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週末勇者とひも付き魔王様 ~前世で殺し合った相手と世界を救うことになった件~  作者: 浦賀やまみち
幕間

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第17話 週末はゲームがしたい




「あいつら、何なんだ!」



 名香をお姫様だっこで抱えたまま、空を翔ぶ。

 背後の城塞都市が、小さく、急速に遠ざかっていく。



「えっ!? 勇者様たちだよ。

 最初のとき、言ったでしょ? 集団転移は厄介だってさ」

「……言ってたな」

「まあ、まだマシなほうだね」

「あれでか?」



 この世界へ召喚されたとき、周囲には男女の学生が三十人以上いた。

 誰もが、状況を飲み込めないまま立ち尽くしていた。



「いわゆる、クラス転移。

 スクールカーストもそのまま持ち込まれるからさ。

 上下関係ができていて、ある程度はまとまりやすいんだよ」


「先生はクズだったみたいだけど、この国の王様はまともだしね」



 大人は一人だけだった。

 三十代半ばの女性は、国王が心苦しそうに事情を説明すると、ヒステリーを起こし、そのまま逃げ出した。



「……と言っても、本番はしばらく経ってからかな。

 中学生っぽいから、与えられた『チート』次第で、簡単に歪む子も出てくる」

「まさに、厨二病か」

「あはは! 本当にそれ!」



 頼るべき大人がいなくなり、学生たちは一気に混乱する。

 その矛先はすぐに、同じように召喚された俺たちへ向いた。


 日本人の美徳は和を尊ぶことだが、悪く言ったら同調圧力が強い。


 同じ日本人で、年齢も近い。

 俺と名香だけ制服が違っていた。


 行き場を失った感情が、異物へと向けられたのだろう。



「まっ、最後の最後で出張ればいいんだよ。

 それに、勇者はいっぱいいるんだから、誰かがこの世界の魔王を倒せば、私たちもお役御免だしさ」

「……長丁場になりそうだな」

「そうだね。五年は覚悟しよっか」

「くそっ! なぜ、ゲームは金曜の発売が多いんだ!」



 ヤンキーに襟首を掴まれ、それを吹き飛ばしたのち、今に至る。




 ******




「おい、大丈夫なのか! あれ!」

「ついてないよね。二回連続だなんて」



 名香をお姫様だっこで抱えたまま、空を翔ぶ。

 背後の城塞都市が、小さく、急速に遠ざかっていく。



「しかも、今度は年齢もバラバラなら、人種もバラバラ」


「間違いなく、最悪の展開になるね」


「だって、根本の価値観が違うから」



 この世界へ召喚されたとき、周囲には男女が二十人以上いた。

 誰もが、状況を飲み込めないまま立ち尽くしていた。



「多分、一年もしたら革命が起こるんじゃないかな?」

「はぁ? 人類が存亡の危機に瀕しているんだぞ? そんな余裕ないだろ?」



 彼らは、同じ言語で会話していた。

 人種がバラバラにも関わらずだ。


 語学が堪能な者を選んだとも思えない。

 異世界の者と会話が通じることを、当たり前のように受け入れていた。


 だが、妙な話だ。



「だからだよ。

 追い詰められているから、人は耳障りの良い言葉に惑わされるものでしょ?」


「民主化の波がきたら、笑えるよ?」


「こういうときだからこそ、即効が効く君主制のほうがいいでしょ?

 だけど、民主化でぐだぐたしはじめるから、どんどん劣勢になってゆくの」



 国王が事情を説明すると、あちこちで口論が始まった。


 この世界の住人に対してだけじゃない。

 召喚された側同士でも揉め始めた。


 相手にしていられない。

 そう思って名香を抱き寄せた瞬間、白人が罵声を飛ばしてきた。



「たちが悪いのがさー。

 そういうことをやる人ほど、強い『チート』を引きがちってところだね。精神系とか」



 唾まで飛んできた。

 そいつを吹き飛ばしたのち、今に至る。



「なあ、俺たちで、さくっとやればいいんじゃないか?」



 前の異世界召喚のときから、頭の片隅にあった疑問が、つい口をついた。

 名香は大きく息を吐いた。



「……そう思うよね。

 でも、駄目なんだなー」


「人知れず、この世界の魔王を倒す。

 そうすると別の場所で、また新たな魔王が立つんだよ」


「だから、お膳立てをする必要があるの。

 人類は反撃を開始した。もうすぐ、魔王を倒せるかもって空気をね」


「まあ、気長に待とうよ。今度は、十年くらい」



 クソゲー過ぎる。

 軽く目眩がして、飛行が一瞬だけ乱れた。


 結局、前回の異世界召喚は帰るまで、六年と二か月がかかった。



「くそっ! もうすぐ、エンディングだったんだぞ!」



 それが、今度は十年コースだと。


 俺は、こんな世界より、ファイナルなファンタジーの世界を救いたいんだ。

 絶対に帰る頃には、ストーリーを忘れている。



「もーー……。私とゲーム、どっちが大事なのー」

「ゲームに決まってるだろ!」

「ていっ!」

「ぐえっ!?」



 唇を尖らせた名香に思いの丈をぶつけた瞬間、脳天にチョップが落ちた。




 ******




「いきなり拘束しようとしてたな」

「今度は、王様がクズだったね」



 名香をお姫様だっこで抱えたまま、空を翔ぶ。

 背後の城塞都市が、小さく、急速に遠ざかっていく。



「お前……。苦労してきたんだな」

「やっと分かってくれた?」



 今回の異世界召喚は、俺たち二人だけだった。

 召喚直後、拘束魔法が仕掛けられたが、この俺に効くはずもない。



「多分これからも、どんどん勇者を召喚するよ。

 ……で、それを私たちにぶつけてくる」



 そして、おそらくは洗脳。

 精神系魔法を放とうとしていたやつに、俺は火球魔法を叩き込んだ。


 城の一部が崩れたが、防御魔法の気配があった。

 あの国王は、まだ生きているだろう。



「だから、田舎に引きこもるしかないね」

「……生活費は、どうするんだ?」

「んーー……。自給自足?」



 溜息を吐かずにはいられなかった。



「魔王の俺が、農夫の真似事か……。」

「あれ? ゲームはいいの?」



 前回の異世界召喚は帰るまで、十三年と七か月がかかった。


 俺は、馬鹿じゃない。

 四度目ともなれば、さすがに学習はする。



「こうなると分かっていたから、まだ開けていない」

「ああ、それで……。」

「何が?」

「今日のデートの最中、ずっと不機嫌だったでしょ?」



 発売日が金曜だからといって、即開封するのは駄目だ。


 金曜日に買うのはいい。

 開封は、異世界から帰った土曜の夜。そう決めている。



「くそっ! このシステムを作った神は、絶対にぶっ殺してやる!」

「いいね! そのときは私も協力するよ!」



 だが、神への恨みは別だ。

 俺たちは神に対する文句を、小一時間ほど言い合った。





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