転生妻と戦争の危機1
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アニエスとエルネストが結婚してから三か月が経った。アニエスは慣れないながらも、第二王子の妻として頑張っていた。夜会に出席して人脈を広げたり、政治や経済の勉強をしてエルネストの事務仕事を手伝ったりしていた。
ある日の昼、アニエスは青いドレス姿のまま王城の庭の片隅で素振りをしていた。手に持っているのは、例によって木刀。
「相変わらずだね、アニエス」
歩きながら声を掛けてきたのはエルネスト。
「殿下、公務お疲れ様っす」
「アニエスもお疲れ様。さっきまで、公爵夫人とお茶会をしてたでしょう?あの方、平民に対して偏見があるから、元平民の君は付き合い辛かったと思う」
「まあ、大した事は無いっす。私が貴族のゴシップとかを話しまくっていたら、そちらに興味が移られたようですし」
「ああ、そう……」
「殿下も大変でしょう。去年穀物が不作だったせいで、領地経営が苦しい地域が結構あるようですし」
「まあね。でも、アニエスも頑張ってると思うと泣き言を言ってられないからね。……それより、僕達は夫婦になって三か月経つんだよ?そろそろ、『殿下』と呼ぶのはやめて欲しいな」
「あ……そうっすね。じゃあ……エル様、お疲れ様っす」
「うん、ありがとう」
そう言うと、エルネストはアニエスの前髪を掻き上げて、額にキスをした。アニエスは、少しだけ顔を赤くして微笑んだ。
アニエスが自室に戻って休んでいると、ノックの音が聞こえ、侍女のタチアナが入って来た。二十代後半くらいの年齢で、ウェーブがかった茶色いショートカットの女性だ。アニエスの専属侍女で、結婚式の時にアニエスの着付けもしていた。
「奥様、お疲れでしょう。お茶をお持ちしました」
そう言ってタチアナはお茶の入ったトレイをテーブルに置こうとしたが、躓いてカップが宙に浮く。
「あっ!!」
お茶は、思いっきりアニエスにかかった。カップが、ゴトンと音を立てて床に落ちる。タチアナは、顔色を青くしていた。
「も、申し訳ございません、奥様……」
アニエスは、ハンカチでドレスを拭きながら言った。
「これくらいどうってこと無いっすよ。今度から気を付けて下さい。……このお茶、前に私が好きだって言ってたハーブティーっすね。ありがとうございます。覚えていてくれて、嬉しいっす」
タチアナは、アニエスの言葉を聞いて感激した様子で、今にも泣き出しそうだ。タチアナを責めないどころか、礼を言ってくれるなんて。
アニエスがドレスを拭き終わった頃、また部屋のドアがノックされた。エルネストが訪ねてきたのだ。
「アニエス、ちょっといいかな。面倒な事が起こって、会議室に集まって話をする事になったんだ。アニエスにも来て欲しい」
「面倒な事……?承知したっす、すぐ行きます」
アニエスは、せっかく淹れてくれたお茶を飲めない事をタチアナに詫びると、部屋を後にした。
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