お隣さんに脱獄を誘ってみる
「ノベルさん。相談があります。」
ちょっと改まった言い方をしてみた。平たく言えば、「これから一緒に脱獄しようぜ」って誘おうとしてるのだから、まぁ、いいだろう。
だけど、その前に確認したいことがある。ノベルさんの答えによっては最悪の展開もありうる。
「ノベルさんは、このまま独房にいます?」
「ほぇ?」
ノベルさんは俺が何を言いたいのかわからないのだろう。とぼけた返事をした。
「ああ、聞き方が悪かったですね。ノベルさんは釈放予定とかあるんですか?」
「いえ、何も聞かされてないですぅ。というより、既に1週間くらいはここにいますけどぉ・・・忘れられてるんでしょうかねぇ。」
一週間、日の目を浴びてないのか・・・それは結構つらいな。脱獄しなければ明日のわが身だ。しかし・・・おいくつかは知らないが、声からするとまだ若いと思われるノベルさんが1週間も独房生活とは・・・ひどいことをする。
その間、風呂も入っていないと考えると・・・うーん、あまり考えたくないね。
というより、俺たち日本人が風呂好き&きれい好き、という話なのかもしれない。ここは中世レベルの文明強度である異世界だからなぁ。かくいう俺も城を追放されてからの宿屋生活ではほとんど風呂に入れていない。高いんだよね。
だから普段はタオルで拭いたりしているわけだが。
というわけで、ノベルさんとの会話を続ける。
「結構長くいるんですね。ああ、そうだ、お顔を拝見させていただいてよろしいですか?」
「ほぇ?でも壁がありますよねぇ?」
「ありますね。ただね、こうやってちょっとした穴を作るのは簡単です。」
といって、俺は土木魔法で直径10センチ程度の穴をあけた。
「ふわぁぁ?びっくりしましたぁ。」
そこで初めてノベルさんの顔を見た。見たといっても明かりは独房の外にある松明から漏れる光しかないので、はっきりとはわからない。ただ、まぁ、普通の女の子?ではあるようだ。少なくとも取って食われることはないだろう。
そして、相手の顔が分かるということはこちらの顔も分かるということだ。
「ほぇ?もしかして、和田さんって最近巷で有名な勇者様・・・ですかぁ?」
「勇者・・・ではないですね。なんたって異世界召喚されたその日にクビになりましたから。」
「ふぅん。訳ありなんですねぇ。」
ここにいる時点であんたも十分訳ありだけどな!って突っ込んでやりたい。
「まぁ、俺のことはどうでもいいです。それよりノベルさん。もし、もしですよ?独房から出られるとしたら、俺と一緒に行動します?」
さぁ、聞いたぞ。
ただ、ノベルさんの回答次第では最悪の手段も取らなければならない。
ズバリ、スラ吉による少女殺害事件だ。直径10センチの穴が開いているから、スラ吉でもノベルさんの部屋に移動できるうえに、視界は真っ暗だ。スラ吉に分がある。
あとは、スラ吉がノベルさんの顔にへばりついて口と鼻を抑え、声を出させずに窒息死させるというプラン。我ながら恐ろしいことを考え付く・・・勿論、これは最終プランだ。
人殺しなんてしたことないし、したくもない。そして、おそらくは自らの手で殺せるかといえばできない。それをスラ吉に肩代わりさせようとしているのだ。卑怯この上ない。
さぁ、どういう答えが返ってくるのか、ドキドキの瞬間だ。




