52◆吸血女王
あるところに、とても我がままで高飛車なお姫様がいたそうな。
若く美しかったお姫様は、周囲がちやほやしたのもあって増長が止まらなかった。
近隣の王子や貴族の子息たちが求婚しても、自分にはもっとふさわしい相手がいるはずだと取り合わない。
そうして月日は流れていき、婚期を逃した彼女は王位を継いだ。
年々潤いを失くしていく肌。深くなっていく皺。たるんでいく肉。
寄る年波に恐怖した彼女は、やがて凶行に至る。
吸血女王バーバラ。
そう、巷でささやかれるほどに――。
薄暗い地下牢には異臭が漂っていた。カビた臭いに、体臭や糞尿の悪臭が混ざり合っている。
いくつかに区切られた鉄格子の部屋には数人ずつ、若い女が囚われていた。
ここから出してと、死にたくないと、叫ぶ声が響いている。
しかし大半の女たちはもはや声を枯らし、牢の片隅でうずくまるか、横たわって震えていた。
その中の一人。
ルッピも膝を抱え、うつらうつらとしていた。昼も夜もないような世界ではあるが、彼女が活動するのはみなが寝静まってから。それまで十分な休息を取る毎日が続いている。
彼女は何の変哲もない町娘で、一週間ほど前に都へ召され、城勤めを命じられた。
ところが、荷物も服もすべて没収され、薄汚いローブを着せられて、すぐさまこの地下牢に押しこめられてしまう。
理由はわかっている。
自分は、吸血女王に血を吸われて殺されるのだ。
あの悪魔の贄となるため、ここに呼ばれたのだ。
けれど彼女は、座して死を待つのを良しとしなかった。
吸血女王の噂を、信じている者は少ない。彼女だってそうだった。我がままで政治には見向きもしない女王に嫉妬し、嫌った誰かが流した根も葉もない噂だと、多くの者が笑い飛ばしていた。
しかし彼女は、万が一の備えをしていたのだ。
鉄製の小さなやすりを2本、編んだ髪の中に隠していた。
しかし、まさか、これを使うことになろうとは。今でも夢であってほしいと願っていた。
けれど、もはや疑いようのない現実だ。
2本のやすりでここを脱出し、生き証人となって世に訴えようと決意する。
吸血女王の噂を信じる数少ない者の中には、王家に名を連ねる者もいる。
その筆頭であるノートリオ公に訴えれば、きっと女王を断罪してくれる。
ルッピは今日も明け方近くまで一心不乱に鉄格子を削っていたため、疲労から頭がぼんやりとしている。
が、もうすぐささやかな食事が支給される時間なので、そこでしっかり栄養をとっておきたかった。
やすりを一本、ローブの下でぎゅっと握りしめる。ちくりとした痛みで意識を呼び戻した。
ガチャン、と鍵の開く音が鳴る。ギギギギッと軋んだ音が続き、周囲が色めき立った。
ただ食事を運んできただけだろうに、元気のある娘たちは我先にと鉄格子から手を伸ばし、ここから出して、家に帰して、と懇願の叫びを上げ続ける。
が、ぴたりと、それらの叫びが止まった。
静寂を訝しみ、ルッピが顔を上げると、彼女もまた息をのんだ。
美しい少女がいた。
同じ薄汚れたローブ姿なのに、艶のある黒髪からは気品があふれている。
歳は15前後だろうか。
まだ少女のあどけなさを残しながらも、薄く笑みをたたえた美貌は、同性でもため息をつくしかないほどだ。
看守の男二人も、どこかためらいがちに彼女の細腕をつかんでいる。
ルッピは思った。
あの悪魔め、ついに貴族の娘にも手を出したのか、と。
すくなくとも自分のような市井の女がかもす雰囲気ではない。
看守の一人が鉄格子の扉を開いた。ルッピのいる牢だ。
