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もはや都市伝説と化した最恐探索者、超有名アイドル配信者を救ってバズり散らかしてしまう  作者: コータ


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やりすぎちゃった

 まるで地中から這い出るように、それは姿を現した。


「希空さん……遅れちゃって……ごめんなさい。人が多くて、ここまで来るの、難しくて」

「……今度は助けられちゃったか。アンタに大きな借りが……え、え? 幽奈! それ、どうやってんの!?」


 鎧武者はうつ伏せの状態から、どうにか上半身を幽奈へと向けた。


 突如現れた少女は、少しずつ体が浮かび上がるように現れてくる。ローファーが見えた時には、悪霊武士の足首は軽く持ち上げられているような姿勢になっていた。


「曲者めが!」


 強引に体を起き上がらせた武人は、右手に持った日本刀で少女に切りかかった。


「アノ」


 何か言いたげな素振りを見せつつも、幽奈はその一太刀には関心を示していないようだ。さらにあろうことか、左手で刃を掴んでしまう。


「な、なんと!?」


 鎧武者はまさかの事態に驚愕していた。片足立ちの状態で、うまく身動きが取れない。


「シャムちゃん、どこ?」

「こ……答えるわけが……あぁあああああ!?」


 直後、かつての武人は芯から心が凍てつくほどの恐怖を目にする。赤く光った目と顔が、彼の瞳には歪な怪物にしか映らなかったのだ。


 それだけではない。猛烈な勢いで、魔力が吸い取られている。自らの存在の源が、力が奪い取られていく。


 さらには日本刀が徐々に細く萎れていく光景が、彼の脳裏を焼き焦がした。


「う、うあああああ! や、やめろ! やめんかぁああ!」


 自慢の刀はまるでネギのようになり、自身の体も細く弱っていった。立っていられず、とうとう倒れてしまう。幽奈は足を離し、じっと相手を見下ろしている。


「シャムちゃん、どこ?」

「い、言う! 言うからこれ以上近づくな。は、はあああ。あ、あの女は、女は」


(味方なのに、怖すぎなんだけど)


 希空はドン引きしながらも立ち上がり、鎧武者の発言を待っていた。あの勇猛な悪霊がこうも恐怖に支配されるなど、彼を召喚した男は想像もしていない。


「そ、そこの——」

「……え。希空さん」


 武者が言いかけたその時だった。幽奈の瞳には、傷ついた希空の姿が映っている。腕から血を流していたが、自らの服を破って止血をしていた。


 そして万が一の時を考えて用意していた、回復液の入った瓶に口をつけていたが、幽奈は瓶よりも怪我を見て動揺していた。


「あああ! 希空さん、大丈夫ですか!」

「え……ああ。これはへい——」

「ヒアアアアーーーーー!?」


 突如、悪霊武者が甲高い悲鳴をあげ、体をバタつかせる。ハッとした幽奈だったが、もはや手遅れであった。


 彼女が動揺して無自覚にドレインを強めた結果、武者はあっという間に全ての魔力を吸い取られ、完全に無と化してしまった。


「ちょ、ちょっと! 消えちゃったよ!」

「あああ。や、やってしまいました。ドレインが、ドレインが」

「…………マジ? こんなに吸い尽くすなんて、初めて見たんだけど。ああ、ちょっと待って! 魔力感知器あるから、これでアイツの魔力を辿っていこ」


 幽奈は自らの失敗でオロオロとし、希空もまた次から次へと変化する状況に戸惑っていた。


 しかしそれでも目的を達成するため、なんとか彼女は懐から魔力感知器を取り出したのだが。


「は? 何これ、壊れてる」

「えええ」

「嘘!? なんで?」


 魔力感知器は見た目よりも遥かに頑丈で、かつ測定できる魔力量も桁外れだ。ダンジョンで多少乱暴に扱っても、壊れることは絶対にないと言われている。


 だが、画面の表示は滅茶苦茶になっていた。マップ全体が真っ赤に染まり、もはや何も測定できなくなっている。


「……私のせい。どうすれば」

「幽奈が悪いんじゃないよ。多分あたしが激しくやり合ったからさ。ほんと、助かった」


 落ち込む幽奈を励ます希空だったが、この後どう動くべきなのかは分からない。


 手がかりが潰えた。そう思った矢先だった。


「え、いるの?」


 ふと、幽奈が後ろを振り向いて、何かに声をかけた。


「今日は外で話せるんだ。……え? 聞いてたの。うん……うん」

「は? ちょっと、幽奈?」

「あ、私の友達です」

「友達?」


 希空は首を傾げ、普段は無口な少女が会話のように喋り続ける姿を見つめる。


(一体何の話? ホントに変わってるなぁ)


 訳がわからないとばかりに、まるで一人芝居のような姿を見守っていたのだが。


「……は!?」


 徐々に変化する光景に、勝気な金髪少女は唖然としてしまう。幽奈の背後にあった影が、明らかに黒く大きくなり、ゆらゆらと不気味に揺れている。


 おそらく幽奈は、この影と会話をしているのだろうか。目線はずっと上にある。そこには影というより空があるだけだ。


 しかし、彼女にしか見えない何かが、そこにあるのかもしれない。


 希空はゾッとした。ゆらめく影の一部から、悍ましい何かを感じずにはいられなかったから。


「分かった。ありがとう。じゃあ私、急ぐね」


 会話が終わったらしい。幽奈の体から黒と赤い魔力が吹き出し、瞳が血のように光る。


「ゆ、幽奈。今のって何?」

「友達が教えてくれました。あそこの古い病院に、シャムちゃん達がいます」


 白く細い指先が、遥か遠くに微かに見える廃病院に向いている。少しして、カタカタ、という音とともに、彼女の配信用人形がやってきた。


「すみません。急がないといけないので、先に行ってますね」

「え、え!? ちょ、」


 幽奈は優しく人形を抱きしめると、少しだけ上体を前傾にさせた後、勢いよく跳躍した。


「は、はああああ!?」


 希空には到底信じられない光景だった。軽いジャンプをしたその姿が、一瞬にしてミサイルのように飛んでゆく。


「嘘でしょ。なんて化け物なの……ああ! こうしちゃいられない!」


 頭の中が混乱に包まれながらも、希空もまた病院へと向かう。


 シャム達を嵌めた男との戦いは、すぐそこまで迫っていた。

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