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転生貴族の三男だけど、前世の知識で帝国を買い取ります  作者: ニートは34歳まで
第二章 辺境開拓編

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第三十一話 契約という“鎖”


「……面白ぇな」


 黒牙団の頭目が、ゆっくり口元を歪めた。

 巨大な斧を肩へ乗せたまま、アルノルトを見下ろしている。


「普通の貴族なら、兵を呼ぶだの騎士だの言い出す」


「そっちは?」


「金の話しかしねぇ」


「そっちの方が早いから」


 アルノルトは肩をすくめた。

 実際その通りだ。

 戦えば被害が出る。

 街道も荒れる。

 商人も逃げる。

 誰も得しない。

 なら。


(市場へ組み込む方が早い)


 それが前世で学んだことだった。


「侯爵の坊ちゃん」


 ダンが低い声で聞く。


「マジで組む気か?」


「完全には信用してないよ」


「だろうな」


「だから契約する」


 黒牙団の連中がざわつく。


「契約だぁ?」


「破ったら損する形にする」


 アルノルトは頭目を見る。


「名前は?」


「……ガレス」


「じゃあガレスさん」


 アルノルトは静かに言った。


「今の北部街道、儲かってる?」


 ガレスは少し黙る。

 そして。


「……商人が減ってからは微妙だな」


 正直だった。

 つまり現状。

 黒牙団も苦しい。

 だから通行料を上げる。

 だが上げれば商人がさらに減る。

 完全に悪循環だ。


「共同輸送で物流量増やす」


「街道利用を増やす」


「その代わり共同輸送隊は襲わない」


「そして固定契約料を払う」


 アルノルトは続ける。


「そっちも収入安定」


「こっちも損失減少」


「両方得する」


 ガレスが鼻で笑う。


「信用できると思うか?」


「だから契約」


「紙切れだろ」


「違う」


 アルノルトは即答した。


「“利益”が鎖になる」


 空気が止まった。

 ミレナが少し目を見開く。

 ダンも黙った。


「今までは襲うしかなかった」


「でも契約で定期収入が入るなら?」


「街道荒らす理由が減る」


 前世でも同じだった。

 暴力組織ほど、“安定収入”へ弱い。

 その方が、リスクが低いからだ。


「しかも」


 アルノルトは笑う。


「共同輸送が大きくなるほど、契約料も増やせる」


 ガレスの目が変わった。

 完全に計算を始めている。


(乗ってきたな)


 重要なのは、“奪う”より、“市場へ参加する方が儲かる”と思わせること。

 それができれば、物流は安定する。


「……侯爵の坊ちゃん」


 ガレスが低く言った。


「アンタ、本当に十三歳か?」


「中身は社会人だからね」


「しゃかいじん?」


「こっちの話」


 危ない。

 最近かなり漏れている。


「ただし条件がある」


 ガレスが斧を肩へ乗せ直す。


「俺たちにも利益が見えなきゃ意味がねぇ」


「当然」


「あと、裏切ったら?」


「共同輸送から排除する」


 ガレスが笑った。


「盗賊を排除って、どうやってだ?」


「市場から締め出す」


 アルノルトは平然と言った。


「物流網が広がれば、あんたたち抜きでも回せるようになる」


 空気が少し変わる。

 ガレスの笑みが消えた。


「だから今が選択肢」


「市場へ入るか」


「敵になるか」


 沈黙。

 風だけが街道を抜ける。

 そして。


「……いいだろう」


 ガレスが口元を歪めた。


「試してやる」


 ミレナが息を呑む。

 ベルマンは完全に固まっていた。

 盗賊団と契約。

 普通の貴族ならあり得ない。

 だがアルノルトは静かに頷く。


(まずは物流を回す)


 善悪より先に。

 市場を作る。

 それが今、一番重要だった。

【ユニークスキル《企業経営》が発動】

【《街道安定契約》を締結】

【北部共同輸送の成功率:74% → 89%】

【黒牙団の敵対度が減少】

【新属性:《半合法勢力》を獲得】


(半合法って何だよ……)


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!


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