横になっていた同室の女が飛び起きて、少女を押し退け脱出を図る。が、鉄の棒で突かれ、ギャッと悲鳴を上げて転げ回った。そのわずかな隙に少女は牢内に突き飛ばされ、すぐさま鉄格子は固く閉ざされる。
看守たちが去っていく。どうやら、まだ食事の時間ではないらしい。
「乱暴ね」
少女はよろめきもせず、そうぼやいた。この異様な世界にあって、ただ一人まるで園庭を散歩しているかのような涼やかな表情だ。
少女は牢の中をぐるりと見回して、ルッピと目が合うと、にっこり微笑んで言った。
「わたし、インヴィディアよ。あなたは?」
「……ルッピ、です」
「そう。いい名前ね。短い間だろうけど、よろしくね、ルッピ。あ、堅苦しい話し方はしないでね? あなたの方が確実にお姉さんだから」
屈託のない笑みに面食らう。だから尋ねた。
「貴女、今自分が置かれている状況がわかってないの?」
「? どういう意味?」
「吸血女王の噂くらい知ってるでしょっ!? 牢に閉じこめられてるのよ? これから貴女も私も、みんなあの悪魔に血を吸われて死ぬのっ!」
ああ、とインヴィディアは納得いったように、それでも笑顔で返す。
「もちろん知っているわ。だってわたし、その話を聞いて来たんだもの」
「…………は?」
「ここには良質の『絶望』がある。それを味わいにきたの。でも……」
意味不明なことを言うインヴィディアは、残念そうに肩をすくめた。
「期待していたのとは違うわね」
「期、待……?」
「そ。絶望ってね、感情の落差が大きいほど美味しいの。これ、わたしの姉妹――もっとも序列はないから、見た目的には『お姉さん』と言っておこうかな? で、その姉が学習したところによるとね、『その気にさせて落とすのがいい』そうよ」
ころころと明るく語っていたインヴィディアはここで、頬に手を添えため息をつく。
「でも、ここにある絶望は、ちょっとね。みんな、じわじわと追い詰められているでしょう? それはそれで悪くはないのだけど……あれ? もしかして呆れているの? 不満を持つなんて、贅沢だったかな?」
彼女の言葉の半分も理解できない。ただ、おぞましくも醜悪な話をしていると直感した。それを、まるで旧知の友に伝えるような気楽さで語っているのだ。
怖気が疲労を呼び覚まし、肩の力が一瞬抜けた。鉄製のやすりが手からこぼれ落ちる。
からんと石の床に落ちたやすりを見て、インヴィディアは小首をかしげた。
「あれ? それって……」
「なんでもないわっ」
慌ててやすりを拾い、ローブの下に隠した。どうやら彼女は、これが何かわかっていない風だと安堵したものの。
奥で横になっていた女が、ケタケタ笑いながら言った。
「そいつ、それで鉄格子を削ってんのさ。夜中にぎいこらうるさいったらないよ」
きっと睨みつけると、女は肩をすくめてごろりと寝返りを打った。
ルッピが脱獄を試みているのを、同じ牢の者は知っている。無駄なあがきと笑いつつも、みな期待しているから邪魔してこないと思っていたのに。
あの女はきっと、自分が女王に呼ばれる番になれば密告すると確信した。保身のために情報を売るつもりだ。
でも、今夜中には鉄格子が一本削りきれる。そうなれば、あの女も力を貸してくれるだろう。
問題は――。
「すごいわっ」
インヴィディアが目をランランに輝かせていた。
「あなた、まだ『希望』を持っているのねっ。生きる希望を。素敵。なんて素敵なの……」
うっとりとする彼女を見て、なぜだか確信した。
この少女は、必ず密告する。
看守が食事を運んでくるそのタイミングで。
保身がどうのという理屈ではない。
きっと彼女は、『そうしたいからする』に違いないのだ。
「お願いっ。看守には言わないで。あともう少しなの。今夜には、みんなを救い出せるの。だから、お願い……」
