056
――2123年6月――
この日は、俺の新しい晴れの日だった。
俺は、なかなか前に踏み出せなかった。
誰かを好きになることは無く、蓮をひたすら追いかけていた。
蓮を殺したあの日から。
海の見える教会の中に、俺はいた。
だけど、この日は一年前のあの日と同じだ。
マートに見せた、マートの好きを確認する日。
真っ白なタキシードを着た俺は、教会のドアの前にいた。
(この結末を、俺は想像できなかったな)
この教会に来たマートは、あの後アップデートを行なった。
新たなマートになったけど、この世界を見守ってくれていた。
最近はカーナビやスマホのアプリなんかでも、幼い姿のマートをよく見かけるようになった。
より身近な俺たちの神は、人類を見守ってくれていた。
(蓮、お前の娘……マートはこの世界で神を元気になっているぞ)
空は快晴……とまではいかない曇り空。
海の潮風が強く吹きつけた、海もしける教会の前。
扉の前で、俺は大きく息を吐いていた。
(だから、何も心配しなくてもいい。
それとごめんな。俺はお前との愛を、貫くことが出来なくて)
俺は、蓮の想いに応えることが出来なかった。
それでも、俺は蓮に教わったことは数多くある。
だから、これからも蓮に教わったことを胸に……俺は生きていく。
神マートが、見守ってくれるこの世界で。
教会の扉を、俺はゆっくりと開いた。
開くと教会の中は、多くの人が待ち構えていた。
そこにいたのは、俺の仲間、同僚。
廻沢や、柚木、俺の姉貴も俺の顔を見て祝福してくれた。
扉の中には、ウェディングドレスを着ている一人の人間が待っていた。
その人間に、俺は声をかけていた。
「さあ、行こうか」
俺は恋に一礼して、ウェディングドレスの手袋の手を握っていた。




