで
綺麗に染まる木立の風情に反して、僕はげっそりして居た。当然だ。道は言ってしまえば、木の根のないところを歩く程度の意味合いしかない。悪路だ。おまけに終わりも見えない。
ーこんな疲労感、今までの人生でも感じた事ない。たぶん。うん。
「アニマさん、ぼくちょっともう歩けないかもしれないです。」
ーちなみにあれから歩いた時間は30分だ。かっこよく歩き出した手前、これでも耐えた方だと言いたい。さっきから無言で下しか見ていない。途中でアニマがお腹を抑えており、もしかしてトイレに行きたいのかと思って聞いたら、とても嫌な顔をされたのも理由の一つだ。この世界の常識がわからない。
(あ、でも、遠くに煙が見えます。民家があるかもしれませんよ。水くらいはもらえないか交渉して見ます。)
「へ?」
ー久しぶりに辺りの景色を見た気がする。なるほど、確かに遠くに白い煙が見える。よかった、人がいるかもしれない。
僕は最後の力を振り絞ってログハウスのような小屋まで歩み寄った。木材を塗る塗料がないのか、木材はどれも茶色の土のようなものを塗り固めてあり、土壁を思わせる風貌だ。
ー雨で禿げないのか?ってか、だいぶ豪華だな!
事実、その大きさは小屋というには大きすぎる。乗用車が3台は入りそうだ。家の前には大きな切り株があり、おそらくここで薪を切っているに違いない。加えて、玄関に当たる位置には獣の皮が干してある。触手こそないが、見た目はさっきのやつにそっくりだった。ひとまわり小さいが、おそらく間違いない。胸元に穴が空いているところを見るに、銃のような武器があるのだろうか?窓から光が漏れているがカーテンで中は見えない。
「またぎ・・・か?」
「チュビ ?」
チュビヒゲは頭の上にいる、さっきから意識するのも億劫でチュビヒゲの言葉を「解釈」するのをやめてる。僕が無反応でもまったく意に介さないので問題ないが、時々ヒゲで頭皮をさすってくる。ついでに時々こめかみあたりに伸びることもあり。その度に「ひゃあ」と言って慌てて手で払うやりとりが続いていた。
(行きましょうか。)
「あ、こっちの人って親切なんですか?」
(それは・・・あまりわかりません。主様の屋敷から出たことはありませんので。ただ、やってくるホーマはみんな私を罵ることが多いです。)
「それってあんまりよくなー」
{カツ} {カツ}
ーアニマさん、躊躇ないよなあ。逆にかっこいいとも思いますが。
アニマが扉を叩く。乾いた響きの音だった。
「Bonan vesperon ! 」
ーあ、「解釈」し忘れていた。
「私たち 旅する 水 パン 欲しい」
ー初っ端で食料を要求するのは少しどうかと思わないでもないが。。。
奥から足音が近づくのが聞こえる。
{カチャ}
まだ扉は開いていない。カチャという音はどうも扉の手前でしているようだ。
ーまずいこの音・・・銃だ。
「旅人 変 、ここ 最果て。人 ない 来る 盗む 以外。 帰る または 死ぬ 」
ーあれ?この声は女性の声だ。しかも結構若く感じる。流石に10代ではないが、20台後半というのがしっくりくるだろうか・・・。
アニマも負けずと応える。物怖じしている様子は全くない。
「私たち ない 知る 道 。 帰る アライテル 宮殿 。」
{ガチャ}
その途端に扉が開いた。
「私 殺す あなた 今」
銃はまっすぐにアニマの腹に定められており、いまにも引き金を引きそうだ。
「ああ、それは駄目!!」
僕は慌てて、アニマの服を指でつまんで後ろに引っ張る。あり得ないくらい軽いアニマは僕の手に引っ張られて、一瞬でぼくの胸に激突した。力加減はしたつもりだったのだけど・・・。
(痛・・・いっ・・・・。)
「あ・・・ああ、ごめんなさい。アニマさん。。。」
銃を手に持った女性がこちらにすぐに照準を合わせる。見た目には20代後半のギリシャ系の人を思わせる地黒な肌と黒髪をしている。上下に分かれた簡単な作りの麻でできたような布に身を包んでおり清廉な印象を受ける。体格は筋肉質でしっかりしており、地球の基準で言えば70kg,170cmくらいはありそうだ。
「? キメラ と ホーマ ? 服 ない この国の。」
ー今のうちにステータスを!
