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天藍を想う君 ~あなたの心に触れたくて~  作者: 乙宮 楓
支えとなりて

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39/42

皆、私と目を合わせようとしない

私に近づく人はおらず、みんなどこか

怯えたように距離を置く


気づけば、それが当たり前になっていたのに

――


(……何故?)


胸の奥に抱いた疑問をそのまま口に出した。


どうして逃げないの?

どうしてこんな私を怖がらないの?


彼はすぐには答えなかった。

少しだけ考えて、それから口を開いた



「‘’心に笑顔を咲かせれば、人は幸せになれる‘’」



「え……?」


不意に告げられた言葉に戸惑っている私へ、

彼はゆっくりと歩み寄り

私の目の高さに合わせて、姿勢を低くした。



「父さんが、そう言ってた。だけど、

お前が笑ってる顔なんて、見たことないし」


真っ直ぐな声だった。彼はそこで一度言葉を切り、

少しだけ眉を下げて言った。


「俺、泣いてる顔しか見てない」


彼はそうキッパリと言った。

私は思わずムッとして言い返した。


「…わ、私泣いてなんかない」

「いいや」


反射的に否定した私の言葉を、彼は静かに遮った。


「涙がでてないだけで、お前はずっと泣いてる。

お前が気づいてないだけで、泣いてるんだ」


「--っ!」

胸がドクンと鳴った。なぜか言葉が胸に突き刺さる


「泣いてるのに、無理する必要なんてない。

だって、……心が泣いてるんだから」


彼は真っ直ぐ目を逸らさず、

ひとつひとつ丁寧に優しい言葉を紡いでいく


「泣き止むまで、自分の心に身を任せればいいんだ。離れ離れになった心と体が合わさるまで、ゆっくりと休めばいい。一緒に在るはずのものが、離れているんだ。誰も責めたり、苦しめようとしたりしないよ」


そこへ風が優しく吹き

花たちは穏やかに舞う


「………」

私は何も言えなかった。

でも、ふわっと心が少しだけ軽くなった気がした



「だから、‘’泣いてるお前なんて、全然怖くない”」


その言葉に胸が揺れる。

どこからか微かに耳へ、森のせせらぎの音が聞こえてきた。



「父さんが‘’心が雨で濡れている人がいたら、

助けが必要なんだ‘’って言ってた。

‘’雨の中だと、芽を出すだけでも勇気がいる。

俺たちは、ただ傍に寄り添って傘になればいい。

たったそれだけで、その人は芽を出しても大丈夫だって安心出来るんだ。

焦らなくていい。少しずつ大きく育てば、

雨だっていつしか恵みの雨に変わる‘’って」



私は何も言えなかった。

けれど、開かれた目からは

一雫の涙が頬を静かに伝っていた。

胸の奥に溜まっていた何かが、

ゆっくりと解けていくみたいだった。



「……余計なお世話かもしれないけど」


彼は少しだけ視線を逸らして、頭をかく


「俺はお前のこと放っておけないからな」


ぶっきらぼうな言い方。

けれど、その奥にあるのは

あまりにも真っ直ぐな優しさだった


「文句があるなら……と、父さんに言え。」


彼は恥ずかしそうに言った。

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