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18話 キャノンと顕現

精霊戦隊との戦闘が始まった。


ウェッジがまず先制してナイフを数本放つ。

先程と同じく赤甲冑の隙間を狙ったが、今度は刺さらない。

どうやら、《治療魔法《ヒーリング》》を受けているときに全身に《支援魔法《バッファ》》も付与していたようだ。

他の甲冑たちも動き出す。

黒甲冑が蒼白い光をまとう。

《契約書》が現れると、ドーム状の水の壁が出現し、仲間を守った。


次に動いたのは、白甲冑。

ウェッジに矢を放つ。

ウェッジは難なく躱(かわ)す。

続く二射目。

これも躱(かわ)す。

しかし、躱(かわ)したはずだが、服が切られていた。

疑問に思う間もなく、三射目が射たれる。

ウェッジの左右を塞ぐ二連射。

避ける寸前でウェッジは気付いた。

矢が変形して鎌のような刃を生やしている。

鎌をナイフの刃で受ける。

すると、今度は鎌が紐状になり、ナイフに絡みついた。


(白甲冑は錬金魔法の使い手ですか)


ナイフを投げ捨てるウェッジ。


その隙に、赤甲冑と青甲冑がウェッジに肉薄する。

赤甲冑は炎を纏(まと)った双剣を振るい、ウェッジを攻め立てる。

《支援魔法《バッファ》》で強化された身体能力により、旋風のごとき猛攻だ。

青甲冑は赤甲冑を目隠しに使い、合間から的確にウェッジを貫こうと、槍を突き放ってくる。

息の合った連携である。

数撃の交錯のあと、青甲冑がいったん距離を取ると、

「精霊よ!」

《合意文《アグリメンツ》》を叫び、魔法を実行した。

突如、ウェッジの周りに現れる太い蔓。拘束しようと迫ってくる。

ウェッジはナイフで蔓を切り、退避しようとして、上空の影に気が付いた。


「キェエー!」


跳躍してきた黄甲冑がウェッジの頭めがけて棍棒を振り下ろす。

転がって横に避けるウェッジ。

間一髪の回避。

黄甲冑が勢いのまま棍棒を地面に叩き付ける。

轟音と土煙が舞い、地面が陥没した。


ウェッジは的にならないよう、走りながらナイフを投げて牽制する。

しかし、こちらの攻撃は黒甲冑の防御魔法に阻まれた。


(キワモノかと思いきや、なかなか見事ですね)


魔法と武術、補助と防御に回復もある。

高度にバランスの取れたチームワークだ。

しかし、連携により完成されているのなら、


(各個撃破です)


ウェッジが甲冑たちに向かい、走り出す。


白甲冑の矢を大きく避けながら、ウェッジが狙ったのは黒甲冑だった。

守りの要を先に落とすつもりだ。

そうはさせまいと、赤、黄、青がウェッジに詰め掛ける。

それぞれの攻撃を、身を反らし、後ろに跳び、ナイフで逸らし、避けきった。

そのまま勢いを殺さずに走り抜け、黒甲冑の目の前、至近距離までたどり着く。


「くそっ!」


黒甲冑が殴りかかろうと杖を振り上げる。

ウェッジは振り下ろされる前に、杖を握る指にナイフを放った。

指を傷つけられた黒甲冑が杖を落とす。


(やはり、至近距離で防御魔法は使えない)


