調査
バージルは急いで本部へ戻り、図書室で名簿を捲っていた。
ここ最近は、「レ」「フ」「ヒ」の項目ばかり見ていたため、何となく順番も覚えている。
それに、『シャルトゥ』の文字も。
名簿を見て分かったことだが、意外と「レイ=○○」の人間は多かった。
レイラのように、レイ○、レイ○○の文字は視界から削除した。何となくの文字列と=の位置で、名前を認識している。
「レイ=アインズ」
「レイ=アウラス」
「レイ=イガランナ」
(し、し、し……!!)
だが、こういう時に限って、ページが上手く捲れない。
場所の検討はついているのに。
「レイ=サイファー」
「レイ=シンボラー」
(くっそ!行き過ぎた!!)
戻ろうとした時だ。
「待ちなさい!!」
怒鳴り声と同時に、図書室の扉が空いた。
そこには、騎士団の事務部の偉い人がいた。一人ではない。三人ほどいる。
「ッ!!」
慌てて名簿をバタンと閉じる。
普段なら、ダミーの勉強本を用意しているところだが、急ぎだったために、ドフリーだ。
これでは誤魔化せない。
図書室にもかかわらず、静かにする気配もなく、ずかずかと足音を鳴らしながら入ってくる。
そして、その集団はバージルの横で止まった。
「君かね?頻繁に名簿を見ているのは」
「……はい」
「……来なさい」
上にもバレていた。言い訳を必死で考える。が、出てこない。
バージルは小部屋に連れていかれた。
そこで、長時間の面談を行うことになる。
そして、夜。
「つ……疲れた……」
バージルは一人、部屋で先ほどのことを思い出していた。
事務部は、最近名簿を借りだされているこのを気にしていた。
しかも、騎士団上層部が気にしている「レ」から始まる冊子ばかり。
申請時の名前から、「レイラやリゼルと同じ部隊」であり、信用度は高い。だから、しばらくは目を瞑っていた。
上層部は、『レイ=シャルトゥ』の存在を知っているし、行方不明であることも把握している。
その矢先、新人団員が「レ」から始まる名前の住所録を読み漁っている。
騎士団側から見れば、レイについて探りを入れているとしか思えないのだ。しかも、事実である。
事情を聞かれたが、正直には話せない。
同期がどこに配属になったか知りたかった。や、以前迷惑をかけた団員に連絡が取りたくて……など、苦しい言い訳で乗り切ろうとした。
しかし、それでは「レ」が載ってある冊子ばかりを利用した理由にはならない、とぶった切られた。
当然だ。が、覚えきれなかった、とか、A氏とB氏を入れ替えたまま覚えてしまっていた気がして、など、 ヘボい言い訳で誤魔化すしかなかった。
口を割らないと理解したのか、大きなため息をつかれた後。
「……以後、単独での使用を禁ずる」
名簿の閲覧禁止とまではいかなかったが、一人で名簿を見ることは禁じられてしまった。
が、一人で見れないのなら、禁止されたも同然だ。
(あと少しだったのに……)
誰かに頼もうにも、検索ワードがシークレットなだけに、頼みづらい。
まぁ、レイのフルネームが『レイ=シャルトゥ』の可能性があると分かっただけでも及第点とするか。
一回考えを放棄し、ベッドでくつろいでいると、レイズが帰ってきた。
「お、バージル。今日は忙しかったのか?」
「ん、あぁ、悪い。行けなかった」
ずっと事務部で事情を聞かれており、リゼルのところへは行けなかったのだ。
「リゼルが目を覚ましたぞ」
「マジか!!」
バージルは起き上がる。
「あぁ。まだ本調子じゃないけど、会話もできる。一安心だな」
「ふー、良かった……」
リゼルが回復した。これでレイラも元気が出るだろう。
そうすれば、ゆっくりでも前進できる。
(『レイ=シャルトゥ』の件は一旦置いとくか……)
どの道、これ以上の調査はできない。
バージルは、一旦特別部隊の日常に戻ることにした。
(すまねぇ……フォリア……)
この件は闇に葬られる。
彼女の勇気も、無駄に終わる。
だが、情報として持っておく価値はある。
このカードを切るタイミングは見切る必要はあるが、無駄にしたくはない。
調査を断念せざるを得なくなった今、それが役に立つのかは、不明であるが……




