【前編】ノンデリ煽り系カレシと、金属バット彼女(響&亜美編)
彼女:亜美(16)
装備:金属バット
彼氏:響(18)
装備:メリケンサック
※物騒さとコメディが強めなラブコメです。
※品のないセリフが出てきます。
______________
山積みになった敵軍隊。
屍の上に座るセーラー服の少女。右手には血まみれの金属バット。
履き潰したスニーカー。靴下は片方がずり落ちてる。
黒髪の三つ編みは、耳を包み込むようにぐるりと回され、左右で輪っかを作る。
――解けぬよう、耳の裏で、きつめに縛り上げられた。
死体の山の傍らに立つ少年。短ランにボンタンズボン。
右手には血まみれのメリケンサック。緩くなったタンクトップ。
ワンレンの黒髪は肩に触れる長さ。
――左手首には、不釣り合いな黒い髪ゴム。
少女A:「さっさとくたばれ、ノンデリ男!!!」
少年B:「ママ味の飴ちゃんでも舐めとけば?単細胞のペチャパイ女(笑)」
少女A:「ブッ殺!!!!!!!」
______________
◇
______________
×月⚪︎日(日)【AM 9:00】
某都心部:死体と瓦礫と廃ビル群にて
__________________
#本日の観測ログ
対象:少女A/少年B
観測地点:終末都市・廃墟区画
状態:
・喧嘩(物理)
・関係性(不明)
・会話は常時ノンデリ煽り+物理介入
特記事項:
・金属バットによる意思疎通を確認
・建造物損壊を伴う感情表現あり
・“デート”と呼称される行動を複数回確認
・人間ロケット花火の観測
結論:
いつも通り異常
#敵勢力の落とした報告書より抜粋。
______________
◇
______________
×月⚪︎日(日)【AM 9:00】
某都心部:死体と瓦礫と廃ビル群にて
______________
死体の山の前で対峙する少年と少女。
ヒラリとスカートの裾が風で揺れたーー。
「お前さ、俺に言うこと、まずは一つあるよね?」
「あ?」
「……はあ、少しは危機感覚えたらどう?」
少女は金属バットを右手に構え、肩を回す。
対する少年の右手に嵌められたのは、メリケンサック。
互いの獲物は、血に濡れていた。
「『危機感』って言葉、お前には難しかったか。ごめんね?小学生頭のお前でも分かるように『やさしいことば』の勉強から躾し直しかな」
「ケッ、クズ野郎」
ピキピキと額に青筋浮かばせ少女は一歩、踏み込む。
ーーブォン!
戸惑いなく、スイングする。
だがーー。
「おっと、危ない危ない」
「……チッ」
少年は涼しげな顔で二歩、三歩と軽やかにステップし後退し躱す。
お前にぴったりの四字熟語知ってる?」
「あ?」
「脳・無・絶・壁」
「ブッ殺!!!!!!」
助走を付け瓦礫の壁を駆け上がった。
ヒラリと靡く赤いスカーフ。
彼氏の頭にめがけ、金属バッドを振り下ろす。
――ドガーーーンッ!!!!
土煙を上げるひび割れた地面。
人間技とは到底思えない、巨大なクレーター。
手応えのなさに、少女は僅かに違和感を覚える。
立ち止まり、土煙の先を見る。
視界が晴れた先に立つのはバットを躱した少年。
汚れのない制服。
「威力が甘いね、スガキ猿の名が廃るんじゃない?」
「おい、避けんな!!陰険クソ野郎!!!」
無駄に爽やかな笑顔が少女の腹の虫を更に煽る。
『命懸けの鬼ごっこという名のデートの始まり』
#回避全振り彼氏 #地形破壊的日常デート編
__________________
__________________
×月⚪︎日(日)【AM 10:00】
【某都心部:廃ビル付近】
__________________
足場が崩れた瓦礫のビル。
少女は敵の一人に足を捕まれ、盛大に背中からすっ転ぶ。
『自称:人類最強カノジョ』
それを嘲笑い見下すのはーー。
「楽しそーじゃん、俺も混ぜてよ」
『他称:最低最悪の最強カレシ』
「あ?楽しくねーよ。襲われてんだよ、分かれクズ」
仰向けに転がる少女。その足首には敵軍の手。
離すまいと足首に食い込む両手の力。
鬱陶しさに顔を顰め、少女は頭を蹴り付けた。
「何だって?お前が襲われてる?ははっ、寝言は死んでから言えよ」
ピシリと額に浮かぶ少女の青筋。
「がさつなゴリラに発情出来る人間なんて、いるわけないだろ?」
少年は彼女の姿を見てせせら笑い、彼女の足を拘束する敵を適当に蹴り上げた。
――ガンッ!
