13:ユーシャ様は、黙って見守る☆
この辺りからほぼ恋愛ゾーンに突入です!大変長らく…(;;)
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「……グスッ」
結界内で零されたご聖水なので、当然私の胸元には今も染みをつけているわけですが……なんらケガも病気もしていないのに、貴重なご聖水を頂きまして感謝致しますという気持ちと、とは言え切ないものは切ないし、場所が場所だけに目立つと言いますか……すみません、やはり切ないの勝ちですね。
出陣式があるかと思って、奮発して買った一張羅のブラウスだったのに……川で洗えば落ちますかね?
「ま、まぁ、そう落ち込むなよ!こうしてみんなが無事だったことだし、ユーシャ様の御力も見れたんだから良かったじゃないか。ぜひユーシャ様にはお礼を伝えてくれよな」
「……そうね。ブラウスなんて、私がほんの半年くらい食事を二食にすれば買えるような代物でしかないものね。命には代えられないわ」
「……ごめん、俺が悪かった。そんなに良いものは買えないけど、次の街で俺がブラウス買ってやるから、きちんと三食食べろよ、な?」
「え……?うん。ありがとう??」
そんなに不憫だったかしら?二食って言っても、重湯とか、野菜クズの汁に比べたら十分贅沢なものを食べているのだけど。
ユーシャ様にお礼をお伝えし(言葉は伝わらないのでポカーンとしてましたが)、少し失礼にあたるかもしれないとは思いつつも頭を撫でたら、ユーシャ様は殊の外お喜びになり、尻尾をぶんぶん振っていました。か、可愛い……
「クンクンクン……ワン!ワン!きゅーん…」
≪さっきのきっしょい奴の臭いがついてるようでなんかヤダな……身体キレイにしてぇ≫
風呂場などというものは、当然村には存在しません。しかし、ユーシャ様が汚れを落としたいとご所望だったので、宿の裏手側にある洗濯場スペースと大きなタライをお借りし、その中でユーシャ様を洗うことにしました。
ヴァンもお湯を運ぶのを手伝ってから、そのまま側で護衛として見張っていてくれています。大切なユーシャ様が攫われてはなりませんからね。
「よし、ユーシャ様の湯あみも終えたわ。ヴァン、ちょっとユーシャ様を拭いておいてもらえないかしら。仕上げは私がするから」
「ん、わかった」
(せっかくまだ綺麗な掛け湯用のお湯があるんだし、今の内に私のブラウスも洗っちゃおうかしら。部分洗いだけならすぐに乾かせるし)
我ながらナイスなアイデアだなと思い、おもむろにブラウスを脱いだ。
「うおっ!なっ!!え!?お、おい、シア!お前なんて恰好……何してんだよ!下着姿じゃないか!!」
叫ぶヴァンへと振り向けば、顔を真っ赤にして濡れたユーシャ様で顔を隠していた。まだ濡れたままのユーシャ様は非常にほっそりで……面白い
「だって、せっかくお湯もあるし、このままつまみ洗いしておけば染みも案外落ちるかなって。わざわざ新しいブラウスをヴァンに買ってもらう理由もないし。それに下着って言っても厚地のシャツを下着代わりに着ているだけだし、普段着と変わらないわよ」
お貴族様のように、肌触りの良いサラサラで上質なものじゃないのだ。むしろ全く透けもしないし、ごわごわとして硬い、ただの平民の子供用シャツを代用している。
平民の大人用下着1枚の値段でこちらは三枚も買えると知り、迷わずこちらを選んだ。
そもそもこんな成長乏しいペッタンコで且つ痩せた身体に、一体誰が欲情するというのか。私の身分を思えば、むしろ『こんな身体ですみません』と謝らなければならないくらいだろう。
なんならゼニゲバ様には初対面では男の子と間違えられていたくらいだし。今でも性別の見分け方は髪が長いことと、魔術師用の黒というか紫というか、地味なワンピースを着ているくらいではないだろうか?私しか着ない分、団体割引もないし、それでいて地味に高い。
なんせ、魔術師塔には女子は私しかいない。昔はいたそうだけど、とにかく人気がない。求人寄せになりそうな素敵な年頃男子……ドコかな?状態ですし、一番年が近い方は30代ですが既婚者です。
