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ヒーロー×ブレイブ~世界を救った英雄は静かに暮らしたい~  作者: 橋藤 竜悟
第一章:帝国編 第一部四節 交錯の戦争
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38 第二砦

 階段を上り終え、砦門上部でジンとマオに合流する。

 道中敵は見当たらなく、砦からは殆ど帝国兵の姿がなくなっていることが確認できた。

 門からの支援がなくなり、帝国軍の前線も徐々にではあるが下がり始めている。

 このまま開門して総崩れになってくれれば一番なのだが、この下がり方を見るにこの状況は帝国の作戦範囲内のようだ。そこまで期待はできないだろう。

 俺たちが外に出て挟み撃ちをし、崩せないのであれば姿をさらしてしまうこちらが抱えるリスクのほうが大きくなる。今回は見合わせたほうがいいな。


 数分後、砦門西側から潜入した部隊と合流することができた。


「西側の制圧は完了しました、被害も多少でましたが……。英雄殿はさすがですね、負傷者すらいないとは」


「たまたま入った場所がよかっただけだよ。敵司令官は第二門へ撤退後連絡橋を破壊、一部の兵は制圧できたが兵の無力化で言うならこちらは半数もできなかった。そちらの任務遂行感謝する。では作戦通り開門後第二門の攻略を始めよう」


「了解しました。こちらも引き続きこの門を維持します、御健闘を!」


「お前たちも前線の支援を頼んだ。この戦闘ももうひと踏ん張りだ、やり遂げるぞ!」


 そのまま別部隊とは別れ、来た道を戻り砦を下りていく。

 途中、門付近で見つけた太い鎖に巻かれた大きな回転レバーをまわし、作戦よりも遅れはしたが門を上げることに成功する。

 重い音をあげ上がっていく門を見て、リベリア軍は作戦の第一目標が陥落したことを悟り、歓声を上げた。


「このまま押し込め!帝国軍を追い詰めるんだッ!」


 前線を維持し続けていたのだろう、泥や埃にまみれ傷だらけになりながらジェイドが叫ぶ。

 その勢いのまま帝国軍は第二門内へ下がり、門を挟んでの睨み合う膠着戦へと様相を変えていった。


「何とか押し込むことはできたようだな。このまま第二門内部へ急ぐぞ」


 上部の連絡橋は破壊され、渡れなくなっているため下部にある入り口まで回り込む必要があった。

 幸い、外に出ている敵は第二門周辺に集まって陣形を整えている途中のようでこちらには気づいていない。今のうちだ。


「……何とかたどり着けたか。全員いるな?」


「センセー、カインくんがー」


「フィー、それはもういい」


 何度言わせれば気がすむんだこの駄エルフは……。


「自分もマオも大丈夫です。ここからが正念場ですね!」


「……もうすこし」


「ああ、さっさとリベリアから帝国を追い出すぞ」


 決意を新たにし、第二門内へ突入する。


 盛大なお出迎えがあると踏んでいた入り口には一人の敵兵すらいなかった。……兵力の分散を恐れてどこかに固めているのか?

 それならば入り口に固めて侵入を防ぎ、外にいる兵を呼んだほうが早いのではないだろうか。まあそれはそれで外の戦力を割き、混乱するリスクを回避するならば取らない戦術でもあるか。


「不気味だな……。罠の可能性もある、慎重にいくぞ」


「ここまであからさまだとカイン様の気にしすぎとは言えませんね。私も気をつけます」


 フィーがまじめに受け答えしている気がする、久々すぎて変な違和感さえ感じるほどだ。俺もだいぶやられているのだろうか……。

 進撃速度を落とし罠や奇襲に警戒しながら進んでいく。こちらには魔法と暗躍のスペシャリストがいてくれるため警戒自体は容易だった。


 読み通り第一門より魔術紋による罠や少数での待ち伏せによる奇襲などは多く見られるようになった。が、やはり全体として割かれている戦力が少なすぎる。

 この門を突破されると帝国軍本隊は後がないはずだ。その門の守りを手薄にする意味は何だ?

 帝国軍が人員不足で主要な場所に兵を裂けなくなる事態になっているとは思いがたい。ならばやはり誘い込まれていると見るべきだろうか。

 しかしそうとわかっていても、この門を落とすために自分たちが進まないといけないという事実になんら変わりはなかった。

 兵の数が少ないリベリアに持久力はない。俺たち別働隊が二の足を踏むと、それだけで前線が崩れてしまうリスクが大きくなってしまう。


「みんな、これは十中八九俺たちを誘い出す罠だ。魔術紋や奇襲ではなく、ここから先どういった攻撃を受けるかはわからない。だが作戦上戻ることもできないんで覚悟を決めてほしい」


