84話 日常と邂逅
「これで、今回の事件は終わりでしょうか……」
詰所に戻ったウェッジはぐったりと椅子にかけている憲兵長に尋ねた。
「あぁ、君はよくやってくれた。儂はまだ事後処理や対応が山ほどあるがな……」
憲兵長は疲弊しきった顔で、机の上に目を走らせる。
憲兵長が外出していた間に、机の上の書類はウェッジの背丈に届くほどまで積み上がっていた。
《杖》を全滅させた男が憲兵団に連れていかれた後、ウェッジたちは詰所に戻ってきた。
まだ、事件の後処理を行っているため、周りの憲兵は慌ただしく動いている。
「それなら、私はここで失礼します。人質にされていた仲間と一緒に、宿で休みたいので」
今日一日はずっと神経を張り詰めていただけに、さすがのウェッジも疲れを感じていた。
「構わんよ。聴取が終わってなくても、係の者に儂の許可を受けたと伝えなさい」
「ありがとうございます」
一礼をして、詰所から出ようとするウェッジ。
その背中に憲兵長が声をかけた。
「今日は本当によくやってくれた。儂たちだけではこの事件、本当の解決には至らなかっただろう。ありがとう、憲兵団一同を代表して感謝する」
ウェッジは振り返ると、憲兵長はウェッジに敬礼を贈っていた。
ウェッジも敬礼で返す。
最初のぞんざいな対応から、ここまで憲兵たちの態度が軟化したことに、ウェッジも少し喜ばしい気持ちだった。
「さて、アリスを連れて帰りますか」
ウェッジはつぶやくと、今日の夕飯の献立を考えだした。
側にアリスが居て、ようやくいつもの《日常》に戻ることが出来る。
そんなことをふと思い、ウェッジはやや歩を速めてアリスのところに向かった。
◇◇◇
アリスを連れて宿に帰る。
宿の食堂で遅くなった夕食を取った後、部屋に向かった。
ウェッジが部屋のドアを開けると、中に見慣れない人物がいた。
「あ」
思わずウェッジが声を漏らす。
(しまった……)
そしてそのまま、ドアを閉めてしまった。
しかし、アリスが不思議そうな顔でドアに手をかける。
「ちょ、ちょっと待ってください……!」
ウェッジが制止するも遅く、ドアが開け放たれた。
部屋では、白い羽を広げたマキシが、所在なさげに佇んでいた。
「ふえぇ、待ちくたびれました。遅いですよ~!」
「えと、誰?」
アリスが首をかしげる。
「あ、あの、アリス、説明を忘れていましたが……。こちらは……」
「ウェッジさん、この人……、羽が生えて……、もしかして……、魔族!?」
ウェッジは頷いた。
途端、
「きゃああああー!!」
と叫びだすアリス。
ウェッジは落ち着いて、とアリスに言い聞かせるも、彼女はウェッジの腕を掴んで離さない。
マキシもアリスの叫び声に驚き、
「わきゃああああー」
負けじと叫び声を上げ、部屋をぐるぐると走り回っている。
「なんだ、これは……」
フィオがこの惨状を見て、ただただ呆れていた。
「いえ、これについては私が悪いです」
ウェッジは事前に説明することをすっかり失念していた。
二人の叫び声は夜の街に響き渡ったとさ。
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