【六】
「何か困ってる事や聞きたい事が他にあれば」
号を得る方法を詳しく説明して貰っただけでも有難かった二人だが、清綱は更に何か無いかと催促をしてくれた。その言葉に甘えるように、
「どういう武将の号があって、誰が残ってるのかは分からないですよね?」
光が尋ねると、
「それは分からないね?」
と、きっぱり否定するが、
「ただ、関係の深い武将同士はある程度どういう状況になってるのかが分かる機能があるんだよ。長政で言うと、朝倉義景、織田信長辺りなんだけど」
それを聞いて、
『織田信長!!』
と、二人の声が重なった。
「流石に食い付くね?」
笑いながら言葉を返す清綱は、
「でも、残念ながらまだ信長の号を得たプレイヤーは居ないみたいだよ?あ、でも君たちにとっては残念とは言わないか?これから得られるチャンスがある訳だからね」
「清綱さんは無理なんですか?」
葵から質問が飛ぶ。それに対して、
「あ、ごめん。号を所持してても新しい号を得る事は可能なんだけど、どちらか一つを選ばなきゃいけなくなるんだ。私はこの号が気に入ってるから、新しいものは必要無いって意味で言ったんだけど、言い方が悪かったね?」
「いえ、長政さんに対する熱い忠義を感じました」
葵がそう返すと、彼は笑って、
「まあ、仲が良い事には間違いないけどね?」
遠くで田植えをしている長政へと視線を向けた。
「要君はなかなか筋が良いね」
焼き魚を食した事によって得られた速度上昇の効果は未だに続いており、黙々と作業する要の姿を見ながら長政は感心するように言って、自分も田植えを続けていく。意外にも慣れた手付きで素早く苗を植えて行く長政は、要にも負けない速度でどんどんと後ろへ下がり、二人はすぐに向こう岸まで植え終えてしまう。
「このままだと皆の仕事を取ってしまうかな?」
田の半分近くは既に田植えが終了しており、その内の更に半分を二人でやってしまった事になる。
「田吾作さんに勧められて大分植えちゃいましたからね」
自分の作業量を見て苦笑いを浮かべる要に、
「お礼と言ってはあれだけど、何か困ってる事があれば遠慮なく言ってくれ。出来る事であれば協力するよ」
「お礼ですか?」
お礼と言う意味が分からない要は不思議そうに呟くが、
「あの、実は馬が欲しいって話を三人で言ってたんですけど、入手方法が分からなかったんで教えて貰えると嬉しいです」
「このゲームの移動は結構大変だからね。序盤は馬が無いと辛いよね?」
気の毒そうに長政は呟き、
「大きな町に行けば簡単に買えるけど、馬の質によって値段はピンキリだよ」
二人は話をしながら田から上がり、
「じゃあ、安いのもあるって事ですよね?」
「そうだね。あ、もし安い馬を買おうって思ってるならうちに余ってるのを持って行くかい?」
「え!?良いんですか?」
「お礼だから気にしないで」
長政は頷きながら言うが、その意味を未だに理解出来ていない要は、
「お礼って、俺何かしましたっけ?」
と、尋ねた。
「あ、お二人が帰って来ますね?」
田から上がった二人を見ていた葵がそう口にする。
「じゃあ、そろそろお開きになるかな?最後に何か聞きたい事はある?」
「製作について知りたいんですけど、組合ってのはどこにあるんでしょうか?」
光が待ってましたと言わんばかりに口を開いた。
「組合は大きな町に行けば大体あるんだけど、ここから一番近い町だと倉賀野になるかな?街道沿いに向かえば二つ目の町だね?」
「なるほど。二つ目の町ですか」
光は、ウインドウを開いてそれをメモすると、
「色々教えて頂いてありがとうございました」
座ったままではあるが、頭を下げる。それに続いて葵も頭を下げ、
「ゲームを始めていきなり有名な方に会えたのも吃驚でしたけど、とても親切にして頂いて本当にありがとうございました」
お礼を言った。
「親切って言うほどの事はしてないけど、君たちの誰かが号を得る可能性もある訳だからね?他のプレイヤーとは仲良くしておかないと」
少し口角を上げた表情をしているが、笑顔とは言えない微妙な表情に浅井家の頭脳らしさを見た二人であった。