「一匹」
瓦礫の壁に吹き飛ぶ敵一体。崩れる身体。
それを掴み壁に叩き付けると、少年の右手が胴体にめり込む。
――グシャっ。
「はい、おしまい」
動かないそれを放り投げた。
「……で?お前はいつまで寝てんの?」
少女は呆然と彼氏の姿を捉えていた。ーーその時。
ーーザッ!
二人を囲む、敵軍隊が現れる。
少年は小さく肩を竦ませ、わざとらしく溜息を溢した。
「あーあ、お前がトロいせいで、追加のゴミが来たんだけど」
ふらり、立ち上がる少女の姿。
右手には凹んだ金属バット。
「!!!くたばれクソ野郎!!!」
――ドガン!
自称最強の渾身の一撃。
崩壊した建物へと敵と共に吹っ飛ぶカレシ。
土煙が晴れる。
その先に見えるのは、ケロリとした男の顔。
「おっ、いいね〜。今の単調スイングなら、俺の加速ブースターくらいにはなれるんじゃない?」
その横では、昏倒した敵兵士。
吹っ飛ぶついでに敵にエルボーかました無傷の少年。
離れる距離、睨み合いに空気がひりついた。
「ま、俺を殺すには、まだまだ甘ちゃんだけど」
「っるせえ!!」
ポケットに両手を突っ込んだまま、余裕の立ち姿で笑う少年。
そして彼女はグリップを強く握りしめ、駆け出す彼女。
「当たっとけ!!」
――ブォン!!
風を切る音。
直前、ひらりと上半身を傾け避ける少年。
空振る金属バット。
「……ッチ、避けんな!!」
再度振られるバット。
――グシャッ!!!
当たった先は別の獲物。
敵を前に突き出し、肉盾に使う少年。
「ハイハイ。短気してるとお前のきっちゃない毛穴、さらに開くよー?」
緩んだタンクトップの裾で汚れを拭い、一言告げた。
「女らしく俺の三歩後ろにいとけば?」
「……!!」
――ガッシャーン!!!
吹き飛ぶ瓦礫、全壊する廃墟。
ニタニタ笑い見下す目。
それでも尚、無傷な人類最強の少年。
「殺す殺す殺す殺す!!!!!!!」
「あははっ、餌やるからちょっとは落ち着きなってー」
「お前、バット振るセンスなさすぎ、体幹悪すぎって訳で、ほら。次行くよー」
「待て!逃げんな!避けんな!ブッ殺す!!!!」
#余裕の全回避 #地形が死滅する痴話喧嘩
______________
◇
______________
×月⚪︎日(日)【PM 12:30】
某所A市街地 スーパーにて
______________
――ぐるおぅぅ。
「腹減った……メシ……」
盛大に音が鳴る少女の腹の音。
ゴロリと寝転ぶ少女は力なく項垂れた。
「ははっ、何その腹の音。地獄の番犬? 」
少女はチラリと声のする方へ視線を向けた。
ゴミと空箱ばかりの食料棚の先。
そこから顔を出す少年を見た。
苦虫を噛み潰したように顔を顰める少女。対照的にニヤニヤと笑う少年の顔。
「ともかく、その怪獣みたいな騒音がうるさすぎ。ほら、それ食って黙りな?」
少女の顔に向かって投げられた四角いパック。
当たる寸前、少女はすかさず受け取った。
「……おい、なんだコレ、ぬるい」
ぐにゃり、手の中の感触に嫌な顔をする少女。
苔色の謎の物体が入った袋をまじまじと見つめた。
「ああ、それ、刺身こんにゃく。ま、電気通ってないから中身腐ってるけど」
ピタリ、少女の動きが止まる。
「つーか、見れば分かるだろ?脳みそだけじゃなくて、とうとう目まで腐った?」
わなわなと肩が震える少女。
「あ、腐ってるのはどっちもか(笑)」
「!!っざけんな!!!」
怒りに飛び跳ね起きる少女の身体。
右手にパックを構え、少年に向かって全力投球した。
――ブォン!
