12:オレは、成犬ユーシャ side/白いポメラニアン
ブクマ登録ありがとうございます!
******
オレの名前はユーシャ。一歳半のポメラニアン、真っ白な毛並みが自慢の立派な成犬だ。
オレは所謂、保護犬ってやつらしい。なんか【イホーブリーダー?】ってやつに飼われてた?いや、ゲージの中に閉じ込められてたから、汚れ放題だし、痩せてたし……それでもギリギリ、エサは毎日少量だけど入れてくれていたから生きることができた。この時ばかりは小型なのが幸いしたな
一歳を迎える頃に、なんかよくわからんけど保護されて、洗われて、エサ貰って……でも、わけがわからなかったし、しばらくはゲージの隅でじっと警戒していた。
だって、イホーの奴はイライラしてるとゲージを蹴ったりしてきてたから、コイツらもそうなるかもしれないだろ?だけど、ここではそんなことは一度もなかった。
オレよりも長くイホーのところにいた、オレ達が長老って呼んでた【G舎】の老犬は、もう何もかも諦めていたから、最後まで馴染むことなくあっさり死んじまった。
でもさ長老、【すたっふ】ってやつらは泣いて、抱き締めていたんだぜ?だから、オレはすたっふを、人間を信じてみることにしたんだ。
オレの名前の由来はゲージが【U舎】に入れられていたから、ユーシャだって言ってたけど、響きは結構気に入ってるんだ。イホーは【ユー】とモノのように呼んでいて嫌いだった。
ちなみに【I舎】に入っていたやつはアイシャ、【L舎】はエルシャと何だかメスっぽい名付けだったけど、どちらもオスのパグだ。【Q舎】のキュウシャは古臭い名前だけど、生後半年のジャイアントラビット、【T舎】と【Y舎】は双子の子猫で、ティシャツ、ワイシャツと可愛がられていた。なんでこいつらだけ【ツ】がついたのかはわからないけど、特別な感じが羨ましいなって思った。
そして、運命の日がきた。一歳半になり立てのある日、オレの目の前にはいつものエサ入れ、いつものドッグフード。何も変わらない、いつも通りの平和な日だ。さて、今日も頂くとするか……と思ったら、エサ入れが消えていって、気付けば大勢の人間にオレは取り囲まれていた。
人間もフリーズ、オレもフリーズした。エサは消えちまうし、すたっふではない見覚えのない人間と知らない場所、そして臭い。
まさか、この得体の知れない奴らに攫われたのか?それともこいつらが【サトオヤ】ってやつなのか?オレの体調もしっかり安定したことで、『そろそろサトオヤを募集しましょう』って、すたっふが前に言ってたよな。それにしたってタイミングが悪すぎる。せめてエサを食べた後にして欲しかった。
その内に、一人若いすたっふみたいなやつがオレに話しかけてきて【ユーシャサマ】って呼んでいる。【サマ】?なんか特別な、カッコいい響きだ!
それに、何を言ったかはわからないけど、【ドッグフード】って確かに口にしていた!なんだ、コイツがエサを用意してくれるのか、良かった!と思い、オレは一生懸命話し掛けた
「おい、早くエサくれよ!おい聞いてんのか?ちょっとでいいからさぁ、多めに頼むよ、な?」
それからは、ゲージに入れられることはなくなった。広い家に連れて来られて、知らない臭いが気に入らなかったから、まずはマーキングを始めた。すたっふが何か言っていたけど、わからない。でも慌てて追い掛けて来る遊びは中々楽しかった。
ここでは、カリカリのエサが出て来ない。最高にうまいけど、噛み応えが足りない。いや、美味いんだけど、刺激が欲しい。ボリボリしたい
言っても無駄なことはわかっていたけど、文句を言ってみた。とは言え、美味いからしっかり残さず食べるし、皿まで綺麗に舐める。次の食事が必ずあるとは限らないから。まぁ、あっても舐めるけど
1ヶ月、毎日すたっふと寝食を共にしてオレは気付いた。このすたっふは信用できるって。食事も一緒に食べるし、オレがトイレの時もすぐに気が付く、不思議だなと思ったのは、部屋はオレの方が広かったことなんだけど、ポツンといるのは寂しい。でも寝る時以外はとにかくずっとオレと一緒にいてくれるんだ。そりゃあ、もうナカマって思うだろ?
