第8話:仲間集め
「いや、さすがに村くらいあると思ったのに。。。」
あれから2時間は歩いただろうか。青い太陽からの日差しは日本のそれより少しだけ強く、ひしひしと体力を奪う。途中で何度が休んだが、チュビヒゲは思い出したように鳴いた。
「獣 遠く ない」
え?
周りは大きな木が生えていたりするどころか、途中にはレンガと思しき塊が散らばっている場所や、錆びた鉄のような棒が散見されていた。見晴らしも悪くなっており、起伏のある地形に林が所々にあるせいであまり遠くの様子がわからない。
僕は近くに集落があることを半ば確信していたが、いくら探せど小屋の一つもなかった。ここまでは幸いなことに獣には出会うことなく、順調に歩いてこれた。とはいえ日が暮れて来たし、お腹も空いて来た。流石に丸一日何も食っていないのはきつい。
ーああ、ハンバーガー食いたい。
「ん・・・ん?」
「あ、起きました?」
Kio? Kial? Kie?
明らかにアニマは慌てたのか第一声は念話ではなかった。遅れて脳内で意味が理解される。もはや、念話がなくても<解釈>で理解できる。転移者に死角なし!
(え?え?モシ?モシ?一体何が?あ、まさか私運ばれてます?)
腕の中で聞こえるハスキーな声に思わず胸がドキドキしてしまった。すぐに静かになってしまったがいまだにもぞもぞと動いていてこしょばしい。そして僕も恥ずかしい。
「あ、安心してください。敵も帰りましたし、今は一応安全です。ゆっくり座って、休ませてあげたいところなのですが、日が沈まないうちにもう少し歩いておきたくて・・・。どうですか?歩けそうですか?」
「・・・。」
「あ、やっぱりまだどこか悪いですか?」
顔は見えないがアニマは何か強張っているように見える。
(いえ、悪くありません。)
ー改めて考えるとアニマの顔がとても近い。途中で腕が疲れて来たので、アニマの重心が体に乗るように、すこしまるまるような態勢にしていたのだ。今では肩の上にアニメの頭が乗っかるような形になっている。
(ただ・・・。)
ーただ?
(とても暑いです。)
ーあ、すいません。気が回りませんでした。考えてみれば僕も秋口の格好で来たものだからすっかり汗をかいて、パーカを腰に巻いていたくらいなのだ。毛布にローブで覆われてはそれだけで具合が悪くなってもおかしくなかった。
僕はすぐに片膝を着いてゆっくりとアニマをおろした。彼女はおとなしくしており、顔が紅潮している。すぐにローブを解き毛布を剥がす。すぐに、アニマが立ち上がろうとしてよろけた。
「あ、ああ、危ないですにょっ・・・」
柄にもなく女性の体を支えようとしたものだから、一瞬躊躇してアニマの腰を顔で受け止めてしまった。ほのかに汗の匂いがする。よかった。この辺りは人間っぽい。
(あ、あ。すいません。ちょっとローブに着替えてもいいですか?あれは体温に合わせて断熱性が変わるので。)
ーすげーそんな機能あるのかよ。ヒートなんちゃらもほにゃららドライもいらないじゃん。魔法やっぱちゃんと勉強したいな。
「あ、どうぞ、僕はあっち向いてますんで。というかもう、床に顔伏せてますんで。」
僕は余計な気を起こさぬうちに床に顔を伏せた。思い返してみると彼女は下着をつけていなかったのではないか?それって今後ろに裸の美女・・・ぐっ・・・マーラよ去れ!
(ふう・・・あ、大丈夫です。)
「よ、よし。あ、危ないところだった。」
(モシ?)
「なんでもないです!」
ー声が上ずってしまった。ついでに今はズボンのなかが収まりの悪い状態になってしまった。できればもう少し歩くのを先延ばししたい。。。
(あれ、その”ドラケト”はどうしたのですか?)
「ディアブル ?」
アニマの指差しに応じて、チュビヒゲが鳴いた。
ーあれ、チュビヒゲ種族の見分けとかできる感じ?そしてドラケトっていうんだね。
「このドラケト?は僕に懐いていて、ほらよくみると可愛いですよ。それにアニマさんに治療魔法をかけてくれたんですよ。ちなみに名前はチュビヒゲです。ヒゲが、ほらこのウネウネがチャームポイー」
(治癒魔法を私に?)
アニマは少し考え込んでしまった。確かに僕だってびっくりした。
(そうですか・・・。珍しいこともあるのですね。魔法のような能力を使う小動物もいますが、異なる種族に懐いて”治療魔法”を使うとは聞いたこともありません。)
ーうん、いやその通りだと思うよ。てっきりこっちの虫はそういうものかと納得しかけていたけど、やっぱりこいつは凄すぎる。チュビヒゲお前は特別だ!
「モシ、ありがとうございました。”チュビハゲ”さん?」
「仲間 ?」
ーチュビヒゲも嬉しそうだ。でもー
「”ハゲ”じゃない、”ヒゲ”ね!?」
ギンヤンマとメジロをかけあわせたら・・・ほらかわいいチュビヒゲの出来上がり。




