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第1話 マドモアゼル

十字都。十字市。


ヴィクトリアス学院。

そこには、女子生徒は、一人だけ。

一人だけの女子生徒。

女子生徒は、他の男子生徒全員に愛されなくてはならない。

男子生徒たちをトリコにし続けなくてはならない。

規則があった。


“マドモアゼル制度”。


迷い込む。愛の迷路。

女子生徒は、迷い込む。

愛に満ちた男たちの学院へ。


『ようこそ』


第1話 マドモアゼル


マドルは、走っていた。

今日もねらわれているからだ。

愛に飢えたオオカミたちに。


「マドル。愛しいキミ」

「アイ・ラヴ・ユー。マドル」

「キミしかいない」

追いかけてくるのは、愛に飢えた男子生徒たち。

つかまったら、最後。愛の誘惑に落ちる。

べたべたさわられる。

指先。腰。足。

さわられてしまう。

心をねらう、獰猛なオオカミたちに。

「…負けられないわ」

マドルは、振りはらう。

「悪い子だ」

男子生徒の一人が、マドルの道をふさぐ。

悪い子なのは、どちらでしょう。

オオカミは、牙をむく。

マドモアゼル制度がある限り、マドルは、オオカミたちにねらわれ続けなくてはならない。

走り抜ける。

学院の中は、迷路。

大きな扉を前にして、ドアが開かない。

「追い詰めたよ。愛しいマドル…」

優しく、オオカミがすり寄る。

「愛しているよ。マドルだけを…」

すり寄る。

「私は…!」

マドルは、心の中で叫ぶ。

愛する人は、ただ一人。

一人しか愛せない。

何人も同時に好きになれない。

「せめて、一人ずつなら…」

声に出てしまう。

ただ一人だけを愛したいと言えない。

この学院に入ったからには、唯一の女子生徒は、男子生徒全員に愛されなくてはならない。

そうでなければ、規則をやぶってしまう。

このヴィクトリアス学院にいられなくなってしまう。


「そこまでだぜっ…!」

「待ってあげてよ」

「待ってください」

三人の男子生徒が立ちふさがる。


「ハモニス!ファッソ!ラシード!」

マドルは、三人の名前を呼ぶ。

“風紀委員会”の三人組だ。

「マドルに近すぎだぜ」

「校則により、過激行動禁止だよ」

「やめてください。オオカミさんたち」

三人は、オオカミ男子生徒を退散させる。

不平不満をつぶやきながら、オオカミたちは去っていく。


「ありがとう。ハモニス」

「いやいや。いいってことよ」

ハモニスは、強気な風紀委員男子。

「ありがとう。ファッソ」

「いいよ。マドルのためだもん」

ファッソは、無邪気な風紀委員男子。

「ありがとう。ラシード」

「マドルさんのためですから」

ラシードは、穏やかな風紀委員男子。

三人組は、知ってくれている。

マドルの秘密。


『いってらっしゃい、マドル』


大きな扉が開く。

「おはよう。マドル・オーランド」

金髪。青い瞳。

ヴィクトリアス学院の理事長。

アレキサンダー。

マドルの愛しい人。たった一人の男性。

このヴィクトリアス学院にいる最大の理由。

“愛する人の近くにいたいから”。

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