【十一】
穴の開いた壁の反対側に追い詰められている光は、自分に防御と回避、そして命中率のバフを掛けながらボスの攻撃を必死に耐えていた。ここまで誘導して、しばらくの間攻撃に耐えれば良いと考えていた光の予想よりも長い間ボスの攻撃を受ける壁役になっている。
時折、飛んで来る葵の治癒矢にも助けられながらボスに対して攻撃力低下、防御力低下、命中率低下の三つのデバフを懸命に掛け続けるが、簡単には入らない。
葵の治癒矢にもクールタイムは存在している為、徐々に回復が追い付かなくなり、このまま攻撃を受け続けて体力が無くなったらどうなるんだろう?光がそんな事を考えていると、彼の視線の先、ボスの後方から先程見たよりも大きな光が光速でやって来て、耳を劈く爆発音と共に衝撃を周囲に撒き散らした。
眼前に『戦闘終了!』という文字が表示されると、安心したのか光はその場に腰を下ろし、深い溜め息を吐き出した。そんな彼をボス越しに見つめていた要は、
「なんか、さっきより威力が上がった気がするんだけど」
残り半分近くあったボスの体力をたった一撃で削り切った男とは思えない程、あっけらかんとしており、自分の日本刀を一度掲げるとまじまじと凝視してから腰へと戻した。
「お疲れ様でした。技能一覧で突一閃の説明読んでみて下さいよ」
そこにやって来た葵はそう言いながら光に手を差し出す。それに甘えて立ち上がった光は、
「ありがとう」
と、葵に感謝をして、
「なんか今日は、葵にお礼を言ってばっかりだね」
苦笑いを浮かべると、
「光さんの作戦のお陰でボスが倒せたんですから、私からもお礼を言わせてください。ありがとうございました!」
お互いに笑顔を見せて笑い合う。そんな中、ウインドウを開いて技能一覧をを眺める要は、
「え、あの技って助走距離が長ければ長い程威力が上がるの!?最強技じゃん!」
「直線にしか進めないし、狭いフィールドだと並みの威力だけどな?」
「でも、敵が正面にいて広ければ良いんでしょ?」
渋い表情をしながら要が言う。
「でも、良くあんな反則的な方法思い付きましたね?」
葵が言ったのは、狭いフィールドを広く使った方法の事だろう。フィールドとして区切られていた光の壁を壊して広いスペースを作り出す。
「要の刀が壁に刺さったのを見て壊せるかな?って思ったんだけど」
彼はそう言うと更に言葉を続け、
「本当はボスの攻撃を壁に当てさせて二刀流を封じようと考えてたんだけど、どっちの方が二人に伝えやすいかな?って考えてこっちにしてみた。まあ、他にも方法は色々あったんだろうとは思うけどね」
「つまり、俺の活躍が大きいって事?」
嬉しそうな要に、
「うん、要が居なかったら倒せてないよ」
頷いて言葉を作る光は素直に止めを刺した要を褒め称えた。
「それじゃあ、クエストの報告をしに町に戻りますか?」
葵の言葉に不思議そうな顔をする男二人、彼らはここの迷宮にはクエストなんてあっただろうか?という表情で葵の方を見返しているが、
「幽霊の方ですよ?お千代さんのクエストです」
『あー』
という納得の声が見事に重なり洞窟内に反響する。
「ここから町に戻るのはなかなか大変だな」
溜め息と共に光が呟くと、
「洞窟のまだ探索し終わって無いとこも全部見てから戻るからね?」
今、戦闘が終わったばかりだというのにとても元気な要に感心しつつ、ボスが落とした討伐の報酬の箱を手に取ると、
「お宝が残ってるかもしれないしな?」
そう言って、蓋を開けた。
17.06.11 誤字修正




