第9話 地獄の頂上決戦 、閻魔様と灼熱ボルダリング!
「カカカ! 最終競技は『極限・絶壁ボルダリング』じゃ! 垂直180度、いやもはや逆さまの岩壁を、素手で登り切った者がこの『死・SUKE』の真の覇者となる!」
蓮禅の実況が響き渡る中、目の前の「そり立つ壁」がさらに変形し、溶岩が滴り落ちる超高難易度のオーバーハングへと姿を変えた。
【地獄のパワー・クライミング】
「いいか魁斗、わしが先に頂上のゴールボタンを押せば、お前は永久に『おろし金エリア』で大根役者として働くことになる。……行くぞ!」
ドォォォォォン!!
閻魔大王が巨大な体躯に似合わぬ身軽さで岩壁に飛びついた。一掴みごとに岩が砕け、火花が散る。
「ちょっと! 閻魔様、その体格でボルダリングは反則でしょ! 岩が可哀想だわ!!」
ミオのツッコミを背に、魁斗も必死に岩に食らいつく。
「熱っ! 掴む場所、全部1000度超えてんじゃねーか! 俺の手が焼き鳥になっちまう!!」
「フンッ!!」
閻魔が大岩を掴むと、その岩が「ホールド(足場)」ではなく、魁斗に向かって投げつけられる「障害物」へと変わった!
「ちょ、投げた!? ボルダリング中に足場を投げる奴があるか!!」
「地獄のルールはわしだ! 避けてみせよ!」
空飛ぶ溶岩岩が魁斗を襲う。魁斗は右腕のノイズを壁に突き立て、無理やり体をスイングさせて回避した。
「ミオ! 応援だけじゃなくて、あのジジイの目を逸らしてくれ!!」
「任せなさい! 『幽霊・目潰しフラッシュ』!!」
ミオが自身の青い炎を最大出力で爆発させ、閻魔の真ん前で閃光を放つ。
「ぬおっ!? まぶし……っ、この火の玉、小癪な真似を!!」
閻魔が一瞬怯んだ隙に、魁斗は勝負に出た。
「……掴む場所がないなら、作ればいいんだろ! デバッグ・グリップ、起動!!」
魁斗が壁に触れるたび、黒いノイズが岩壁を浸食し、物理的にあり得ない角度で「バグった足場」が次々と突き出していく。
「な……わしの壁を勝手にリフォームするとは!」
「リフォームじゃねえ、これは『攻略』だ!!」
魁斗は生成したノイズの階段を爆走し、ついに閻魔の頭上を飛び越えた。
頂上にある巨大な「クリア」のゴールボタン。二人の手が同時に伸ばされる。
「不純物が……このわしを越えようというのか!!」
閻魔の巨大な笏が振り下ろされる。
「越えるんじゃねえ! 俺は……帰るんだよ! 冥師匠のところに!!」
魁斗の右腕から溢れ出たノイズが、閻魔の笏を強引に「バナナ」に書き換えた。
「……え?」
一瞬、閻魔がバナナを握ってポカンとしたその0.1秒。
バチィィィィィン!!!
魁斗の掌が、ゴールボタンを全力で叩き潰した。
「……判定、不純物・魁斗の完全制覇じゃああああ!!!」
蓮禅の絶叫が地獄中に響き渡り、空から大量の「血の紙吹雪」が舞い落ちる。
「やった……やったわよ魁斗! 閻魔様にバナナ持たせて勝つなんて、あんた歴史に名を残したわよ!!」
ミオが狂喜乱舞して魁斗の周りを回転する。
「……はぁ……はぁ……。バナナ……。……ふっ、くはははは!」
閻魔大王は手元のバナナを見て、突然豪快に笑い出した。
「面白い! 地獄の王をここまでコケにしたのは、お前が初めてだ。……認めよう。お前は不純物だが、その不純さは……地獄の退屈を殺すに十分だ」
閻魔が立ち上がり、バナナ(を再び笏に戻して)を振ると、目の前に現世へと続く輝く門が現れた。
「行け。だが、冥によろしく伝えておけ。『次に来る時は、もっとマシなお土産を持ってこい』とな」
「……土産がバナナじゃ不服かよ。……ありがとな、閻魔大王様!」
ボロボロになり、中身もおろし金で半分近く削られた魁斗だったが、その目はかつてないほど輝いていた。
不純物の物語は、地獄を飲み込み、次なるステージへと加速していく!
地獄特訓編 完結
つづく




