2.旅立ち
ってこともあったなあ。懐かしい。
十歳になった俺はそんなことを思いながら孤児院の院長とともに村の端までやってきた。今まで孤児院の敷地から出たことがなかったので非常に新鮮な感覚だ。
村の端は柵で仕切りがされているので分かりやすい。ただ、何故こんな仕切りが必要なのだろうか?
「ソウタ。お前、今まで自分が食ってきたものをどうやって私たちが手に入れてたのか知らないだろ?」
何を言ってるんだ? 倒したモンスターだったり収穫した野菜を食べてたんだろう? 違うのか?
「今からそれを見せてやるよ」
そして院長が柵を飛び越えた瞬間だった。院長の目の前に、牛のようなモンスターが突如として現れたのだ。しかも頭の上に(カウルー Lv.10)と表示されている。
「なっ!? えっ!? 今どこから!?」
「無からだよ。こいつらは突然、無から現れやがるんだ」
そんなバカな。あり得ないだろ!
「まだ驚くには早いよ。それでこいつを倒すとっ!」
モンスターの首を院長が剣で切り落とした途端、モンスターはパッと消えてしまった。
「消えた……」
「そう。消えるんだ。そして、アイテムだけが残る」
「アイテム? 何も見えませんが」
「拾うまでは討伐者にしか落ちたアイテム、つまりドロップアイテムは見えないし、触れもしないのさ」
そう言って院長が地面に手を伸ばし、何かを掴む動作をすると、院長の手に肉塊が現れた。
「どうだ、見えるだろう?」
「はい、肉が出てきました」
「これが世界の理さ。無から出てきたモンスターを倒して、落としたドロップアイテムを私たちは食っている」
ええ? ゲームの世界かなんかですかこの世界は。
「じゃあなんで今まで生きてきた中でモンスターが目の前に現れなかったのかって思うだろう? 実は、村の中にはモンスターは出現しないんだ。というより、出現しない場所に村を作ったというべきか」
「なるほど」
「その境がこの柵だ。この内側ではモンスターは出ないし、外側ではモンスターが現れる。そして村から遠くに行けば行くほどモンスターは強くなっていく。だから、この星の裏側に一番強いモンスターが現れるんじゃないかって予測がされている。それを追い求めてるのが、冒険家だ」
ふーん、なんとなく分かってきたぞ。しかしなんで今その話を?
「お前ももう十歳だからな。自分の進むべき道ってやつを決めなきゃならない。孤児院で紹介している職業に就いてもいいし、冒険家になってもいい。この世界のルールを知って、お前はどうしたいんだ?」
そうか、そういうことか。それを決めさせるために今日、院長は俺をここまで連れてきたんだ。
「俺は……冒険家になります」
「ふうん……そうか、まあ止めやしないよ。じゃあ早速明日にはお前を孤児院から追い出すからね」
「え!?」
「え、じゃないよ。冒険家になろうってやつを養ってやるほどうちに余裕はないんだ。分かったら今日中に準備しな」
「分かりました」
翌日。
「気をつけてねソウタ。たまには孤児院に帰ってきても良いからね?」
「ありがとうレイラさん。本当にお世話になりました」
院長からもらった剣などの装備を身につけ、俺は孤児院から旅立った。正直不安も大きいが、頑張って冒険家として生きていこうと俺は誓った。