 途中で立ち止まり、全員に声をかける。現状で大体理解できているとは思うが、覚悟をさせておくのとそうでないのとでは動きに大きく差が出るのは確かだった。


「この様子だとそうとしか考えられませんよね。覚悟ならカイン様の秘書官に選ばれたときに全部済ませてるんで大丈夫ですとも!」


 フィーが力強く答える。そんなに前からいったい何の覚悟をしていたんだお前は……。だが、その一言が何より嬉しい。


「ここまで英雄様についてきたんですよ?覚悟なんてとっくに決まっています!地獄だろうと何だろうとお供します!」


「……わたしもできてる。なんでもまかせて」


 ジンも続いて胸を張る。マオも言葉は少ないが信頼してくれているようだ。

 ……ここまでしてきた任務は無駄ではなかったな。

 当初は「英雄」というだけで得ていたであろう信頼を、「カイン」が受けていると実感できた。


「よし、ならこのまま敵の懐に殴りこむぞ。英雄が率いる隊がそんな軽い手でどうにかできる相手ではないことを見せ付けてやろう!」


 前進を再開し、警戒を続けながら先を急いでいく。やはり先ほどと変わらない罠がところどころにある程度で砦内に敵は少ないままであった。

 このままでは第二門を開門するまでこの調子なのではないだろうか、そう思わせられる勢いで兵士の姿がない。

 第二門の開門レバーは砦を敵陣側に出たところにある。これを操作しようとなるとどうがんばっても敵中に突撃する形となってしまうわけだが、どれだけ兵力が結集していても、少数を囲める人数は限られている。

 その状況になるまで、体力も戦力も残しておける事自体は悪い状況ではなかった。


 そのまま突き進むも、予想は的中しほとんど敵兵を見つけられないまま、砦内の制圧が完了してしまった。

 あとは開門し、敵本陣を挟撃してここから追い出せばリベリアの勝利となる。

 そうなるとやはり開門時に何かあると考えるのが妥当だろう。開門させるまでに敵に取り囲まれるのは想定内だが、開門すると魔術紋が発動し門が崩れて潰されるなんてことにならないとも限らない。

 どういった状況にも対応できるようにするのは不可能ではあるが、その仮定を怠ってはいけない場所が戦場だ。

 ロータスのときもそうだったが、敵の罠だとわかっているところに飛び込むのにはかなりの勇気がいる。


「本当に、早く引退するべきだった……」


 小さくぼやきつつ、覚悟を決めて砦門から敵陣側へ出る。


 開ける眼前、そこには視界を埋め尽くす帝国兵の姿があった。

 案の定ほぼ全兵力を挙げた帝国兵のお出迎えがすきもなく整列している。が、砦付近、こちら側はなぜか誰もいない空間ができていた。

 この時点ですでに引き返したい気持ちでいっぱいだ。俺たちがここまで来るのを待たれていた、どう考えても乱戦よりひどい状況になっていることがわかる。

 その時帝国軍が整列している部隊、中央から一人の騎士が進み出てきた。


「ようこそおいでくださった英雄殿。私は帝国騎士団所属、上級騎士五位サミュエル・ジル・ギレットというものです。どうかお見知りおきを」


 その騎士は兜をはずし仰々しく挨拶をしてくる。しかし敬意などは微塵と感じない形だけのものなのが透けて見えた。


「出迎えありがとうサミュエル殿、いきなりで悪いがここを通してくれないか?」


 俺も負けじと軽口を返す。


「そう急かさないでくださいよ英雄殿。急いては事をし損じるとも言うでしょう?私は大仰な鎧を身につけておりますが肉体労働が不得手でしてね、ここは一つ私たちとゲームでもいかがでしょう」


「ゲーム?お前は今の状況をわかっているのか?」


「おやおや、それはこちらの台詞でしょう」


 サミュエルが片手を挙げる、すると息をそろえたように兵たちが一斉に抜刀した。そんなこと練習するくらいなら練度を上げとけ、いや練度が高いからこうなのか?


「私も全て戦争という暴力で解決するのはいささか華がないと常々思っていましてね。なので、機会さえあればこうして相手をゲームにお誘いしているのです。」


 どうやらこちらに拒否権などはないらしい。わかりきっていることだったが、こういう手合いは気に入らない。遊びで人を、その誇りを殺しにくるのだ。


「それはタイヘン素晴らしいお考えで。で、俺たちはどんなゲームをやればいいんだ?」


「さすが英雄殿、話が早い!いや、最近相手にした辺境地の蛮族共にはこの崇高な考えは理解しきれないようでね、話がわかる御仁とあえて嬉しい限りです」


 大きく体を動かしながら大げさに話し続けるサミュエル。会話のペースを逃さないための素振りが強く、政治畑出身であることを匂わせる。この砦全体の指揮官、または参謀とみていいかもしれない。


「申し訳ない、話がそれましたね。では始めましょう。ルールは簡単、ただ生き残り、勝ち取ればいいだけです」


 サミュエルがパチンと指を鳴らすと魔術師の部隊が一斉に呪文を詠唱し始める。

 するとカインたちを囲むように魔法陣が5つ励起した。

 突然で驚いたがどうやら召喚呪文のようだ。恐らく今から呼び出す相手と戦えということだろう。


 剣を抜き身構える。後ろの三人も同じように臨戦態勢をとった。


 魔法陣が強く光り、呼ばれたモノが姿を現す。

 そこには青と金に彩られた荘厳な重鎧に身を包み、巨大なタワーシールドや剣、槍、はたまた槌といった武器を構えた騎士が5人佇んでいた。


 そう、少数での絶対戦力を誇る、敵に回せば国すら残らないと恐れられる聖都シーディアが最強戦力の一つ、聖騎士団の姿だった。

サミュエルさんは好きなキャラです。

がんばえー

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