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終末世界の生存記録。  作者: 雪見もち子
【1章】現在軸:ラブコメ編:響&亜美

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2/7

【後編】ノンデリ煽り系カレシと、金属バット彼女(響&亜美編)

______________

 ×月⚪︎日(日)【PM 20:00】

某都心部郊外:拠点アジト廃墟の一室にて

______________


割れた窓ガラスの先は曇り空。


パイプの曲がったボロボロのベッドの上。

スルメを齧ったまま仰向けになり、ボロい漫画を読む少女。



かろうじて使えるクッションの上に座り、ベッドを背もたれにする彼氏。

その手には、古びた一冊の小説。



残りわずかなランタン。

枕元のパイプにかけ、一つの光源を二人で使う。


――ジリッ。


小さな音と、煤が焦げる匂いが狭い室内に広がる。



「……おい、クズ。明日の三つ編み、右の輪っか、少し大きくしろ」


不意に少女が口を開く。

視線は漫画に向いたまま、言葉を続ける。


「今日のは小さすぎて耳に当たって痒い。あと髪ゴムもそろそろ変えろ、飽きた」


もぐり、スルメを齧る彼女の小さな不満。

ぱらり、紙を捲り小説から目を離さない彼氏。

無言の時間が続く。

ふと、少年が気付いたように呟いた。


「一人前に文句いう前に自分で……」


ぴたり、少年の言葉が途切れる。

不審に思った彼女は漫画から目を離す。

そして、地面に据わる彼氏の方へと視線を向けた。


「……ああ、お前が自分でやると、三つ編みじゃなくてただの『首吊り用ロープ』になるか(笑)」


ひくり、口端が引き攣る。


「仕方ないから明日も俺がやってあげるよ、感謝に咽び泣くといい」


「ざっけんな!! 誰のせいで不器用になったと思ってんだよ!! テメーがいつもバットのスイング指導しかしないからだろーが!!」


解けかけた髪もそのままに、漫画を放り出す。

代わりに食べかけのスルメを、少年の頭にぶん投げた。


「あーあ、勿体ないだろ」

「誰のせいだと思ってんだ!」


投げられたスルメを掴み齧る。

咀嚼する少年は頬にかかる黒髪を片耳にかけた。


「お前が不器用なままなら、俺なしじゃないと生きていけないだろ?」


彼女の空気がピタリと止まる。


「明日も、終末の日も――地獄の先でも俺がお前の髪を結ってやるよ」


顔を上げ不敵に笑う彼氏。



「だから、勝手にくたばるなよ。俺の自称最強彼女さん」


彼氏の耳元に、キラリと光る一つのピアス。


「……………」


顔を赤くしながら無言で布団ぼろきれに潜り込む彼女。


「お?照れた?おーい」


「……」



この夜は平穏に過ぎた。



#首吊り用ロープ

#片耳ピアス

#約束

______________



______________

4月12日(日)22時15分

某都心部郊外:拠点アジト廃墟の一室にて。

__________________


割れた窓ガラス。

空はいつも通りの曇り空。

今夜も月明かりは差さなかった。


郊外のマンション、5階の一室。

かろうじて倒壊しなかった区画の1棟。


ヒビの入った外壁は蔦が絡む。

打ちっぱなしの寒々しいコンクリートの壁。

室内は電気が止まり、廃墟そのもの。



その一室に二人は居た。

ベッドの枕元のパイプに吊り下げられた、僅かに残ったランタン。

か細い光が、室内を照らしていた。


ひしゃげたベッドを背に、少年は胡座をかいて座る。

少女は彼の脚の間に当然のように座り、すっぽりと収まっていた。


ぱらり、ぱらりと不規則にページを捲る音。


少年は目の前に在る少女の頭に顎を乗せ、世紀末漫画4巻を読む。

少女は少年を背もたれにし、手元の世紀末漫画5巻を読んでいた。


枕元のパイプにかけた、一つの光源。


――パチリ。


小さく爆ぜるランタンの音が遠ざかる。

少年の胸から聞こえる確かな鼓動を背にし、少女は今日も生を静かに感じる。



「お前さー、たまには普通の女みたいに『好き』とか言えないわけ? 」


「……は?」


スルメを噛むカノジョの口からポロリ、イカゲソが落ちかける。


「はぁぁあ!? 」


叫び声を上げる彼女。

彼氏は嫌そうに顔を顰めながらページを捲った。


「お前が先に『愛してる』って言ってみろよっ、この陰険クズ野郎ッ!!!」


「あー、無理無理。やっぱ無し、キャンセルで」


「何だよ、言い出したのオメーだろ!」


「バトル漫画読みながらスルメ齧る女に、乙女心なんて期待する方がバカだった」


「テメーだって、この漫画、好きだろーが!」


手元の漫画の角を彼氏の腕に当てるように狙う彼女。

だが、寸前の所で止める大きな掌。

すかさず止めた彼氏は、その漫画を奪った。

そして、彼女の頭に向かいーー


ーーゴツッ。


「?!?!?!」


角でツボを刺した。


痛みは、音の威力では語れないほど。


頭を両手で押さえる彼女。

ニマニマ笑う性格最悪最強彼氏。


沸々湧き上がる怒り。

彼女は睨む。

けれど――。


「……その凶悪面見てキュンとするとかないけど。俺に着いて来れんのは、お前みたいな猛獣女しかいないんだよな」


ぽつりと呟く彼氏の淡々とした声。

彼女は痛みで震えていた指先すら止まっていた。


静寂と、灯りも満足にない二人の部屋。