言ってもわからないはずなんだけど、オレが「おい、ナカマ~ボールで遊ぼうぜ」と言うとニコニコしながらボールを持ってくる。ナカマは勘がすごくいいやつなんだな天才だ!
それからようやく外に散歩に出られるようになって、いつものように用を足したんだけど、ここの庭は木が動き出したり、花が咲いたり、めちゃくちゃおかしな庭だった。
でも、ナカマが「スゴイ!」と何度も連呼するから、悪い気はしなかった。それでも途中でナカマの知り合いのすたっふみたいのがやってきたんだけど、そいつの持ってる棒を見たらデンチューを思い出してしまって、思わず吸い寄せられるようにやっちゃったんだよな。
まぁ、オレの必殺技で許されたけどな、多分。ふぅ~
そんで、そこを境にあれよあれよと家を出ることになって、長い散歩に出ることになった。ナカマ、デンチュー、デカいデンチュー、おっさん臭……変なメンバーで。
それでも、みんなオレに優しかったから何だかんだで、一緒にいる内に、ナカマの次くらいには大事に思うようにはなっていった。でも、一番尽くしてくれているナカマが一番じゃないといけないよな。
散歩の途中で、何回かよくわからない臭いのところへ連れて行かれた。初めてのときは、情けないけど怖くてナカマに助けを求めてしまったりもした。
でも、ナカマが背中を撫でてくれたら少し落ち着いた。そのあとアレを土に埋めてんなぁなんて思ったら、すっげぇ水まで綺麗になって、あの時はびっくりしたぞ!
よくわからない臭いの場所にも慣れた頃、また散歩中に変な色で臭いのうにょうにょに出会った。人間じゃない、けど何かおかしい奴だ。
デカいデンチュー達が追い出そうとしていたけど、全然言うことを聞く相手じゃなかった。あんなに怒られているのに、アイツはなんて太々しい……そして気付いたらナカマとオレのところへ向かって来ていた。
オレはオスでナカマはメスだ。オスがメスを……ナカマを守る!!ちょっとチビったけど、オレは向かって行った……でも、あっさりデンチューに取っ捕まった。正直、ひよってたからありがたい。
オレはデンチューに抱かれながら、精一杯威嚇した!
そうしたら、なんだよ。すっげえカッコいい、ビュン!!ってしたやつが出て、臭いうにょうにょが消えたんだぜ?……オレTUEEE!!!!え?オレが倒したんだよな?デンチューの棒は触れてなかったよな?
なぁ、見てたか?とナカマを振り返れば、また「スゴイ!」と言って褒めてくれたナカマ。この「スゴイ」は良い言葉なんだ。だって言う時は絶対に笑顔だから。
オレはすごく嬉しかった。オレって強いんだ!小さくても、大きなナカマを守ってやることができるんだって自信がついた
オレは毎日トレーニングをしていた。威嚇の仕方、牙の出し加減、吠え方など…きっと工夫が必要なんだ。部屋の中ではあのカッコいい、ビュン!が一度も出て来たことがない。前に一度会った臭い集団にビュン!して以来、ようやく出たのに。
それに、ナカマやデンチューがたまに盗み見て、笑っているのも知っている……ちょっと悔しい。
でも、見てろよ?また変なやつが来ても、オレがきっとナカマを……まぁついでにデンチュー達も守ってやってもいいぞ?え?尻尾がぶんぶんしてるって?うるせー!
こっち見るな!風に揺れてるだけだっての!




