【三】
技能にはレベルに関係無く取得出来るものと前提条件で解放されるものがある。単に前提条件といっても技能によって様々でレベルが上がれば取れるものや特定の技能を取得していないと出て来ないもの、号を得てからでは無いと表示すらされないものも存在している。
「俺、この居合いっていうのに結構憧れてるんですけど」
歩きながら技能のウインドウを開く要は、自分がまだ取得出来ないレベルにある『居合い』という技能を指差して言った。
「綱親さんは、この居合いは使ったことあります?」
「私も最初に目標というか、目指してたのは居合いの技能だったんだけど」
彼女はそう前置きをすると、
「居合いってのは、簡単に言うとカウンター攻撃になるんだよ?」
「カウンター攻撃?」
「居合いの技能を発動している状態で敵に攻撃を受けると、それを回避した上で相手にダメージを与えるって感じかな?だから、技能を発動していても攻撃をされないとこちらも動く事が出来なくなっちゃうから、少し使い勝手が悪いというか、癖があるというか」
言いにくそうに話しをまとめる。
「初心者には難しいって感じですね」
「まあ、慣れれば問題無いとは思うけどね?合戦場でも使ってる人を良く見るし」
綱親の言った聞き慣れない言葉に引っ掛かった要は、
「合戦場ですか?」
「うん、コロシアムって言った方が分かりやすいかな?所謂PVPのフィールドだね」
プレイヤーバーサスプレイヤーの頭文字を取ってPVPと言われるこのゲーム用語は、ゲームに参加しているプレイヤー同士が戦うという一つのゲームモードの事である。
「そういうのもちゃんとあるんですね?」
「合戦場は少ない数だと一対一から出来るし、多ければ百人単位で遊べるから本当の合戦に近い事も出来るよ。もし迷宮終わって時間があるようなら少し顔出してみる?」
そんな嬉しい誘いに、光に早く休むようにと釘を刺されている事も忘れて、
「はい。是非お願いします!」
と、元気に返事をした。
そして、二人の前に再び盗賊が姿を現した。手には刀を持ったその盗賊を前にして、
「弓や銃なんかの遠距離攻撃をしてくる敵には縮地で近付いて一気に仕留めるのが安全で確実なんだけど、こういう近接系の敵を相手にする場合はどうやって戦うのがより安全だと思う?」
ゲームに関する様々な会話で二人の仲は自然に良くなったせいもあるのだろうが、綱親の口調はより教える立場、師匠の口ぶりになっていた。
「近付かないのが一番安全だとは思いますけど、こっちも近接武器ですからね」
そうしてる間にも盗賊は走ってこっちへとやって来る。それを見た綱親が一歩前に足を出しながら、敵の攻撃に備える。
盗賊の振り下ろす刀を受けて弾き、
「技能:棟打」
呟いた瞬間、日本刀の背の部分で相手の手を激しく打ち付けた。それを受けた盗賊は、武器を持ってはいられず、放した刀は甲高い金属音と共に地面へと落ちる。丸腰になった盗賊には反撃する術も無くなり、綱親の見事な剣術によって倒されてしまった。
「なるほど。相手が武器を使えない様にすれば良いんですね」
「うん、これが出来ればより安全により早く敵を討伐出来るからね。でも当然、相手もこうならないように気を付けてるから、狙う時は十分注意が必要だけど」
「でも、流石の腕前でしたね!」
素直に褒められ、やはり照れる綱親は、
「止めてくれ。あまり褒められて無いからどういう風に返事をしたら良いのか分からない」
そう言って、刀を収めた手でおでこを掻いていた。
更に奥へと足を進めながら、
「すいません。色々知らない事ばっかりで」
要が言う。しかし、綱親は首を横に振って、
「ううん、私も誰かにこうやって色々教えたりするのは楽しいから」
そこに再び敵がやって来る。
「今度は俺が行っても良いですか?」
元気に声を上げる要に、綱親は首を縦に振って答えると、彼はそれを見てすぐに盗賊へと走って行く。
「それに、慕って貰えるというのも案外悪くないからね」
17.06.15 誤字修正