インヴィディアに縋りついて懇願する。もし拒否されたり、嘘やごまかしのそぶりを見せたら――。
ルッピは鉄製のやすりを強く握った。こんなものでも、首筋に突き刺せば、少女を殺すことができる。
震えながら回答を待っていると、インヴィディアは目を閉じて、何かぶつぶつ言い始めた。
「……ふうん、ダメなの? そう……まあ、仕方ないわね」
独り言が終わると、まっすぐルッピの瞳を見つめ、
「言わないわ」
小さな声で言いきった。
「あなたが脱獄しようとしていることは、誰にも言わないと約束するわ。絶対に」
嘘ではないと思った。信じてよいと感じた。
体中の力が安堵から抜けたところで、重い扉の開く音がした。食事の時間だ。
ガチャガチャと乱暴に食器を運ぶ音がする。
同じくドタバタと無遠慮な足音もした。が、ルッピは不審に思う。いつもは二人なのに、もっと大勢の足音がしたからだ。
食器を持った看守が奥の牢へと歩いていった。その後ろから、鎧姿の男たちがやってくる。
ルッピたちの牢の前に止まった。ごくりと、ルッピが生唾をのむ。
「出ろ」
兵士の一人が告げたのは、インヴィディアだった。
「あら、わたしはさっきここへ来たばかりよ?」
「女王陛下のご指名だ。運が、悪かったな」
兵士はいやらしい目つきで、舐め回すようにインヴィディアに視線を這わせた。
なんだろう?と不穏な空気を感じつつも、ルッピには考えを巡らすだけの余裕がなかった。
怯えた瞳でインヴィディアを見る。
インヴィディアは優しく微笑んで、彼女の耳元でささやいた。
「大丈夫。約束は守るわ」
安堵と、申し訳なさでいっぱいになる。奇妙で不気味な少女だったが、根は優しいに違いない。
そんな彼女を、黙って見送るしかできない自分が情けなかった。
ところが次の瞬間、あり得ない言葉を彼女は耳にした。
「隣の女、お前も外に出ろ」
「…………ぇ?」
呆然とする間に、兵士が鉄格子を開いた。看守のときとは違い、誰も救いを求めて殺到しない。彼らに何か懇願しようものなら、自分も連れていかれるからだ。
「ぇ、ちょ、待って……ねえ、なんで? どうして私もなのっ? いつもは一人ずつじゃない! どうして今日に限って!」
必死に訴えるも、兵士たちは相手にしない。
インヴィディアの細い脚に鼻の下を伸ばしていた。
(まさか……)
今日連れてこられたばかりのインヴィディアが、女王に指名されるのは不自然だ。
品定めするような目つき。涎をすするような笑み。
彼らは女王のところへ彼女を連れて行くのではなく、自分たちが楽しむために、どこかへ連れ去ろうとしているのではないか。
「っ! ぅ、くぅ……」
彼女をどこへ連れて行くつもりなのか。その言葉をすんでで飲みこんだ。
ここで下手なことを言えば、女王のところへ行く前に殺される可能性がある。なら、無駄だとは思うが、女王に『つまみ食いされているぞ』と告げ口したほうがいくらかマシだ。
ルッピはその場でへたり込む。兵士が彼女の腕をつかんで引き上げようとした。
「いやっ! いやだっ! 死にたくないっ。殺さないでっ」
暴れ、必死に泣き叫ぶ。
それは、彼女最後のあがきだった。
へたり込んだときにやすりを床に置き、暴れる中で牢の奥に蹴り飛ばした。自身が注目を浴びることで、誰もやすりの存在には気づいていない。
ルッピは暴れながらじっと見る。
牢の隅で横になっている女が、怯えた瞳で見つめ返した。
(あとは、お願い……)
死が確定した自分に代わり、絶対にこの腐った連中を告発してくれ、と。
「すばらしいわ……。あなた、本当にすばらしい女性ね」