オール男性(気のいいおじ様)の職場ではどうしたって女子力を高めようもないですし、食堂のおばちゃんと娘さんが唯一の顔馴染みの同性でしょうか?と言っても娘さんもとっくに結婚している30代の方ですが。
別段、私的には自虐に走ったつもりもないのだけど、つまみ洗いをしながら『そう思わない?』と振り返った時に見た彼の表情は、思っていたものとは全然違っていた。
眉間にシワを寄せ、悔しそうな、何かに耐えているような、そんな表情だった。
また私はなにか間違えてしまったようだ
「バカ野郎!!シア、自分を安売りすんなっ!出自がどうだろうが、今お前は立派に魔術師をやって、それにユーシャ様のお世話係りまでやってるんだぞ?これは十分誇れることだろうが!」
プリプリと怒り出したヴァンだけど、態度とは裏腹に自分が纏っていたマントを脱いで、顔を逸らしながら私の肩にかけてくれた。先ほどまで彼が身に着けていたからだろうけど、なんだかとても暖かく感じた。
「ごめんね、ありがとう。安売りしているつもりなんてなかったんだけど…不快にさせたなら謝るね」
「バッ…あ~~!だから、そうじゃないってのに!シアがどう思おうが、お前はもう大人の女性なんだよ。だから、俺だから良かったようなもんだけど、今後は絶対他の奴の前でそんな恰好すんなよ!」
「あ、そういうことか……」
「ハァ、やっと理解したのかよ……」
「うん、こんなみすぼらしいのじゃなくて、ちゃんとした下着を買えってことよね?でも私瘦せっぽちだから、子供サイズで十分事足りるの。それに安い割には、丈夫な作りなのよ?」
「……はぁぁぁぁ。お前って結構バカだったんだな」
瘦せっぽちならではの、節約術を披露したつもりだったのだけど、今はとことん話がうまく嚙み合わないなぁ
「え、バカっていきなり酷くない?そりゃあ、古代語の勉強ばかりさせられたせいで、むしろ母国語の読み書きの方が怪しくはあるけど……」
「もういい。とにかくそういう行為は今後、絶対に!するな!わかったな?」
特に重要な部分だったのだろう『今後・絶対・するな』でおでこを三回も突かれた。注意も終わった後だというのに、未だにヴァンはおでこを押さえ『シアは全くわかってない、やっぱり俺が……』と何やらブツブツ言いながら溜息をついていた。
そうか……こういうのって嗜みっていうやつだったのかな?表面上見えている部分だけ衛生的であれば問題は早々ないだろうと思っていたけど、旅をしていればこうしたハプニングもあるわけだ。
そうなると今は何だかんだで貴族のゼニゲバ様も、オツカレ様もいらっしゃるものね。こんな安いごわごわの下着姿でバッタリなんて確かに失礼に値するわよね。でも、貴族は絶対に身に着けない分、かえって下着と思われないという利点もあるかなって思うのだけど……うん。そういう問題でもないわよね
「わかったわよ……ヴァンの前でだけってことね」
ヴァンは平民出身だから、私のこういった考えはまだ理解出来るけど、みんながみんなこうじゃないぞってことを言ってるんだわ。
「~~~っ!!!俺の前でもダメ!!」
「え!?また間違えてる?」
そんにな顔を真っ赤にしてまで怒ることないのに……まぁ、見たくもないものを見せられてもってやつかしら。勝手に見せたくせに『きゃー!!ヴァンさんのエッチー!』とか言われたら、そりゃあ堪らないわよね。
私的には服を身に着けている感覚だったから気が回らなかったわ。やっぱり母親がいないってこういうとき困るのね。これから教育を受けるってときにゼニゲバ様には引き取られたし。
ヴァンはユーシャ様が『くしゅんっ!』とくしゃみをしたので慌てて宿の中へ入った。私も急いでつまみ洗いしたブラウスを風魔法で乾燥し、着替えた。早めにマントも返さないとね、騎士の支給品だし。
「………」
折り畳んだヴァンのマントから自分とは違う、最近は隣にいるとすぐにわかる嗅ぎ慣れた匂いがする。すぐに脱いで返そうと思っていたのに、ブラウスを着てからも、もう少しだけ包まっていたいなと思ってもう一度羽織ってしまった。
……あれ?私なんでこんなこと?
「……きっと、さっきまで脱いでいたから身体が冷えたんだわ」
それっぽい言い訳を思いつき、自分を納得させるように一人ごちた




