再会と交換
「どうしたの? いきなり黙りこくって」
「あ、わりぃ。ちょっと考え事してて」
「ふーん。じゃ、行こうか」
「ああ。って、どこ行くんだよ」
「いや、久しぶりに行きたくなったんだよね」
「バッティングセンター」
カキーン!
振り抜いた金属バットがボールに当たり、良い音を響かせる。
「ふー。どうだった?」
「良さそうだね。もう少しやってたら?」
「いや、やめとく。ところで隼、1つ聞きたいことがある」
「なんだい?」
「何でここに俺を呼んだ?」
「普通に遊ぶ為にさ」
「違うだろ」
そう。これは何かおかしい。隼とは子供の、小学生ぐらいの頃には、よく遊びにここに来ていた。が、中学でのあのことがあってからは、ここにあいつから誘われて来たことがなかった。
「うん。そうだね。もうじき彼女も来ることだし、ここでネタばらしといこうか」
「彼女って……?」
嫌な予感がした。それも、恐怖だ。
ここから逃げた方がいいと体は訴えている。現に心臓は早鐘をうち始め、まだ暑くない気候だと言うのに脂汗もかきはじめた。
「彼女は彼女だよ。君も気付いてるでしょ? いい加減逃げるのは止めにしたら?」
「だから彼女って誰だよ!?」
嘘だ、もう俺は気付いている。
ここに誰が来るのかぐらいは。
「永山君!」
(やっぱりな)
呟くとともに俺は俯いた。彼女の顔を見たくなかった。こうなることは、分かっていた。だけど、腑に落ちないところもあった。
何で彼女が来るのか。
どうして隼が彼女をここに呼んだか、だ。
この2つの疑問を簡単に解決する方法はある。
それをする為に、彼女の名前を、もう呼ぶことはないと思っていた言葉を紡ぐ、
「香野美花」
と。
その名前を、言葉を紡いだ瞬間、俺は顔を上げ、彼女の顔を見て驚いた。微笑んでいたのだ。彼女の目には、涙が溜まっていたのにも関わらず。
しかし、彼女は涙を拭うこともせずただ微笑んでくれていた。
その行いが、俺を正気に戻してくれた。
少なくとも俺は、
その微笑みに騙されていたのだから。
「香野、何でこんなことをした? お前がこんなことをする理由が分からん」
「ごめん。騙すつもりじゃなかったの。ただ永山君と会いたかった、それだけじゃダメ?」
香野は俺をまっすぐ見つめてきた。
(それは反則だ)
心の中でそう呟き、俺も香野に倣いまっすぐ見つめ返し、こう言う。
「そのことにとやかくいう気はない。俺が聞きたいのは1つだけだ。」
「人をフッておいて、そのフッた本人に会いに来た理由だ」
そう告げると香野は顔を曇らせた。
「ごめん。本当にそんなつもりじゃなかったの……」
(そんなつもりじゃない? ふざけるな)
この気持ちをぶつけようと口を開いたら、後ろからど突かれた。
「いっつ……!」
誰だよとおもいながら後ろを振り向くと鈴がいた。
「は?」
いや、まじで、は? なんすけど。
「いやぁ、ごめんね? 美花。こいつが鈍感で」
「ううん。今に始まったことじゃないって分かってるから……」
(は?)
「え、どゆこと?」
「ホント鈍い、鈍すぎ」
叩かれた。もと女子バレーボール部のパワーで叩かれた。痛いです。鈴さん。
「クスッ」
香野がわらっ……た? ていうか。
「なぁ香野。なんでうちの高校の制服着てるんだ……?」
「はあ。ようやく気付いてくれた?」
いまいち状況が掴めん。
「私、1年3組。永山君の教室の隣」
「え、1年3組って……。隼と同じ……、あぁ!」
「そ。それで隼君とレイン交換して、永山君呼んで貰ったの」
「どうして……?」
この時にはもう、香野を許すとか許せないとかどうでもよくなっていた。頭が混乱して、処理が追い付かん。
「だから~。最初に言ってたでしょ? そんなことも忘れちゃうの? はぁ、これだから鈍感は」
「いや、鈍感は違うだろ。あと、お前よりは記憶力あるわ」
「う~ん?」
「すいません」
「よし。で、美花。他にもあるんでしょ?伝えたいこと」
「うん。あのさ、永山君。せっかく同じ学校に入ったんだからさ」
「レイン、交換しよ?」
後半、隼消えてますが、彼は大変楽しそうにしてます。
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