ウェッジは過去の経験から、防御魔法の弱点を突いた。

黒甲冑は盾を構えて防御の姿勢を取った。

ウェッジは地に両手をつき、逆立ちのように伸び上がって盾を蹴り上げる。

跳ね上がる盾。

無防備となった胴体。

装甲の隙間にナイフを突き立てる。

黒甲冑は叫びながら膝をついた。


「よくもブラックを!」


青と黄、赤がウェッジに迫る。

ウェッジは次の標的を青甲冑に定めた。

赤甲冑の炎は青甲冑の樹木の魔法に延焼しかねないので、青甲冑の相手のときには赤甲冑の積極的な介入は無い。

また、黄甲冑の攻撃は地面を粉砕するほどの威力である反面、味方も巻き添えにしかねない。

二人とも密着するほどの近接戦では手の出しようがない、とウェッジは考えた。

読み通り、青甲冑に接近すると、赤と黄の動きが止まった。


青甲冑は近づくウェッジに、槍で轟音を伴うひと突きを見舞う。

ウェッジは引き付けて皮一枚で躱(かわ)す。

続けて青甲冑の風を切り裂く三連撃。

速度を重視した攻撃のようだが、ウェッジはナイフで捌き受け流した。

次いで繰り出されたのは横薙ぎによる一閃。

ウェッジはこれを屈んで躱(かわ)し、青甲冑の攻撃後の隙をついた。

脇の継ぎ目をナイフで突かれ、青甲冑が沈む。


青甲冑が倒れると、黄甲冑が鎖付き棍棒をヒュンヒュンと振り回しているのが見えた。

そのまま黄甲冑が近寄ってくる。

棍棒が独特の軌道を描き、ウェッジに襲いかかってきた。

ウェッジは攻撃を見極めると、距離を取る。

そして、攻撃の支点となっている鎖目掛けてナイフを投げた。

楔のようにナイフが絡み、回転の勢いが殺される。


「あちゃー……」


間抜けな声を上げ、武器が使用不能となった黄甲冑に駄目押しのナイフを放つ。

黄甲冑、撃破。


一気に三人も倒されたことで、甲冑たちは方針を改めたようだ。

赤甲冑はダメージを受けた三人を回収、白甲冑の《治療魔法《ヒーリング》》で回復を受けさせた。


「みんな、大丈夫か!」


「見た目は地味な怪人なのに、ここまでやるとはな」


「おのれ、怪人ナイフ女(・・・・・・)め!」


ウェッジは怒りのナイフを投げる。

しかし、すんでの所で黒甲冑の水の壁が復活して、ナイフを阻んだ。

皆が回復したのを見計らい、赤甲冑が叫ぶ。


「こうなったら、一気に押し込むぞ! みんな、《精霊キャノン》の準備だ!」


『おう!』


五人は何やら陣形を組み出す。

縦一列に並び各自ポーズを取ると、甲冑たちの周りに蒼白く光る《契約書》が複数浮かんだ。


(魔法、しかも大規模!?)


ウェッジは契約を中止させようとナイフを次々放つ。

甲冑たちは魔法契約中であるため、防御魔法は使えない。

ナイフが刺さっていく。

だが、何本かナイフが刺さっても甲冑たちは倒れない。

恐ろしい集中力のためか、ナイフ程度では意に介さないようだ。


五色の光の玉が甲冑たちの前に現れたかと思うと、ひとつに合体し大きく膨らむ。


「ウェッジ!」


フィオが叫ぶ。

ウェッジはフィオの近くに駆け寄る。

フィオに何か策があるようだ。


『食らえッ! 《精霊キャノン》!!』


複合属性による高出力の攻撃魔法が放たれる。

目を焼くような光の奔流が、ウェッジたちを襲った。

すさまじい爆発。

辺りに土煙が立ち込める。


「やったか!?」


黄甲冑が叫ぶ。


「イエロゥ、それは言うな!」


他の甲冑から突っ込みが入る。

土煙が上空に巻き上げられる。


そこに現れたのは炎の竜巻だった。


そして、竜巻が弱まると、中からウェッジたちが出てきた。


「フィオ、さすがです。助かりました」

「我にかかれば、こんなものよ」


フィオは事も無げに言ったが、実際甲冑たちの魔法は相当の破壊力だった。

だが、フィオは空気中の水分を瞬間的に加熱、水蒸気爆発を起こして《精霊キャノン》の勢いを弱めた。

また、炎を竜巻上に放ち、生じた上昇気流と炎の壁も防御に加えた。

瞬時にここまでの防御を繰り出すことが出来るのは、世界広しといえどフィオぐらいだろう、とウェッジは感心した。


「アリス、ウェッジ、下がっていろ」


フィオはそのまま戦闘に加わるつもりのようだ。

「我に魔法戦を挑む、その無知無謀。全く、物を知らぬ奴らだ。だが、その酔狂な格好は我も笑える。それに免じて、無礼は許すか」


小さなリスの見た目でありながら、相変わらず尊大な態度。

だが、今この場にそれを諌(いさ)める者は居ない。

その態度に相応しい実力というのを、まさに見せつけたところなのだ。


「貴様らの戯れに付き合ってやる」


魔法戦には絶対の自信をうかがわせるフィオである。

たとえ、相手が何人だろうと、その自信は崩れないのだろう。


「だが、アリスを害するならば」


フィオの周りに蒼白い光が舞う。


「貴様ら、一片の灰塵すら残さぬ」


甲冑たちはフィオの迫力に気圧されているようだ。

しかし、今の攻防で甲冑たちは何かを掴んだ様子である。


「レッド、アレはまさか侵食精霊……」

「……かも知れん。現に、炎の精霊が干渉を受けて制圧されている」

黒甲冑が前に出る。

「だとしたら、相性的に私が……」

それを制して、赤甲冑が声を低くして言った。


「……いや、ここは切り札で行く」


「レッド!」


「……こちらもこれ以上消耗するわけにはいかない。怪人に怪獣、魔女の三人をまとめて倒すには……、使うしかない」


黄甲冑が口を挟む。


「……でも、相手が巨大化とかしてないのに」


「イエロゥ、黙って」


どうやら甲冑たちの意見はまとまったようだ。

赤甲冑が他の甲冑に呼びかける。


「いくぞ、みんな!」


『おう! 《精霊同盟契約《エレメンタル・トラスト》》!!』


む?とフィオが反応する。

今度の甲冑たちは横一列に並び、魔法契約を始めた。

背後の空間が歪んで見える。


「精霊が、騒いでる……?」


アリスはどうやら精霊の動きを感じたようだ。

ウェッジも上手く形容出来ないが、何かこの世界に割り込んでくる者がいる、という感覚を覚えた。

甲冑たちの背後の歪みがさらに強くなる。


そして、そこから光と共に、《精霊《・・》》が顕現した。

数ある作品の中から、本作品をお読み頂いて、ありがとうございます。


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