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彼女は幸せになれないー巻き込まれ転移男の異世界奇譚ー  作者: 赦す内燃機関
第2章:ニラは焼かないでは食べられない
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第11話:怪物(モブ)


ーステータス!

________________________________________

名前: ーなしー( -? -)

種族:?

性格:天下独尊

魔力保有量: 325/500

体重: 84.90 kg

状態:ー

魔導:属性魔法 (土)

能力:「探知強化」

加護:ー

アドバイス:「敗北を知りたい」


<探知強化:感知器官を補助し、探知能力を向上する。>

________________________________________



身長はゆうに5mを超える。地球でこれほどの獣であれば少なくとも500kgは超えるだろう。しかし、明らかに体重が軽い。


ーやはり、軽い!昨日の戦闘ーーと呼んでいいのかわからないがーーの感触からして、これなら対処できるはずだ!ってかなんだ、こいつのアドバイス。一周回って小物感だしてるぞ?


(この獣に狙われていたのですね・・・。これは少し手強そうです。私ではとても相手になりません。走りましょう!)



「え、ええ。」


目の前の怪物は助走をつけて、こちらに突進する姿勢を見せた。よく見れば、尖った鼻の下で乱雑に生えた鋭い歯が見える。爪も恐ろしく長く、優に3人は貫通して刺し殺せそうに見えた。


ーうーん。やばい、めっちゃ強そうだ。あかんやつやろ、幾ら何でもこれ、あかんやつやろ!やっぱ逃げないと!



僕は全力で走ることに決めた。




・・・・



「来る ! 来る !」


チュビヒゲは地上から5m程上空に上がり、僕らの後を付いて来る。後ろを向く時間も勿体無い今、チュビヒゲからの情報はありがたい。周りにはまばらに木があるばかりで、隠れられそうなところはどこにもない。とかく少しでも障害物のある疎らな林に逃げないとまずい。



「ハア、ハア・・・ン・・・ゥ・・ハア・・・」


全力で走るのはありえないくらいに疲れる。100mも走らぬうちに息が切れてしまった。

アニマはこちらを振り返りながらも歩みを緩めることなく少し先を行っている。


ーやび、、やばいあ。


(早く、この木立の中でなら彼の獣も動きにくいでしょう!)



ーはやく、はやく・・・。



「グラゥラア!!」


「ひっ・・・」


すぐ後ろに近づいているのがわかる、獣臭い息が鼻に突く。よもや一貫の終わりかというタイミングで木の間を抜けれた。


{ドウゥン}


明らかに後ろでやばい音がしているが、後ろは振り向けない。木の間を蛇行しながら木に手をついて少しでも体力を稼ぐ。もう限界が近い。そもそも体力はここ丸一日の行脚で使い切っているようなものだ。眠ってさえいない!



「PERDU KONSCION ! (失神せよ!)」



木に手をつき振り返れば、アニマはいつの間にか僕の斜め後ろの木から飛び出し、手を怪物の首に触れて魔法を詠唱していた。


(触れていれば、多少は・・・)


怪物は一瞬だけ大人しくなり、バランスを失ったように見えた。


「さ、さすがアニー」


{スパンッ}


僕が言い終えるのを前に、目の前で触手の一本がアニマの横っ腹を弾いた。


「マ・・・!え!大丈夫ですか!?」


(う、うう。別に大したことないです。このローブは主様のお手製ですので、これくらいでは・・・。)


確かに、アニマは弾けるように飛ばされたが、見たところ平気そうだった。すぐに体制を立て直して、木の陰から陰へと移動している。


ーアライテルって、やっぱ凄い奴なのかもしれない。。。


「・・・グオ?」


ーくそ!一瞬だけ気を刈り取っただけで、ほとんど効いてない!!どうする、どうすれば!?


アニマが手にローブの裾から取り出してナイフを持つ。怪物はすぐに周りの状況を理解して、アニマに向き直った。僕は手に持っていた丸めた衣服を怪物に投げる。怪物はこちらを見ることなく、触手に払われた。


ーなにあれ、オートガードかよ!そりゃないだろう!




(タイラさん、私は逃げ回って時間を稼ぎます。あなたはどうぞ逃げてください。)





ーへ?これは幾ら何でも情けなさすぎる。アニマさんがかっこよすぎるとも言えるけれど・・・。ええい、勇気を出して体当たりくらいしてやるさ!



怪物はすでに、アニマを追って木と木の間を器用に抜けていく、僕は思い切り助走をつけてその背中に迫った。目の前で触手が突然にうねり始め、明らかにこちらに気づいている。おおよそ10本ほどあろうと言う触手の半分がビクンとしなった。僕は勢いそのままに肩からのタックルを怪物の脇腹に決め込むつもりで、頭を低くし突進する。


{シュン!}


「あ、マズッ!!」



2本の触手が左右に開けるように揺れた直後、僕を打つべく襲いかかってくる。的確に頭を狙っているのは気のせいではないだろう。


「仲間 危ない ! 」


僕が両手を触手の衝撃に備えようとすると、頭上からチュビヒゲが急降下し僕と怪物の間に割り行った。


{スパッ}


ーおお!


チュビヒゲの羽が触手に触れて両の触手が両断された。風の属性魔法だろうか、両断された触手がそのまま木の葉のようにひらひらと飛んでいく。そこから赤い、いや、どす黒い血液が流れ出る。

その刹那、怪物は上半身をこちらに素早くねじり、同時に右の爪が脇の下からにゅっと伸びる。だがチュビヒゲはすでに怪物の背後を駆け抜けているので、カスリもしない。床すれすれで直角に方向転換し地面を滑空すると、僕の前を左に抜けていく、残りのすべての触手がそれを追い、怪物も態勢を整えてそちらに向き直る。


ーチュビヒゲ!本当にお前ってやつは!!!


僕はそのままタックルの姿勢を整えて、右肩を突き出す。怪物は怒りでチュビヒゲにしか目がいっていない。触手も伸びきっており、すぐにはこちらに向かないだろう。


「やっぁあああ!」



的確に僕の右肩が怪物の左脇に突き刺さる。これで効かなかったら正直打つ手がわからない。逆に、チュビヒゲに任せれば解決するだろうか?



{ミシィ・・・}


ーあ、明らかに肋骨逝った音だ。もちろん、僕のじゃない。


{バキィィィ}


ーあ、まずい予想以上に飛ぶ・・・


アニマが身を隠している近くの木に当たって減り込んでいる。下手な方向に倒れたらアニマにも被害が出てしまうのではないか?


「グウ・・・」


怪物が唸り声をあげた。


「効いてないのか!?」


{ドスン}


「クウン・・・。」


ーあ、はい。死んでは・・・いないといいなあ。


怪物は倒れた木の下敷きになって、ピクピクしながら1啼きした。多分骨折くらいはしているかもしれないが、今は気絶くらいのものだろう。しばらくは動けないとしても生きてはいるに違いない。というか死なれるのはさすがに寝覚めが悪い気がする。事実それほどの恨みもなかった。


ーとりあえずステータスを見ておくか。。。


「うん、これ気絶ですわ。」


僕の体力の消費量ーーほぼ全てーーに対して今回の事の顛末は、怪物の状態異常に”気絶”の文字がついただけだった。




タイトルでネタバレ的な。

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