220km級の、豪速球。
少年は突っ立ったまま首を傾け、サッと避ける。
――パァァアアン!!
壁に叩きつけられ破裂する、哀れな刺身こんにゃく。
鼻で笑う、『害悪彼氏』。
「あーあ、折角の餌だったのに。何してんのお前。俺の慈悲を有り難く受け取れよ」
「ゴミだろーが、クズ野郎!!」
「いいや、それはゴミじゃない」
嘲笑から真顔に切り替わる彼氏の顔。
表情の温度差に彼女の殺意が収まる。
「……あ?」
「今の状況には必要不可欠な、大事なアイテムだったんだよ」
「あの汚物が……?」
こくり、彼氏は深刻な顔で頷く。
数度瞬き、少女は考え、口を引き結ぶ。
無言で見合う。
張り詰めた空気。
やがて、少年が口を開く。
「昔流行った転生漫画、覚えてるか?」
「……は?」
「クソ女の性格って、一度死んでも直んないだろ?」
「……ああ?」
「だから本当かどうかを、お前で検証しようかと思ってさ(笑)」
少女は少年に目掛けて食料棚を投げ付けた。
「……っ!ブッ殺す!!!!」
#転生検証
#220km級の豪速
______________
◇
______________
×月⚪︎日(日)【PM 15:00】
ボロボロの廃屋の屋根の下
______________
――ざあざあ。
雨の止まない午後。
シャッター街の一角で雨宿りの二人。
静寂を掻き消す雨音と、二人の微かな息遣い。
頭から被ったシャワー代わりの雨。
ずぶ濡れの身体を軒下に滑り込ませた。
「お前は頑丈だよね。そこらの無価値なゴミだったら、肉盾にしてやったのに」
少年は濡れた髪を掻き上げた。
視線の先にあるのは、ゴミ溜めのような路地裏。
転がる何かの死骸に、雨に混じる僅かな饐えた匂い。
崩壊した街並み。
「俺が愛情深い男で良かったね。今日も感謝して、どーぞ」
「あ?テメーこそ、あっちのゴミの仲間入りしてなくて残念だわ」
珍しく語彙力を上げた少女に、少年は驚きに数度瞬く。
肌に纏わり付くのは、ぬるい水滴と湿った空気。
少女の頭頂部が、少年の肩口に不意にぶつかる。
崩れた軒下。晴れない空。変わらない日常。
小柄な少女がシャッターに寄りかかる。
少年に密着しても、小さな肩は僅かに濡れる。
「肩濡れた。避けろクズ」
「いやいや、何言ってんの?むしろお前が譲るべきだろ」
「何でだよ」
「靴下は片っぽいつもずり落ちててだらしない。オマケにガサツで品もない、”ナイナイ”尽くしの女じゃん」
――ピキ。
「ンだって??」
怒りが込み上げる少女は、感情任せにグリップを強く握った。
「女の”お”の字もない野良犬が、誰に向かって文句言ってんのか、お分かりで?」
ーーミシミシ。
手元のバットが唸りを上げる。
「って訳で、脳なし頭のお前が譲りな。ご主人様の言うことはー?」
「ブッ殺!!!!!!」
ーーブォン!
