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わたくし、とても不思議に思っておりましたの。
なぜこの国では、平民も貴族も同じように首を刎ねられるのかと。
でもね、その理由を教えてくださった方がいるの。
それがシャルネ=ルイ。
処刑人のシャルネ=ルイ・サリバン。
昔は、身分によって刑罰が違ったのですって。
けれど今は、そうではないのだと。
わたくしは最初、それを当然のこととは思えませんでした。
平民と同じ刑を受けるなど、平民と同等に扱われるなどと。
でも、シャルネ=ルイは言ったの。
――殺された貴族があなたの父で、殺した相手が貴族だったから軽い罰で済んだとしたら、どう思いますか、と。
わたくし、すっかり納得いたしましたわ。
確かにそれは、許せないことだと思いましたの。
……それと。
わたくしは、罰が不当だと腹を立てていたのではなく、自分が貶められたように感じていたのです。
貴族が死を賜ることは、そうないのです。だから、平民と同じ扱いを受けているように思えて、許せなかったのですわ。
けれど、違うのでしょう。
罰とは、罪人のためだけにあるものではなくて。
わたくしが傷つけてしまった方々に、納得していただくためのものでもあるのでしょう。
――わたくし、人を殺めてしまったの。
名前はついぞ分からなかったのだけれど、あの方は貴族のご令嬢だったのだと思うわ。
その令嬢と口論になって、つい、扇子を振り上げてしまったの。
令嬢は驚いてよろめいて、ご自分の侍女にぶつかって――侍女は階段から落ちてしまったの。
侍女のご家族には、本当に申し訳ないことをしてしまったわ。
それで、わたくしはここにいる。
今日、断頭台に首を預けるの。
怖くないはずはないのだけれど。
それでも――
それでも、わたくしイヴォンヌ・イヴァルテは、これからきっと正しく、首を刎ねられるのだわ。
***
フラナリア王国、グレヴァリオ改歴1756年某日。
一人の侯爵令嬢が処刑された。
彼女の名前はイヴォンヌ・イヴァルテ。第五王子フィリップの元婚約者である。
罪状は殺人。宮中にて口論の末、侍女を死に至らしめたとされる。
本件は宮内法廷にて審理され、死刑判決が下された。
――フィルガンド新聞




