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ハインソード・サーガ  作者: 威風
第3章 ~王都炎上、決意のハインリヒ編~
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019 戦闘準備 海の離島サンクト防衛戦


「――大至急だ。生徒は勿論、サンクトの住民も併せて屋内へと退避させる。リストにあった建造物を使ってくれ。あぁ、魔物への対応は当然、教職員が対応する。兵科と魔術科の教師にも連絡を」


「しかし、ロア先生……本当に魔物なんて来るのでしょうか?」


砂浜で王立学院の教師陣へと指揮を飛ばすのは、ロア=ハーレスという白い髪の少女であった。


例え海でも白衣を脱がない彼女は、己に疑問を投げた老齢な教師へと向き直る。


「……教師であるならば、生徒を信じるのは当然では?」


「で、ですが!? 事が事ですし……!」


「ハインリヒ=セイファート。そしてクルス=オーグメントという生徒は悪戯にこんな事を言う生徒ではありませんよ。それに、信じずに死人を出すよりも、信じて馬鹿を見る方がよっぽど良い……」


「……」


「時間が無いのです。――急ぎ、ご決断を」



ロア教師の言葉に納得した訳ではないだろう。


此処まで言ったのだ。


何かあればロアに責任を取って貰おうという打算の元、教師連中は彼女の言葉に頷いた。



「……すまない」



顔を俯かせながら、クルスは彼女に言葉を投げる。


「君は、謝る様な事をしたかい?」

「だが……迷惑は掛けた」

「迷惑というのならば、やってくる魔物の方が迷惑さ」

「……何故、俺の言葉を信じてくれたんだ?」

「……」


しょげた様子のクルスを見詰めながら、ロアは「ふう」と息を吐き、俯いた顔を手で持ち上げてやる。


「自覚が無いのかい? 君みたいな馬鹿正直な男、そうはいないさ」

「――ッ!」

「それに、あの子……ハインリヒが言うのならそうなんだろう」


湯気が昇りそうな程に顔を赤くするクルスを見詰めながら、ロアは言葉を続けた。



「彼は間違いない――スペシャルさ」







「お。此処なら良いか」


海の見える高台へと陣取った俺は、手近にいた生徒に持って来させた椅子に腰掛け、水平線を睨む。


「あ、あのう……僕達、どうすれば?」

「魔物が来るって本当なの、ハインリヒ君……?」

「正直、俺達信じられないんだけど……」


思い思いに口を出す生徒達。

大した説明もないまま連れて来たからな。仕方ない。


「とりあえず、俺の近くに入れば安心だから、余り深く考えるな」


『……』


言ってみるが、納得は出来ない様子。


「先生、僕はどうします?」


「レイドか」


レイド=レヴァノフ。

我神団の中でも広域戦を得意としたコイツと途中で合流出来たのは僥倖だったな。


いつも通り遊撃に回してやりたい所だが……今回は別だ。



「お前には俺の――いや、この場にいる俺達の護衛を頼む」


「――は? せ、先生の護衛……? ……必要、ありますか?」


思わずといった風に疑問を零すレイド。

本来なら必要ないんだけど、今回はちょっとな。


「俺は此処を拠点として島全体の人間を魔術で防衛しようと思う。効果範囲が伸びるから必然的に演算処理も複雑になる。身体の方はガラ空きになると思って良い」


「島全体……20平方キロメイル……」


「……任せて良いな?」


俺の問いにレイドはぶるりと身体を震わせ、


「――はい」


と、良い返事をしてくれる。


「ねぇハイン、私はどうしたら良い?」


キッチェか……そうだな。


「お前は他の奴と一緒に、近くの店に行ってエーテル液を貰ってこい。大量にな。緊急事態だから、金は後でも大丈夫だろう。ゴネられたら俺の名前を出せ」


把握してるだけでも、魔物の数が多過ぎる……。


自前のマナだけじゃ、どう考えても追い付かない。

回復手段を用意しとくのは急務だった。


「ん! 分かった!! 皆行こう!!」


明るく言い放つキッチェに、不満顔の生徒達。


「え……お、俺達も?」

「ていうか、この子誰?」

「ハインリヒ! 俺達はまだ納得した訳じゃ――ッ!?」


言いかけた生徒が、空に浮かぶ大量の黒点を見詰めながら、パクパクと口を開いて閉じた。



どうやら、視認出来る程度には近付いて来たようだな。



「納得、したか?」


『……!!』


こくこくと、その場の生徒達全員が力強く何度も頷く。


そりゃ結構。良い子達だ。


そうこうしている内に、他の我神団の面子のマナも特定できた。

一方通行だが、念話を飛ばして……っと。



「さて。――いっちょやりますか」



肩を回しながら、俺は魔術式を展開するのだった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公が自分に正直で根が良いのが好印象。 全体的に物語の完成度が高い。 [一言] ランキング入りしたら直ぐに日間上位にいきそう。
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