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白い部屋
コタロスタは白く巨大な部屋に来た。無数のベッドがある。天井は高く、天井の少し下に大きな窓がある。窓からは初夏の青い芽の匂いが運ばれてくる。ここには音楽が無い。美しい絵もない。遠い星のかすかなまたたきのような弱い息遣いがある。コタロスタはクリスタルの針を自分の右目に刺し、赤いガラスの糸で繋いだもう一つのクリスタルの針を老人の右目に刺した。赤がコタロスタの中に入る。かつてたくさんの人と会話していた赤。赤色の中で子供や青年、成人と老人の笑い声が残っている。赤は燃えるような情熱。赤は出あう人への愛。老人はもう話すことが出来ない。情熱や愛が赤となり頭の中を満たしている。繋がったことが生きている糧で、繋がりたいと燃えている。
「あなたの存在が尊い」
コタロスタは老人に声をかけた。黄金の夕日がコタロスタに入った。老人に嬉しそうな表情が浮かんだ。