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名前: ー?ー( - -)
種族:ホーマ
性格:負けず嫌い
魔力保有量: 131/162
体重:6.21g
状態:ー
魔導: 治癒魔法 狙
能力:ー
加護:ー
アドバイス:「比べることに意味なんてない」
<狙:対象への攻撃の命中能力を向上させる武法。>
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ー”狙”?”武法”?
やはり狙撃系の補助能力があるようだ。しかしそれなら武器さえなければ普通の人間と変わらないとも言える。僕は少し安心した。アニマより少し前に出ながら、両手を挙げると、チュビヒゲはすでに頭上高くに飛んで様子を見ていた。
(アニマさん、どうします?逃げますか?)
(いえ、もう少し話します。)
ーさすが姉御!これからもついて行きますぜ。
「私たち ない 危ない。 欲しい 教える 道 と 少しの 水 」
ーうん、水大事!水大事!パンがなくなったのも好印象だぞ!
よくみれば女性の後ろで同じ背丈・年齢・服装の男性が杖をかざしている。魔法使いと戦士の夫婦なのか?
ーま、まあ、まずはステータスだよね。
________________________________________
名前: ー?ー( - -)
種族:ホーマ
性格:温和
魔力保有量: 925/980
体重:5.5 kg
状態:ー
魔導:属性魔法 (火・土・風・ 水) 治癒魔法 精神魔法
能力:「危険察知」
加護:ー
アドバイス:「情けは人の為ならず」
<危険察知:命の危険の数秒前に勘が働く。>
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そして男が動いた。
「”ベラローゾ” 、 私 見る」
ー”ベラローゾ”というのがさっきの女性の名前だろうか。とにかくこっちのどこか落ち着いた雰囲気の男性の方が話が通じそうな気がするなあ。というよりもステータス的にどう考えてもお節介焼きな魔法使いタイプだろうな、これ、。
男は小声でぶつぶつと言いながら僕をじろじろと見回した。
「SIKRONIGU INTENCO ! (同期 意図!)」
ー突然の詠唱!?攻撃!?
僕はこわばったが、アニマはなぜか安心したように肩の力を抜いた。
(あーあー 君はこの国の人じゃないね。)
ー!!これはテレパシーだ!そうかこの人も精神魔法を使えたか。やっぱりテレパシーは便利だ。今度、僕も教えてもらわねばな。
(あ、そうです。初めまして。驚かせてすいません。ここからはるか遠いところから来ました。)
彼は僕の姿をジロジロと見て、合点がいったような顔をしている。アニマにはこの会話は聞こえてない。ベラローゾと睨み合うように動けないでいる。
ーくっそんなことより、部屋から漂う肉料理の匂いに意識がいってしまう。空腹でどうにかなっちまいそうだぜ!!
(ふーん。それで?なんでキチガイのとこのキメラなんかと旅してる?)
ーおー!やっぱりこっちでもキチガイ認定されていた!やっぱり、やばいんだな?奴はやばいんだな??
(僕は彼女の友達です。彼女には話してませんが、僕は彼女を自由にしてあげたい。その”キチガイ”から。)
・・・
・・・・
・・・・・
・・・・・・
しばらくの沈黙が続いた後、魔法使い風の男はゆっくり杖を下げて、穏やかに鈍い声で笑った。
(恋はいいねえ。)
ーぐ、ぐぬぬぬぬ。この男・・・。
(入りなよ。ちょうどご飯が出来たんだ。)
「へ? あ・・・じゃ、じゃあお言葉に甘えて!!!」
こうして僕の初めての異世界・異文化交流は、威嚇から始まり食事につくという、ラノベでもあまりみないような下手展開に相成った。