「あーあ。結局俺までびしょ濡れじゃん」
「テメーが悪いだろーが!」
「犬みたいに今すぐ傘持ってこいよ、メスガキ」
「死ね!!ゴミ!!」
#雨宿り
#選民思想的
______________
◇
______________
×月⚪︎日(日)【PM 17:00】
某都心部:海辺の夕暮れ
______________
目の前に差し出されたのは、紫色の花。
少女は呆然と立ち尽くす。
「……あ?……花?」
戸惑いと困惑の表情を曝す。
振り上げた金属バットの切っ先。
カツン、と虚しく音を立てる。
突然の花、彼氏の笑み。
混乱する彼女の手からバットが滑り落ちかける。
「そう、見て分からない?頭だけじゃなくて、とうとう目も悪くなった?」
普段通りの煽り文句。
一瞬でブチ切れかける彼女。
しかし、バットを握りしめ耐えた。
「ほら、情緒の欠片もないお前の為の、情操教育だよ」
――ガリ、ガリガリ…
地面を擦る先端。
視線を落としつつ、掌を差し出す。
「……フンッ、受け取ってやらないことも無い」
花を素直に受け取る彼女。
その掌を見つめ、彼氏が笑みを浮かべた。
「ま、それトリカブトなんだけど」
――グシャリ。
手の中の花が折れた。
「テメーだけは殺す!死んでもブッ殺す!!!」
羞恥から一変し、怒りに赤くなる顔。
全力直球、渾身のスイング。
「馬鹿みたいな脳筋スイングで、俺を殺せると思った?残念無念、また来世〜(笑)」
――振りかぶった金属バットは、今日も止まらない。
「ははっ、悔しいのぅ、悔しいのぅ(笑)」
「死ね死ね死ねッ!!!!!」
「あ、その花、ちゃんと持ってけよ」
「いいからテメーは、大人しくブッ壊されとけ!!」
ネガティブな意味(復讐・敵意・厭世的・あなたに死を)
ポジティブな意味(勝利・栄光・騎士道)
#貴方に死を
#クズ男の独占欲
#少女漫画の花はトリカブト
______________
◇
______________
×月⚪︎日(日)【PM 18:15】
某都心部:廃墟と化した敵のアジトにて
______________
物資を漁るが、大したものはない。
せいぜいあるのは、乾いたシリアルバー、膨張した缶詰。
そして、ぶち破れたレトルト。
二人分どころか、一人分にも満たない残骸の山。
「……収穫なし、ゲロしょっぱ」
頬についた返り血を乱雑に拭う腕。
埃臭い暗い室内と、錆びた死の匂い。
紙屑の上をドカドカと踏み歩き、空腹に苛立つ少女。
「朝から晩まで暴れ回ってるのに、ほんとにお前は元気だね」
「……っち、なんだよ」
「ガキってどうしてこんなに一日中元気なんだろ?……あっ、頭にリソース割いてないからか」
「ソースって何だよ、おい。食いもんねーだろ」
ひしゃげた血まみれの扉と誰かの残骸パーツが転がる。
その横にぶち空けられた崩れかけの壁穴からひょいと顔を出すカレシ。
傍に転がるゴミを端へと蹴り飛ばし、道を作り部屋に入る。
「――で、何?アタシの邪魔しに来たのか?」
「単なる見学。ほら、こっちは物資たっぷり。無能なお前を生かしてやる、善行善良な俺様からの『お恵み』だよ」
リュックいっぱいの物資を見せびらかし、悪意のなさそうな笑みを浮かべる最低カレシ。
「テメェ......今すぐブッ壊される覚悟、あるんだよな?」
――ビキビキッ
青筋を額に浮かべ金属バットを握る彼女は、バットの先端を彼氏に向ける。
「ハッ、お前みたいなお使いも出来ないチビッ子は、さっさとお家に帰って女児向けアニメでも見てたら?」
「電気繋がってねーだろーがっ!」
不意に少年が少女に近づく。
少女は警戒したように身を引くが、その直前、少年の手が彼女の肩を掴んだ。
「ほら、飴ちゃんやるからいい子にしろよ」
ぽとり。
少女の頭の上に乗せられた一つの飴玉。
「乳臭いママ味の飴。好きだろ? 」
にこにこと笑う彼氏。
ふるふると震える彼女の身体。
――怒りと破壊まで、三秒前。
「優しい俺からのプレゼント」
「……ブッ殺す!!!!!」
――ドガシャーーーン!!!!
崩落する瓦礫。
埃を払いながら、軽やかなスキップを披露する彼氏。
「……あーあ、飴ちゃん砕けちゃった。お前の軽い頭みたい(笑)」
「るっっっせえ!!死ね! 死ね、死ねッ!!」
更に崩壊する半壊した建物は、一時間もしないうちに全壊した。
#空腹と煽り
#子供扱い
#世界全壊の元凶
______________
【後書き】
お読みくださりありがとうございました。
後編に続きます。




