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龍魂  作者: 熟田津ケィ
ー堕ちる龍ー
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ー龍魂の限界ー

行き先は決まった。が、レイズたちはその「マナラド」と王都の距離関係を把握していない。


「マナラドは、この大陸にある町です。東に行けば、着きます」

「なら、歩くのか?」

「ホーストを使おうかと思っています。一時間もかからないと思いますよ」


ホースト。

四足歩行で、走ることが好きな動物だ。人に慣れており、しばしば移動手段としても使われている。

草食で、性格も温厚。ホーストの後ろに荷台を繋げば、荷物も多めに乗せることが可能だ。


昔から、人との生活に密接に関わり合っている動物の一つである。


「ホーストか……」


バージルは少し落胆する。今までは大陸が異なっていたことや、騎士団基地を行き来することが多かったため、飛行艇だった。

ただ、今回は陸路だ。飛行艇に比べれば不便なのは不便だ。が、仕方ない。


「……いつ出る?」

「リゼルはまだ退院できないので、もう数日必要です」

「分かった。その間に荷物をまとめとく」

「はい。依頼はしばらく止めるように私から本部に言っておきます。いつでも出れるように」

「あぁ、頼んだ」


バージルは立ち上がり、行くぞ、とレイズとミーネ合図する。


「じゃ、リゼル。またな」

「……お大事に」

「あぁ」


レイラは手を振り、見送る。

軽く挨拶を交わし、バージルたちは病室を後にした。


「…………」


違和感。

廊下を歩きながら、レイズは一人で悶々としていた。

その理由は、先程の数秒の会話。何かがおかしい。


~~~~~~~~~~


「じゃ、リゼル。またな」

「……お大事に」

『あぁ』


~~~~~~~~~~


(……リゼルが、返事を!?)


問題解決。

一人、レイズはそれにひどく感動していた。


「……ねぇ、龍魂自体があたしにはよく分かってないんだけど……」

「ん?」


病室を出て、こちらの声が二人に聞こえないくらい離れたころ、ミーネが口を開く。


「龍力の『強い・弱い』って、単にどの程度龍を引き出せるかってことよね?」

「……もの凄く単純に言えば、な」


龍魂は、人と龍とのバランス。

龍力を引き上げれば引き上げるほど、自分の意識が引き込まれる。


「なら、どんな人でも限界はある訳よね?バージルも意識してる?」

「え?どうだろうな……俺は慣れてるから、無意識に……こう、『ピタッ』って感じで、『いつもの感じ』になるようにしてる、かな」


スタートがゆっくりか、爆発的かの差はあれど、自分の『いつもの感じ』は大体把握している。

よって、新人のように様子を見ながら龍力を上げていく機会はめっきり減った。


「そう……あたしは、どうしても様子見ながらゆるやかに、って感じなの。レイズは?」

「マジで感覚だな。でも、何となくだけど、しんどくなる手前で止めてるイメージかも……」

「あ、少し分かるかも」


『これ以上上げると意識が飛ぶ』極端だが、レイズもミーネもそこを気にしている。

よって、いくら龍力を上げたくても、心のブレーキがそこでかかる。仮にそのブレーキを無視して上げることができたとしても、その先は『暴走』であろう。

だから、ミーネはリゼルがイメージしていそうな『限界を超える』ことの理解が追いつかないのだ。


「龍力を上げまくっても、暴走しない『何か』がある訳?」

「……知らねぇよ。俺に聞くな」

「(一応)歴は長いんでしょ」

「一般知識レベルだ。そんな力を求めるような状況、まずなかったし」


リゼルは何か希望を持っているようだが、レイズたちは全く想像できていない。


龍の引き出し方なのか、それをコントロールする力なのか、そもそも考え方そのものが間違っているのか。


(何とかなんのかよ。実際……)


龍魂に少なからず慣れているバージルですら、信じられない話だ。


龍魂は龍魂。それ以上でもそれ以下でもない。そう思っていた。

しかし、それならばなぜ力の差が顕著に出るのか。

同じ龍魂ならば、力関係は互角か、どちらかが少し上回るかで落ち着くはずだ。

それなのに、歴然たる差があったらしい。


「……でも、あいつはあの戦いで何か違うものを感じ取った。それは確かなんだろ」


龍魂のレベルアップ。或いは、質の探求。

そんなものが存在するのだろうか。が、無いと言い切れないことも事実。


人それぞれ、龍魂のクセがある。

バージルの「ピタッ」っと上げるやり方が、レイズやミーネにハマるとも限らない。

逆に、「今のやり方に慣れているだけで最適解が別にある」可能性だってあるのだ。


(慣れてはきたはず……けど、『これ』が正解なのか分かんねぇ)

(暴走は、大丈夫……でも、それは小さい力のときだけ……)


正直、龍力を引き出す『イメージ』も自分の中で曖昧なままだ。

何となく集中してみたり、内から湧き上がるエネルギーなんかを想像していたりはする。


そういう意味では、龍魂の上と言うか、より『効率の良い力の引き出し方』はあり得そうだ。


「リゼル的には、その違いがフリアとの力の差ってことになるのか?」

「そう考えてるみたいだな」


リゼル、レイラはあの場所で何を見て、何を感じたのだろうか。

こうなった以上、いつか自分の前にもその力は立ちはだかるだろう。

その時に、心折れずに戦えるだろうか。


龍魂数年選手の彼らが無理だったのだ。

数か月の自分にできるのだろうか。

レイズ、ミーネの不安は強く、大きくなるばかりだ。

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