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プロローグ
ねぇ、小説の中には不自由なんてないよね。
「はぁ……」
黒田葛美は、鏡越しに自分の口元を見つめ、重いため息を落とす。
鏡に映った口元は、鼻の下から顎まで、暗く影がかかったように、痣で覆われていた。
ねぇ、愛ってなんだろ。
その答えを知りたいから、小説の中に愛を与える。そして受け取る。
吐く息を全てため息に変えながら、机に向かった。
「——私の能力があれば……。いつか私を愛してくれる人が創れるかなぁ……」
万年筆を握り、原稿用紙に筆先を走らせる。
そして最低限の設定を書いて、万年筆を置いた。
「あなた達が本当に強い欲望を持ったときだけ、それを叶えられるように、私は干渉するよ」
——さぁ、愛する機会を与えよう。
差し出されたその命は、一滴も残らぬよう、費やされるためにある。
そして原稿用紙に、ひとりでに文字が現れ、物語が紡がれていく。




