【二】
何度も鳴るピロンという甲高い音で柴田は目を覚ました。
寝ぼけ眼で枕元に置かれた目覚まし時計に目をやると、時刻は午後の三時過ぎ。あれからまだ六時間ちょっとしか経っていない。
脱ぎ散らかしたままの洋服が床にそのままになっており、家電量販店のレジ袋も座布団の上に鎮座したままだ。
柴田は、いつものように頭を掻いて、首を左右に軽く揺すって意識をハッキリとさせる。その間にもタブレット端末から聞こえてくる甲高い音は、ある程度の間隔を開けながら、一定では無いタイミングで鳴っているが、決して止まることは無い。
柴田は観念してタブレットを取ると、そこには未読メッセージと書かれた文字の横に数字で62と付いていた。朝のタイミングで作られた柴田と中道、そして吉岡のグループには柴田以外の二人の会話が永遠とも思えるほど続いていた。
とりあえず、と考え適当に「おはよう」と、だけメッセージを送ると二人からはそれぞれ違った返事がやって来た。吉岡からは丁寧な「おはようございます」という挨拶。中道からは、「遅いぞ!待ちくたびれたわ!」というメッセージと共に一体何のキャラクターなのか分からない動物が怒り狂ったスタンプが送られてきた。
この二人は本当にちゃんと寝たのか?と、心配してしまう柴田だったが、もしかすると中道は楽しみすぎて眠れなかったのかもしれないと思うと、安眠を邪魔されて無理やり起こされた怒りもどこかへ行ってしまった。しかし、昨晩のピラフ以降何もお腹に入っていない為、流石に何か食べたいと思い、二人に「もう少し待ってて」とメッセージを送ると、急ぎ食べ物と飲み物を買うためコンビニへと向かった。
何かに足を踏み入れて始めて分かる事もある。
おにぎりに合うのはやっぱりお茶だろうと、ドリンクが並ぶ冷蔵庫の前で商品を見ていると、『G.O.U』と書かれているタグが付けられたペットボトルが目に入った。どうやら、コラボというのをやっているようでジュース一本で1ポイントが貯まり、貯まった数によって、アイテムなどが手に入るようだ。
中道と一緒に遊ぼうという事になって『G.O.U』というゲームを知ったが、家から一番近くにあるコンビニの冷蔵庫にコラボ中の商品があるなんて今まで全く気付かなかった。
が、その商品には手を触れず、お茶とおにぎりを適当に二つ購入して早足で家に帰った。
予想していた通り、柴田がいない間もタブレットは鳴っていたようで、未読メッセージが12なんて数字になっている。
「なんか、催促されてるみたいだな」
苦笑いを浮かべてそう零した柴田は、座布団の上に乗っているレジ袋を手に取る。が、すぐに横にどけて、空いた座布団に自分が腰を下ろす。テーブルの上に置かれたタブレットに目をやると「先に始めちゃう?」と、メッセージを送る中道と、「もう少しだと思うから待ちましょうよ」と、必死で抵抗してくれている吉岡のメッセージがあった。
あんまりのんびりもしていられないと思った柴田は取り急ぎ「ただいま」とだけ送信し、おにぎりの包装に手を掛けた。
それから数分で完食し、待ちわびる二人へとメッセージを送ると、返事ではなく通話が返って来て、
「おっそいよっ!!」
と、怒鳴られてしまった。
三人同時に通話しているので、その声は吉岡にまで聞こえているはずだが、
「待ちくたびれて葵ちゃんにVRGの方の音声チャットの設定の仕方まで説明終わっちゃったよ」
いつの間にか、苗字呼びから名前のちゃん付けにグレードアップした二人の関係に驚きつつも、
「分かったから、ちょっと待ちなさいって」
と、答えつつ、先程どかしたレジ袋に手を掛けた。
そのまま会話をしながら箱を開け、ヘッドギア型をした本体と腕に装着するハンドバンドを取り出し、「これって『G.O.U』のソフトはどこに入れるの?」
久しぶりのゲームに訳が分からず尋ねると、
「右耳のとこに入れる所あるんだけど分かる?」
すぐに中道から言葉が返って来るので、指示通りに進めて行くとゲームの設定や音声チャットの設定はスムーズに終わり、
「よし。遅くなりましたけど、俺も準備出来ました」
柴田が言うと、二人からは「お疲れ様でした」という声と「早く早く」という声が聞こえて来た。
17.04.27 誤字修正