ぴたりとルッピの動きが止まった。
「この期に及んでまだ絶望しないのね。希望を後に託すなんて、あの男にそっくり」
インヴィディアはルッピの耳に顔を近づけ、小さな声で熱っぽく語る。
「わたし、あなたに似た男を知っているの。弱いくせにけっして絶望せず、最後まで諦めなかった忌々しい男。でも、そうね。たぶん、あなたを絶望させる方法は、まだひとつ残っているわ」
「ぁ、ぁぁ……」
「ええ、そうよ。言ってしまえばいいの。あのことを、今、ここで」
いやだ。やめて。それだけは……。声も出せず、ルッピが目で懇願すると、インヴィディアは無垢な子どものような笑みで言った。
「でも、残念。約束だものね。わたし、嘘はつけないのよ。本当に残念。それに――」
続けて、悪戯っぽい笑みに変えると。
「正義の味方が、来てしまったわ」
「ぇ……? 正義の、味方……?」
「そう。だから、わたしとしては不本意だけれど、こう言ってあげるわね」
――おめでとう。あなたは助かったのよ。
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ずいぶんごてごてとしたお城だなあ、とは見上げながらの感想だ。
俺は今、小脇に女の子を抱えて遠くの城までやってきた。
「てか、自分で歩いてくんないかな?」
「やだ……」
俺の趣味全開と誤解されながらも(本当だよ?)着せているゴスロリドレスの女の子は、弱々しくもきっぱり答える。
「嫌なら、置いていけばいい……」
「つってもお前、逃げる気満々じゃないか」
女の子――悪竜の尻尾のひとつ、グラはぶらんぶらん揺れながら黙秘する。こいつら、嘘はつけないみたいなんだよな。
「ま、いっか。とりあえず急がないと」
俺は『勇者の剣』を抜き、城へと突撃した――。
堂々と正面突破して、邪魔立てする兵士さんたちを気絶させまくってやってきたのは大きな部屋。
ばーんと扉を開くと、なんとも悪趣味な場所だった。
総大理石の床の中央に、ぽつんと浴槽が置かれている。その上には天井から大きな鳥かごみたいな檻がつるされていた。
内側にトゲトゲがたくさん伸びている奇妙な檻。
そこに人を入れて揺らせば、とげが刺さって血が滴り、下の浴槽に落ちていく仕組みだ。
若い女の生き血を体中に塗りたくり、若さを取り戻そうとした。
それが吸血女王の正体だ。
いやあ、ゲスイね。悪竜が可愛く見えるよ。
「そなた、何者だっ。妾を誰と心得るっ」
浴槽の側には、白いバスローブをはおった女性がいた。
「知ってるよ。吸血女王バーバラさんでしょ?」
「おのれ……下賤の輩がっ。ええいっ、衛兵は何をしているっ。誰かおらぬのかっ」
おばさん、血相を変えて叫ぶ。
「無駄だよ。ここには誰も来ない。ああ、いや。ノートリオ公の兵士さんたちがもうすぐやってくるかな。今は地下牢へ向かって、あんたの悪行の証拠をつかんでいるはずだ」
ちょっと読み取ってみたところ、すでに制圧は完了している模様。囚われていた女の人たちを保護している最中だ。
って、インヴィディアがいないな。どこ行った? まあいいか。まずはこっちが先だ。
吸血女王バーバラはぶつぶつと愚痴をこぼす。
「まったく、ノートリオ公が来ているのなら、まず妾に挨拶するのが先であろうに。本当に粗野で無礼な男だ。が、あやつも妾の美貌に屈した一人。求婚の際、雑草のごとき花束を妾に踏みつぶされたときの顔は、今でも笑いが止まらぬわ」
こいつは、自分が追い詰められているなんて毛ほどにも思っちゃいないらしい。
まともな精神状態じゃない。
だから凶行を延々と続けていた。それが間違っていたとは知らず。
