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死の香り二輪 ー死なない殺人鬼と死を呼ぶ少女ー  作者: へびーねこ


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1/6

その花は出会いを果たす

夕焼け。

とある町の大通りを、夕焼けが照らしていた。

背に日光の暖かみを感じながら、私は無数の警官の前に立っていた。


「武器を置け、撃つぞ!」


声をあげた警官の方に、拳銃を向ける。とっさに、警官は盾の後ろに隠れる。

私は、すっ、と。わずかに銃口を上にそらした。


ダン!


銃声が響く。動揺する警官たち。

少しして、着弾した飲み屋のかけ看板がぐらりと揺れ、ガシャ!と音を立てて落下した。

真下に居た警官はそれに押しつぶされ、あっという間に人の形を崩してしまう。


「撃て!」


合図とともに、数発の弾丸が私めがけて放たれる。しかしその弾は私を掠めもせずに明後日のほうに着弾する。

奇妙な光景に思えるかもしれないが、私にとってはこれが日常なのだ。

あとは彼らに背を向けて走り去るだけだ。そう思った時、


「諦めろ!貴様は包囲されている!」


振り返れば、応援であろうパトカー。見上げれば、数機のヘリコプター。

面倒だ。こうなったら、全員殺ってしまうしかないではないか。

仕方なく、銃を構え直した時だった。


ドカン!


上空から爆発音がした。

見ると、ヘリが黒煙をあげながら我々をめがけて落ちてきている。

「逃げろ!」という誰かの声とともに、散り散りになる警官。私も落下物に備えつつ、その場から離れる。

数秒後、ヘリは逃げ遅れたパトカーの上に墜落し、辺りを火の海に変えてしまった。

パニックになる民衆と警官。

しかし、一番異様なのはそれらでも、そんな中で無傷の私でもなかった。

__火の海の中。慌てもしない様子で、一人の少女が佇んでいた。

十二歳ほどだろうか。やせこけ、ぼろぼろの服を着た、とてもこの場には似合わない少女だった。


「そこのお嬢ちゃん!早く逃げなさい!!」

「!」


少女は何よりもおびえた様子で、駆け寄る警官を見る。


「だめ、そんな、わたしを……!」

「いいから、早く__」


ドカン!


警官が言い終わるより早く、再びヘリの残骸が爆発音と炎を上げた。

そして、飛び散った金属片が、警官の胸を貫く。

それを見た少女は、怯えるでも、悲しむでもなく。


「あーあ……」


と、落胆したような声を漏らした。

あまりに奇妙なその少女に、私はとてつもない好奇心を抱いてしまった。


「そこのアンタ、ちょっとこっち来なよ。」

「! あ、あなたも…!」


嫌がる少女の手を引き、路地裏へと連れ込む。


………


日も、火も。何も届かない暗い路地裏。

連れ込まれた少女は、というと……()()()()()にこちらを見ていた。


「怖がらないんだね、珍しい。もしかして、私を知らないの?」


尋ねると、少女はすぐ近くの張り紙を指さす。

【大量殺人 川崎 舞 懸賞金500万円】の文字とともに、私の顔写真が掲示されている。


「知ってはいると…それでなんで怯えないの?」

「だって、あなた。生きてる。」

「…は?」

「わたしがいるのに。生きてる。」


ふざけている。そう思った。

ホームレスのような薄汚い格好。抱えられた、ぼろぼろの犬のぬいぐるみ。見た目からして、教養はなさそうに思えた。


「これでも、わからない?」


そう言い、少女の喉元にナイフを突きつける。

すると、少女はゆっくりと目を閉じ、「お願い。」と呟いた。

バカにされているのか?

腹が立った私は、そのままナイフを喉に突き刺そうとした。

……しかし、それは叶わなかった。

ぱき、と音を立て、刃が折れてしまったのだ。

仕方ない。拳銃を取り出し、少女の額に突きつける。


「ふしぎな人……」


少女はそう言って、少し安心したような顔をする。

何処までも舐められている。そう感じた思いのまま、引き金を引く。


カチッ


発砲音の代わりに、乾いた音がした。弾は入っているはずだ。

しかし、何度引いても弾は放たれない。

使い物にならない。苛立ちのままに銃を地面に投げ捨てる。近くの花瓶に当たり、花瓶が倒れる。


「お花は、大切にしないとだめよ。」


少女は花瓶を立て直し、こちらを見る。


「あなたって、ふしぎね。」

「アンタも、十分に変わってるけど。…名前は?」

「……川橋 冥。パパは、メイって呼んでくれてた。」


数秒置いて、そう答えた。


「メイ、ね。私は舞。知ってるとは思うけど。」

「マイちゃん……」


マイちゃん、マイちゃん……と、何度もぶつぶつと繰り返す。

しばらくそうした後、覚えた。というように一度頷いてから、顔をあげて口を開いた。


「マイちゃんは、どうして死なないの?」

「あー、さっきの?よくわかんないんだけど、私、死なないんだよね。どんなことが起きても。」

「そうじゃない。」


彼女は、心底不思議そうな顔をして言った。


「なんで、わたしとかかわっても、死なないの?」

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