城壁
ひとりパックはドーデン城の外壁に近寄った。時刻は昼過ぎである。
見上げると、城の外壁は高々とそびえ、どんな敵の侵入も拒否しているように見える。
「大丈夫かい?」
「まかせろ」
パックはヘロヘロを手の平に持って石組みの塀にむかった。ヘロヘロはもぞもぞと身動きし、塀に飛びつく構えを取った。そのときふたりは背中から聞こえた声に飛び上がった。
「やあ、パックじゃないか。ここで何をしているんだ?」
ふりむいたさきにいたのはテレスだった。
あの大学生である。
パックの驚いた顔に、テレスこそびっくりしたようである。テレスは足もとまでとどくマントを身につけ、頭には大学の紋章のついた帽子をかぶっていた。
「あ、テレスさん」
「教授のおともでね……教授は月に何度か王さまに呼ばれて、いろいろ相談を受けるそうなんだ。それでぼくも朝からついてきたんだけど、用はないから早めに切り上げたというわけさ」
「そうですか」
そこでテレスはパックのかかえているヘロヘロに気づいた。
「やあ、そこにいるのはあのスライムだね! 丁度良かった。そのヘロヘロのことを教授に話したら、ぜひ一目みたいと頼まれていてね。ええと、きみらは城に何か用があるのかな?」
「いえ……ちょっと見物です……」
パックは嘘をついた。初めての嘘である。だがテレスは簡単に信じたようだ。
「そうか、まあ偶然でも会えたんだ。どうだい、これから大学に来てみるかい? 大学につくころには教授の用もすんで戻ってくるだろう。教授は馬車できているから、ぼくより先に大学に帰るはずだ。そこで教授にきみの話をしてくれないか。昨日、きみのことを話したら興味津々でね、ぜひ会いたいというんだ」
ええいいですよ、とパックは同意した。それじゃついてきな、とテレスは手をふった。その後についていくパックは、石組みの塀を何度もふりかえっていた。




