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観測者
[完結です。]
アダムはイブを抱えたまま体を起こす。
二人は瞳を揺らしながら呟いた。
イブ
「来ちゃう」
アダム
「ああ…」
イブ
「この世界を巻き込みたくない」
アダム
「僕もだ…」
二人は腰の拳銃を取り出す。互いに自分のこめかみに銃口を当てた。
イブ
「生き戻り――」
アダム
「――もう触れさせない」
――パァン! パァン! ドサッ
第一発見者は、演習場に大きな血溜まりができていたと顔を青ざめながら上司に報告した。
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ポチャ…ン――
水面に波紋が広がる。
いくつもの水滴が水面に滴る。
音だけが反響し聴覚を刺激する。
風のない漆黒の空間。
輪郭のみが白く目立たせた。
――ピーィィ
トビの鳴き声。
羽ばたきながらアダムの傍に降り立つ。
トビはアダムの顔を覗き込む。
――ピュルルゥ?
小さく首を傾げた。
「何で二人だけ向こうの世界に行っちゃうのかな?」
「私だけここに置いていかれるの寂しいんだけど」
「ハハッ…ここの天秤に聞いてくれよ」
アダムは起き上がった。
「ピー、ここを脱出するぞ」
「イブを一緒に探せ」
「わかってる」
トビは翼を広げて飛び立つ空間で周回する。
「居るじゃん――そこに」
背後に気配を感じ振り返る。
「アダム!帰ろう!!」
「イブ!!全力で走るぞっ!」
「わかった」
二人は全速力で漆黒の空間を走る。
水しぶきと呼吸が強調するように空間を震わせる。
〝ここに留まっていてはいけない。今すぐここから出ていけ〟
(ジジィ!!)
(おじいちゃん!!)
〝助けて!!〟
――パリッ!!
空間がガラスのように亀裂が入る。
〝させない〟
〝ここから出すものか〟
〝この玩具を手放すとでも〟
――パリン!! カラララ…
割れた隙間から光りが差し込む。
〝今じゃ!!飛び込め!!〟
【逃すものか!!】
「きゃぁぁ!!」
水面からイブの脚を掴む者。
水しぶきを上げイブは倒れ込む。
「イブ!!!」
「ピー、奴を追い払え!!」
――ピーロロロォ
トビは頭上から高速で掴む者に突っ込む。
アダムはイブを抱き上げ脚を引っ張る。
「痛い!痛いよ!!」
イブは泣き叫ぶ。
「イブから手を離せ!!」
【逃さない!】
水面から無数の手が伸びてくる。
無数の手がアダムとイブを掴む。
「嫌だぁぁ!!」
「ジジィ!!もうっ…悪いことしないから…ここからだしてくれ!!」
とうとうアダムは泣き出した。
【天秤の理を翫ぶ者】
【天秤の理を護る者】
〝人の苦しみを他人事のように嘲笑う者〟
〝相手の気持ちを考えずに、弱い者を邪険に扱っておらぬか?〟
〝不幸を笑い者にしておらぬか?〟
〝我ら天秤は、貴様らの行いを常に見張っている〟
〝わからぬ者。この地獄を貴様の夢の中へ迷い込ませてやろう〟
〝その恐怖、本物か?〟
「アダム!イブ!手を伸ばせ!!」
「ジジィ!!」
アダムとイブが長老へ手を伸ばす。
複数の手が割れ目から伸びてきた。
「掴まれ!!」
「うっ!届かないっ…」
長老は身を乗り出す。
「落とすなよ!!」
向こう側から他の者の声。
長老の両手が二人の手を掴む。
「引き上げろ!!!」
「離すなっ絶対!!!」
「ああっ!!」
「おじいちゃん…」
村人の助けにより二人は漆黒の空間から脱出することができた。
長老の腕の中に二人は飛び込んだ。
トビはアダムの頭の上で毛づくろいしていた。
ピュルル?
「いい加減元に戻らんか!!」
「えー…」
「元凶は貴様じゃろ!!」
トビは妖精の姿へ戻った。
長老にデコピンされた。
「痛っ!むぅー」
「変な物語に巻き込むな」
「じゃが…こいつらのイタズラ癖は…これで懲りたじゃろう」
長老はため息をついた。
「さて、この天秤を封印する」
「アダム!イブ!もう二度とイタズラするんじゃないよ?」
「「はい…」」
「もう懲り懲りです」
「貴様も!わかっておろう?」
「わかってます。申し訳ございませんでした」
「うむ」
「ピィ封印するのを手伝え」
「わかった」
「行くぞ…」
村人たちは重い大きな扉へ向かって歩き始める。
アダムとイブも続いて扉から出て行った。
扉の向こうは波の音が、ここに帰ってきたと教えてくれている様だった。
魔術師たちに神殿は封印され厳重に護られた。
禁断の魔法を使ったこの少年少女は、後に村の守り神として大事に育てられたと妖精界で神話として語り継がれた。
観測者
[最後まで、読んで頂き、ありがとうございます。]




