118話 限界と撹乱
「待ってくれ! なんでいきなり俺は土下座させられてるんだ!?」
スタンリーが部屋でくつろいでいると、いきなりウェッジとレイシアが飛び込んできた。
そして有無を言わさず、謝罪するように詰められて、わけの分からないまま地に伏してしまった。
困惑しているスタンリーをよそに、ようやく二人は溜飲が下がったようだ。
「なぁ、もう起き上がっていいか?」
「えぇ、少しは気が晴れました」
何だったんだよと愚痴を言いながらスタンリーは立ち上がる。
ウェッジに説明を求めると、彼女は先の食堂での会話を要約してくれた。
自分の行為で二人にあらぬ嫌疑と迷惑を掛けたと知ったスタンリーは、今度は素直に非を認めた。
「そうか、それは済まなかった。……しかし、それはどうしようも無くないか?」
他の問題は多少の我慢が出来ても、食料だけは消費せざるを得ない。
「そうですね……。そろそろ、隠れるのも限界でしょうか」
スタンリーは考え込んだ。
現状のままでは、いつか隠れていることがバレてしまうだろう。
ここで、一気に手を打つべきか。
「……そうだな。ひとつ、博打を仕掛けるときかもな」
「何か考えでも?」
「……教祖に直接問いただす」
「それは……、大きく出ましたね」
ウェッジが驚いた顔をする。
「遅かれ早かれ、教祖には会って話をしなきゃならないんだ。外堀の調査だけでは限界もある。この辺りで核心に迫るべきだろう」
スタンリーは決意に満ちた顔である。
「決断するのは良いのですが、何か具体的な案はあるのですか?」
ウェッジはいつもの涼しげな顔で尋ねてきた。
「あぁ、そうだな……。今は教祖の部屋の前に四六時中警護の人間が立っているんだろう?」
「はい。それに、祈りの間には窓も無く、出入口はただひとつきりです」
「それなら……、こんなのはどうだ? 今日の真夜中、アンタたちがこの館のどこかで大きな騒ぎを起こす。それで警護の奴を誘い出してくれたら、その隙に俺が教祖の部屋に侵入して、話を付ける。良い案だろ?」
「……単純ですが、現状それ以外に手立ては無いですね」
「そうだろ? 教団の奴らにまだ俺の存在は知られていないから、警戒も薄いだろうしな。どうだ、協力してくれないか?」
ため息と共に、ウェッジが答える。
「分かりました。私たちは上手くやりますので、貴方は下手を打たないように」
「いいの、ウェッジさん?」
ずっと話を聞いていたレイシアが口を挟んできた。
「私たちも教祖に閉じこもられたままでは、埒が開きませんので。ここで動かす必要があるでしょう」
「お嬢ちゃん、大丈夫だ。この作戦なら、きっと上手くいくさ」
スタンリーが胸をドンと叩く。
「それに、捕まったところで、取って食われるわけじゃないだろうしな?」
肩をすくめておどけて見せた。
「それは……、どうでしょうか……?」
ウェッジは深刻そうな顔で答えた。
「え、ちょっと待ってくれ。何だ? そんなに教団の奴ら、殺気だってるのか?」
ちょっと覚悟が揺らいでしまう。
「スタンリー、貴方の犠牲は無駄にはしません」
「スタンリーさん、どうか死んでも恨まないでくださいね」
「なぁ、おい、やっぱり、少し考え直そうか。おい、待てって」
スタンリーの懇願に聞く耳を持たず、二人は足早に部屋を出ていこうとする。
「では、今夜決行で。よろしくお願いしますね」
ウェッジは無慈悲にそう告げると、ドアを閉めて去っていった。
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