きっと大丈夫。
加速してそのままシヴァの身体を両断した瞬間。
部屋の中の空間が爆発し天井が弾け飛んだ。
シヴァが部屋に張っていた結界が弾けた?
うん。たぶん、そう。
爆風の吹き荒れる中あたしはデルタを目視し確認するとその側に寄り添うように跳び、小さく空間転移をして周囲に防御膜を張り巡らしてその爆風をやり過ごす。
まさか、これで終わり?
っていうかもしかしてあれ……。
魔力が暴走したような激しい爆発がおさまった後。そこにはシヴァの肉体は残っていなかった。
魔力紋も感じない。まるでここには最初から居なかったかのように、消え去っていた。
「はう。あれはもしかしてマトリクスの現し身だったのかも?」
「え? デルタ、わかるの?」
「マナで作ったガワに自分のマトリクス《現し身》を被せて、遠隔で動かしていたのかも。本体の魂を回廊で繋いでマナを送り込んでたっぽい? イリスに切られて風船のようにパンって弾けちゃったの」
ああ。
ってことはあれはシヴァの分身に過ぎなかったってこと、か。
ちょっと悔しいな。あたしはその分身相手にこんなにも苦戦したんだってことだよね。
それに。
もう、面倒だなぁ。
完全に敵にまわったシヴァはあたしのことをほっておいてはくれないだろう。
ちょっと調べればあたしがいるところなんてすぐにバレるだろうし、両親やみんなに迷惑がかかるのも、嫌だな。
どうしよっか。
「シヴァ様! どうされましたか!」
バタバタバタと人が集まる気配。
爆風のせいで扉がひん曲がりなかなか開かなくて時間稼ぎになってるけどここまで、かな。
「面倒にならないうちに帰るよ!」
「もきゅう」
あたしはデルタとハルノブに触れるとそのまま跳んだ。
目標はあたしの部屋。うん。まだ座標わかる。
ぐぐぐっとレイスの奥に手を伸ばし、そこから伸ばした見えざる手で自室の空間を掴み。
ぐねんと空間をひっくり返す。
そして。
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部屋に帰りハルノブを介抱したところで扉をノックする音が聞こえた。
「エオリアだよね? どうぞ入って」
あたしがそういうのが早いか扉が開き、泣きそうな顔をしたエオリアが部屋に滑り込んできた。
「ぼっちゃま。ご無事で……」
「ごめんねエオリア」
「いえ、いいんです。ぼっちゃまさえご無事なら……」
ふわっと両手を広げたエオリアがあたしの頭を抱きかかえて。
あたしも。
エオリアの肩に、手を回した。
あたしが実は魔法が使えて空間転移までをも使えるってこと、エオリアはあの一瞬で察したらしい。
心配で仕方がなかったけれどあたしが自分の意思で跳んだのだと理解した彼女は、そのことを両親にも誰にも言わずただただ待っていたのだという。
ごめんねエオリア。
実はあたしの魔力が人並み以上にあることはとっくにばれていたっぽいしそれでも何も言わずあたしを慕ってくれたエオリアに。
あたしは心の奥が暖かくなるのを感じて。
エオリアをも含め、この今の家族たちを絶対に護りたい。そう強く思って。
あたしは父様に願い出た。
王都の学校に行きたいと。
あれがあたしを狙うとして。
この街にいれば直接的にも間接的にもいくらでもチャンスを与えてしまうことになる。
そうして、家族を巻き込んでしまうことにもなりかねない。
だとしたら、ね?
王都に、王都にある学校で大勢の生徒に紛れてしまった方がもしかしたら降りかかる火の粉もはらいやすくなるかもしれない。
そう思って。
あのシヴァだって、流石にこの世界の王都で真っ向から暴れたりすることも無いだろう。
そんなことが出来るなら、やる気なら、とうにやってるはずだし。
幸い王都の学校には寄宿舎のあるところも多い。
全国から王都で学ぶために大勢の子供が集まってくるのだから。
うん。大丈夫。
きっと、大丈夫。
未来は何も決まっていないけど、全てはあたしの心次第、なんだもの。
第一部完デス。
ありがとうございました。