だって、誰も彼女に教えてやらなかったから。
なら、俺が現実を突きつけてやる。
俺は事前の計画通り、ずびしっと剣先を突き出して、
「いい加減、現実を直視しろっ。ちゃんと鏡を見てみたらどうだっ、このクソババア!」
高笑いが止まる。
呆然とする彼女の姿は、実に痛々しいものだった。
髪は真っ白でぼさぼさ。顔中皺だらけで、目はくぼみ、頬はこけている。
まだ40代半ばなのに、誰がどう見ても人生の終わりが間近の老人だ。
「若い女の生き血に、美容効果なんてあるもんか。むしろ乾いたらパリパリになるし、汚れもついちゃうだろうし、不衛生じゃね?」
俺はとどめとばかりに言い放つ。
「お前さ、若さを取り戻そうとして、逆に老いを加速させてたんだよ。この、マヌケめっ!」
ぽかんと口を開け広げて放心していたバーバラが、震える手に視線を落とした。
「なに、これ……。うそ、うそよ……。こんなしわしわで、ガリガリな指が、妾の手であるはずが……」
「だから現実をよく見てみろ。お前は今まで現実を歪め、理想の自分を重ねていただけだ。今お前が見ている、鶏がらみたいな指が本当のお前なんだよ」
「ぁ、ぁぁ、ああああああっ!!」
バーバラが膝を折った。頭間を抱えて絶叫する中、俺の小脇からは、
「美味……」
そんなつぶやきが生まれた。そして――。
「ふうん。これが、あなたがわたしたちに与えてくれる絶望なのね」
いつの間にか、インヴィディアが俺の横に立っていた。
悪竜の一部である彼女たちは、ただ『絶望』とやらを集めるために活動している。
相手が善人だろうが悪人だろうが関係なく。
それが彼女たちに与えられた唯一の生きる意味なのだ。
彼女たちは止まらない。止められない。
倒しても再生し、また同じことを続けるだろう。
だから俺は、グラを捕らえたあと、インヴィディアに会ってある提案をした。
――絶望集めには俺が協力する。その代わり、相手は選ばせてくれ。
世の中には悪竜も真っ青なゲスがたくさんいるんだよね。
だからそいつらを懲らしめるついでに、そこで生まれる絶望を彼女たちにあげちゃおうという逆転の発想だ。
これで普通に暮らす人たちには被害が出ない、というわけだ。
で、今回の結果によってその提案を受けるか判断する、とインヴィディアは応じていた。
「いいわ。合格よ。あなたの仲間になってあげる」
「マジですかっ。で、グラ、お前は?」
俺が尋ねると、なんかじたばたし始めた。降ろしてやる。さささっとインヴィディアの背に隠れた彼女は、
「インヴィディアがいいなら、ぼくもいい……」
よしっ。これで敵の二人を懐柔したぞ。仲間を特訓中のアケディアと、療養中のアワリチアを除外すれば残りは3人だ。
「でもいいの?」とインヴィディアが尋ねる。
「わたしたちが集めた『絶望』は、悪竜の糧になるのよ? あなたが協力すればするほど、あなたの敵が強大になるのだけど?」
「すでにめちゃくちゃ強い奴がもうほんのちょっと強くなったって、そんな変わんないよ」
たぶんね。俺、基本は楽観思考なので。
「で、他の連中はなんて言ってる?」
彼女たちは離れていても意思疎通ができるそうな。残り3人の判断を伺ったところ。
「ルクスリアとスペルビアは拒否したわ。イラは保留だって。アケディアはわからないわね」
ふむ。となると、次に説得するのは拒否した二人のどちらかだな。そいつらがこっちにつけば、保留中も引きこめるはず。
「ま、誰にするかは後で考えるとして」
遠くから、どたどたと大勢の足音が聞こえた。
女王を捕らえようとする兵士たちがここを目指しているようだ。
「ずらかるぞっ」
正義の味方は、颯爽と去っていくのだった――。