17話 戦隊と怪人
ウェッジは二日酔いから立ち直ると、次の旅に向けての準備を行った。
食料、消耗品などは、幸いにも村の雑貨屋で事足りた。
ウェッジが宿に戻ると、宿の主人が話しかけてきた。
どうやらこの主人、割りと話好きのようだ。
聞けば、冒険者のような変な連中が村にやってきたらしい。
「こんな村に立て続けに冒険者の方が来るのって、結構珍しいんですよ」
時期的に追っ手で間違いない、とウェッジは確信した。
主人に情報の礼を言い、ウェッジは偵察することにした。
小さな村である。
情報収集すれば、すぐに互いの存在に行き着くだろう。
果たして、その相手はすぐに見つかった。
ウェッジが見つけたとき、その冒険者らしき者たちは酒場で主人に聞き込みをしていた。
酒場の入口から顔を出して、様子を窺う。
(確かに、……変、ですね)
異彩を放っていると言ってもよい。
五人組らしい冒険者だが、五人それぞれが、赤、青、黒、白、黄に塗られた甲冑を着込んでいる。
特に、フルフェイスの兜はバイザー部分が黒く塗られていて特徴的だ。
「あぁ、それならあんたの後ろにいるのがそうだよ」
酒場の主人はウェッジの姿を見つけると、親切のつもりか甲冑を着た者たちに教えてしまった。
五人の甲冑が一斉に振り返る。
「見つけたぞ!」
声から男であろうか、赤い甲冑の者が叫んだ。
「捕まえろ!」
他の甲冑を着た者も駆け寄ってくる。
「待たねぇか!」
かぁん、と甲高い音。
酒場の主人が赤い甲冑男の頭を片手鍋で叩いたのだ。
「暴れるなら、余所でやりやがれ!」
「あ……、はい」
皆ですごすごと酒場から出る。
「……さて、気を取り直して。見つけたぞ!悪の手先!」
なにやら聞き慣れない単語があったが、やはりウェッジとアリスを探していたようだ。
「何のことでしょう? 人違いでは?」
ウェッジはとりあえずとぼけてみた。
追っ手だから、というよりは、この派手な者たちと関わりたくないのだ。
「とぼけるなっ! 貴様がアリスとやらと組んでいることは知っているぞ!」
「だとしたら……、どうするのですか?」
ウェッジが赤の甲冑男に問う。
「貴様たちを倒す! 決闘だ!!」
◇◇◇
決闘の舞台は村外れの採石場となった。
ウェッジはアリスとフィオを伴って、採石場に向かった。
アリスを戦闘に巻き込みたくないが、目の届くところの方が安全だと判断した。
決闘に応じる義務は多分無いだろう。
だが、あのカラフルな連中にこれからも行く先々で付きまとわれると面倒臭い。
ここで叩くのが最善と、ウェッジは結論を出した。
ウェッジたちが採石場に着くと、すでに甲冑の男たちが腕を組んで待っていた。
「待っていたぞ」
「貴方たちは、一体何者ですか?」
ウェッジの問いに、よくぞ聞いてくれたとばかりに赤い甲冑男が前に出た。
「私がリーダーのレッドバァドだ!」
赤い甲冑男が声を張り上げて口上を述べる。
「説明しよう! 我ら精霊戦隊エレメンジャーとは、五人の勇者によって結成された正義の味方!」
「礼は節を踰えず! 赤き爆炎のレッドバァド!」
「仁は人の心なり! 青き樹木のブルゥドラゴン!」
「智に働けば角が立つ! 黒き流水のブラックタァトル!」
「義を見てせざるは勇無きなり! 白き錬金のホワイトタイガァ!」
「信じる者は救われる! 黄色い地面のイエロゥジラフ!」
『五人合わせて、精霊戦隊! エレメンジャー!!』
五人がポーズを取ると、その背後で五色の爆発が起きた。
ウェッジはこの時点で、もうすでに帰りたくなっていた。
赤甲冑がアリスを指差し、叫ぶ。
「アリス・ワーグ・アリス! 聞いたぞ、貴様は悪の秘密結社の幹部だとな! 教会を隠れ蓑に悪事を働き、人心を惑わす悪の魔女め! 我ら精霊戦隊が成敗してくれる!」
「……え、えぇ!? あたし、そうだったんですか!?」
アリスが律儀に反応する。
「落ち着いてください、アリス」
(これは、まずいですね……)
ウェッジは苦虫を噛みつぶしたような顔をした。
面倒なことを嫌うウェッジが苦手な、面倒な相手である。
「貴方がたは、傭兵団の者ですか?」
向こうに主導権があると、さらに話が面倒になりかねない。
ウェッジは話を進めようとした。
「傭兵団? あれか、あのいけ好かないリーダーが仕切っているやつか。あんなのと一緒にするな!」
青甲冑が言葉を引き継ぐ。
喋るたびにいちいちポーズを取っている。
何かそういう義務でも課されているのだろうか。
「私たちは、正義の味方だ! 悪の秘密結社を倒すために、悪のあるところに駆けつけたのだ!」
交代して、今度は黒色の甲冑が叫んだ。
会話も皆で分担しているようだ。
「決して、報酬に目が眩んだわけではないからな!」
最後に黄色の甲冑が付け加えた。
単純に冒険者の類いのようだ。
ここでウェッジはひとつの仮説を立てた。
傭兵団と面識があるということは、あの街から来たようだ。
しかし、傭兵団よりも早くあの森を抜けて、ウェッジたちにたどり着いた。
その点においても、相当の情報力、行動力、そして戦闘力があるということ。
つまり、侮れない相手であるということだ。
「申し訳ないですが、お引き取り願うことはできますか?」
交渉の余地はあまり無さそうだが、ウェッジは念のため確認した。
不要な争いならば避けるのが良い。
むしろ避けたい。
「何! お前、我らの正義の邪魔をするのか!」
赤甲冑が声を張る。
「貴様、悪の魔女に肩入れしおって……。怪しい者、つまり怪人だな!」
ウェッジはつい我慢できず、ナイフを放った。
赤甲冑の肩と胸の鎧の隙間に刺さる。
ぐわっ、と叫び赤甲冑が跪いた。
大丈夫?と他の甲冑が駆け寄る。
片膝をついた赤甲冑が、白甲冑からの治療魔法を受けながら息巻く。
「おのれ! まだこっちが喋っているのに、攻撃してくるとは、なんて卑怯な!」
ウェッジはもはや理解できない、いや理解したくなかった。
「今のは痛かった……。許さんぞ、怪人め! 皆、装着だ!」
『おうっ!』
赤甲冑の掛け声に合わせ、他の甲冑も戦闘態勢に入る。
赤甲冑は鳥を模した鍔のある一対の双剣を両手に構えた。
青甲冑は蔦の巻き付いた青い槍を背中に構えた。
黒甲冑は亀の甲羅を模した盾と杖を構えた。
白甲冑は白い鉄弓に矢を番えた。
黄甲冑は鎖で繋いだ二本の棍棒を振り回し、アチョー!とよく分からない掛け声を発していた。
「仕方が無いですね」
ウェッジはナイフに手を添える。
「退かないのなら、容赦はしません。それから……」
ウェッジはひとこと言っておきたかった。
「特に、黄色。貴方はいろいろ間違えている気がします」
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