肌に触れる生温い空気。


交わる二人の視線。


ーージリっ。


「勝手にその辺でくたばるなよ」


オイルの焦げた匂いが、思考を動かした。


「もし勝手に死んだら、墓場に線香代わりのロケット花火でもぶっ刺して、打ち上げてやるからさ」


「………なら、テメーの墓場には、爆竹投げてやんよ」


「……ははっ、いいじゃん。お前らしくて最高にうるさそう(笑)」


口端を上げ不敵に笑う彼氏。

意地悪そうに細まる双眸。

彼女はそれを見て顔を背けた。


「フン……火薬があれば、だけどな」


落ちた漫画を手にし再び読み始める彼女。

解けかけた彼女の三つ編みを、彼氏がするりと解く。

チラリ、彼女が顔を上げた。

視線の先には、意地の悪い笑みがあった。


「……っ、顔が、うるさい! 」


頭突きをかまそうとする彼女。

彼氏は笑顔でその頭を片手で制した。

頭を掴んだまま、彼女をベッドに放り投げる。


「やっぱ重いからそっち居とけ」


投げ捨てられた彼女に怒りが宿る。


「テメーがここ座れって言ったんだろーが!!」


積み上げられた世紀末漫画を彼氏に投げつける。


一巻、三巻……時速300kmの漫画本。

ひょいひょい避ける彼氏はゲラゲラ笑い、彼女の首根っこを掴む。


「おいっ!何すんだ!離せクズ!!」


暴れる彼女を片手で押さえ込み、ベランダへ続く窓を開ける。


「待って、そっちは……!」


そして、彼氏は――

彼女を地上5階の高さから、窓の外へそこそこの力で放り投げた。


「っ!!!マジでブッこ………――っ!!」


遠くなる彼女の姿。

彼氏は手を振り笑顔で見送る。


空に放り投げられた彼女。

怒りで染まる赤い耳元には、一つのピアス。


――『曇天に咲く、人間ロケット花火。』


「ほんと、お前は飽きないね。そんなお前だから、拾ってやったんだけどさ」


少年は、空飛ぶ彼女の姿を見送り、小さく笑った。



5分後……。


――がちゃり。

開いた扉の音。

ドカドカ鳴らす足音は、彼女の帰宅音。


ベランダへ続く窓は開けたまま。

サッシへ背を預け、呑気に漫画を読んでいた彼氏は顔を上げる。


ボサボサ髪に、泥のついた頬。

息を切らし上下に乱れる小さな肩と、憤怒を表す彼女の顔。


それを眺めて彼氏はにこりと笑う。


「……っざけんなテメー、マジで殺す気か!!」


「あ、お帰り〜。今日は2分24秒もお早いご帰宅で〜」


「ドクズ陰険ゴミ野郎!ここ(寝床)壊れたら困るから今は我慢してやる。だから今すぐ面貸せッ!! 」


「ははっ、火薬よりお前の声のがうるせー。いい? お前を壊すのは俺。だから、お前が先に地獄へ行ってどーぞ」


「ま、地獄でもその[[rb:騒音 > こえ]]で追い出されるのがオチだろ。あっちで俺に話しかけんなよ、死ぬほど迷惑(笑)」


「地獄でもテメーを必ず追いかけてやる!!!そんで、 アタシがぜってーにブッ殺す!!!」



これは、少女Aと少年Bの愛の[[rb:記録 > ログ]]。


デリカシー死滅バイオレンス・ラブコメディー。


終末世界で今日も暴れて、今日も喧嘩して、それでも何だかんだ隣にいる。


これは、そんな二人の日常のほんの一幕。



#爆竹

#ロケット花火

#ピアスはお揃い

______________

響:

やっぱり馬鹿は地獄しんでも治らなかったね。

(訳:やあ、また会えたね、最強のマイハニー)


亜美:

もっかいブッ殺す!!!

(訳:はよ輪廻転生しろや、最強のクソダーリン。

   ――来世でも絶対捕まえてやんよ。)


『――好きだよ、ばか。』

それは言わないお約束。


最後までお読み下さり、ありがとうございました。

おまけに下部へ、二人の詳細プロフィールをこっそり置いておきます。


______________


【プロフィール】


[仮称:少女A]


氏名:亜美アミ


年齢:16歳


装備:金属バット(超々ジュラルミン)


服装:赤いスカーフ・黒いセーラー服・ミニスカ・スパッツ・紺色のハイソックス・スニーカー。


髪型:三つ編みを輪っかにした感じ。

黒髪の三つ編みは、耳を包み込むようにぐるりと回され、左右で輪っかに縛り上げられた。

(※アミは面倒だからお団子や輪っかって呼んでる)


性格:猪突猛進。生存意欲と闘争心が強い。短略思考。


好物:スルメ、つまみ系


関係:ヒビキの彼女。狂犬。


特筆:野生的な感覚。脳筋なので言葉のボキャブラリーは少なめ。口より手が先に出るタイプ。


効果音:ドカァァアン(破壊音)ブォン!(スイング)


ピアス:右耳(右利きだから自分でブッ刺しやすかったって理由で意味はない)



[仮称:少年B]


氏名:ヒビキ


年齢:18歳


装備:右手メリケンサック。左手首には、不釣り合いな黒い髪ゴム。


服装:緩くなったタンクトップの上に短ランを羽織る。ボンタンズボン。


髪型:黒髪、肩に毛先が触れる長さのワンレン


性格:ノンデリ。唯我独尊。執着心と独占欲の塊。激重感情。


好物:特になし。


関係:アミの彼氏。スイングの師匠。飼い主。


特筆:ヒビキ語録、偽四文字熟語で相手を煽るスタイル持ち。

彼女だろうとノンデリな言葉で煽り、笑顔で飄々と物理制裁を躱す程度の実力。両利きの器用人。

語録:『脳無絶壁』と書いて、ペチャパイと読む。


ピアス:左耳(ピアスは自分で用意して自分でブッ刺した)

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