【五】
「基本的には人の急所と同じだと思ってくれて大丈夫」
綱親はそう言いながら自分の顔の前に指を一本伸ばすと、
「知ってる?人の急所っていうのは身体の中心のラインに集まってるんだよ」
彼女は更に言葉を続け、
「さっきのボスに当てた攻撃は頭頂部だったんだけど、他にも目とか鼻の下にある人中、顎とか喉もそうだよね?一番有名なところで言うと鳩尾とか?」
要はその説明を受けて、確かに真ん中のラインに集まってるなと感心した。そして、弓で攻撃をしている葵の事を思い出し、
「葵の攻撃のダメージがたまに大きくなってたのは急所に当たってたからなのか」
一人納得したように呟いた。
「葵さんは弓を使っているんだっけ?」
最初に会った時の事を思い出すようにして言葉を作ると、
「そうですね」
「なら、急所を狙うように心掛けると威力が上がって効率も良くなると思うよ。遠距離武器は敵の攻撃を受けにくい分、攻撃力も少し低く設定されてるから」
「なるほど。あ、そうだ。近接で強い武器って言うと、やっぱり日本刀ですか?」
「うーん、一概にこれってのは言えないけど、技能も変わってきたりするし、それぞれにそれぞれの良さがあるからね?でも、私が使ってて一番やりやすいのは日本刀かな?一応、武将だしね?」
照れたような笑顔を零して彼女は言った。
そんな会話をしていると眼前に数字が現れてカウントダウンが始まる。それは三十から徐々に数字を減らしていくのだが、
「なんか、出て来ましたけど、これ何ですか?」
その数字を凝視し、指を差しながら尋ねると、
「最初の設定でここの迷宮と次に行く金山の迷宮、両方に行くってしてあるから、ここが終わったら自動で次の所まで飛ばしてくれるんだけど、そのカウントダウンだね?終わるまでにやり残したことはやってしまえよ!っていう」
要が頷いてその話を聞いていると、数はゆっくりと減って零になると同時に目の前が暗転し、気が付けば先程来たばかりの金山前へと移動していた。
「これ、便利過ぎじゃないですか?」
プレイヤーにとっては有難い事ではあるのだが、自分達が馬と足で歩いて来た距離を考えると少し切なくなってしまう。
「やっぱり最初に来る時は自分達で辿り着いた方が良いとは思うけどさ?二回目以降は少し移動が面倒になるのは正直あるからね?」
彼女は更に続け、
「平日に少しだけ遊びたいってなった時に長い移動があると楽しめなくなっちゃうしね?」
言った彼女は看板に触れて、要と共に金山の中へと入って行った。
中に入り、戦闘を二つほど終えた後にふと綱親が呟いた。
「号によってはオリジナルの技能があるのは知ってる?」
「あ、そういうのもあるんですか?」
「残念ながら海北綱親には個人で使える技能は無いんだけど、武将によっては技能だったり、武器だったり、オリジナルの物が貰えるみたいだよ」
「個人でって事は何か他にあるんです?」
「長政が号を付けた三人。赤尾清綱、雨森清貞、それに私、海北綱親が同じパーティーにいると、浅井三将っていう技能が発生するんだけど、ステータスがアップするバフ技能だからあんまり派手さ無いんだけどね?」
「でも、号があると出来る事の幅が広がりそうだから羨ましいです!」
「町歩いてると目立っちゃうから良い事ばかりでも無いんだけどね?」
彼女は苦笑いで言った。




