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ハインソード・サーガ  作者: 威風
第3章 ~王都炎上、決意のハインリヒ編~
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014 成績発表~接触、教団七聖剣~

前話の誤字報告ありがとうございました!

本当、アホみたいな誤字で申し訳ない( ;∀;)

いつもめちゃめちゃ助かってます(*ノωノ)


※今週分です。




「――で、何やってんだよ、お前ら?」

「ふみぃ!」


後ろからキッチェの頬っぺたを延ばしながら、立てられたパラソルの下で寛ぐ面々に向かって、俺は言ってやる。


「そりゃ、様子を見に来たに決まってんだろう? 思ったより馴染んでんじゃねぇか。……少し安心したぜ?」


「……安心?」


「隊長は普通とは違いますからね。そういった意味ですよ」


ルーシーの言葉を補足する様に、グエンが横から口を出す。


「学院生活はどうですか、先生? あまりの低レベルさに嫌気が差していませんか?」


「いや、これが案外楽しくてな……」


「そ、そんな……ッ!」


俺の言葉に、がっくりと項垂れるレイド。


例え嫌気が差していたとしても、これも仕事だし、そう簡単にポンペイには戻れないと思うけどなぁ……。


「……へッ、化物みてぇに強えぇ団長さんも、中身は年相応なガキだったって訳だ」


「そういうお前は、何だってそんなにくたびれてるんだ?」


団扇をパタパタと仰ぎながら、シートの上に横たわるファング。

コイツ、一応火属性の獣人だったよな?

何でこんなに暑さに弱いんだよ。


そういった疑問を口にする俺へ、ファングの奴は汗だくのままかったるそうに返答する。


「自分で出した炎は熱くねぇんだよ……」


つまり元々は普通に暑がりだったと。

まぁそういう事らしい。


「ふぇえ、ふぁ、ふぁいん……」

「んん?」


頬っぺたを引っ張ていたキッチェから、何やら抗議の様な声が聞こえたきたので、俺は視線を下に向ける。


「……」


そこには、たわわに実った胸があった。


いつの間にこんなに大きく……。


思わずごくりと生唾を飲み込んでしまった辺りで、キッチェの視線に気付いた俺は、奴の頬から手を離してしまう。


「ううう、酷いよ~ハイン~ッ!」

「う、うるさい! 恥を搔かされた罰だ!!」


言いながら俺は、胸を見ていた事に気付かれぬ様、そっぽを向く。


「イチャイチャしちゃってまぁ……」


背後から投げられる、ルーシーの呆れた声。

くそ、うるさい外野だ。


「ま、丁度良いや……団長」

「うん? ――っと!」


ルーシーから、投げられた硝子瓶を片手で受け取る俺。

これは……日焼け止めの油か?


「そうして突っ立てるのも暇だろう? ちょっと塗ってくれよ」

「は!? ……俺がか!?」


驚愕する俺に構わず、シートの上へゴロリと寝転がるルーシー。


「他に誰がいるんだよ? ファングの奴は雑そうだし、グエンには断られた。レイドは……何か頼みたくない。ほら、残る面子でいったらお前しかいねぇだろう?」


「――キッチェがおるだろうがッ!!」


「?」


俺のツッコミに首を傾げるキッチェ。

大分正論を吐いたつもりではあるのだが、ルーシーの奴は構いやしない。


「いいからいいから……はーやーく!」

「ぐっ、解せん――何だこの扱いッ!?」


頑固なままに自分の都合を押し通そうとするルーシーに、俺は渋々近付いていく。


「……」


しかし、なんつーか……改めてみると大人だよなぁ。


白い肌に、艶めかしい曲線を描く背中を見詰めながら、俺は思わず目が釘付けになってしまう。


硝子瓶を傾け、中身の油を手に出していく。

意外と、ひんやりとしているものだ。


「んっ……」

「……」


腰の部分に油を塗ると、ルーシーは籠った声を上げた。

肌に触れる油の冷気が擽ったいのだろう。

臀部には……触れない方が良いのだろうか?


腰から背中へと手を滑らせて油を塗りながら、気持ちの良い声を上げるルーシーに、何故か内心ドキドキする俺。


「あっ」

「……っ」


やば! 手を滑らせすぎた。

脇の下から横乳へと指が触れてしまい、緊張する俺。


……何だ?

……何も言わない?


……これは、別に触っても大丈夫ってことか?


下手な遠慮はいらぬ邪推を生む事になる……ここは何食わぬ顔で、そのまま油を塗った方が良いのだろうか?


ルーシーの顔は伏せられ、枕にした腕に隠されている。

これでは、表情を窺う事も出来やしない。


「ぐぅ……ッ!」


行くべきか、行かざるべきか。

真剣に悩みつつ、意を決してその手を胸元へと延ばした瞬間――



「何をやっているのかしら……貴方?」

「ハインリヒ……ッ」



顔を引き攣らせて此方を睨む――アルマナとクロードがそこに立っていた。



「……」



何だなんだと近寄ってくる見知った同級生と、面白そうな臭いを嗅ぎ付け、此方へと見物を決め込む我神団の面々。


「?」


キッチェだけは――何やら何も分かってない様子。

コイツは、そのままでいてくれ。


「ハインリヒ……彼等は? それに、その女性は?」

「クロード、コイツらはだな――」


内心のパニックをおくびにも出さぬよう、努めて冷静に状況説明を口にしようとる俺。


「――我神団。ハインリヒの仲間の傭兵団よ」


その説明を、俺よりも先にアルマナが口にする。


「傭兵……?」

「そう、皆で遊びに来たのね……へぇ?」

「……アルマナ?」


訝しむクロードとは別に、アルマナの奴は何処か様子がおかしい。

というか、もしかしなくても――怒ってる?


「――もう、いい」

「あ! おい!?」


踵を返し、その場から去っていくアルマナ。

制止する声も、今の彼女には効きやしない。


「良いのか、ハインリヒ……?」

「……」


気遣う様な声は、クロードからだ。


俺はそれに意外性と少しばかりの嬉しさを抱きながら、そんな自分に苛立ちを覚えるのだった。







夜――我神団の面子と別れた俺は、他の生徒達と共に宿泊施設へと戻っていた。


ちなみに一部の貴族以外の生徒達は、皆三人部屋であったりする。

俺と同室なのは、ルディンとクルスだ。


部屋に帰ってくるなり、暑苦しいクルスの筋トレ場面に出くわし、げんなりとする俺。


「日課だからな」


というのは、クルスの言だ。


そうこうしている内にルディンが部屋へと戻ってくる。

そろそろ飯の時間だしな。

三人で食堂へと出発するかと決めに掛かった時、


「二人共、成績表!! 中間発表が張り出されてる!!」


ルディンの奴が、慌てた口でそんな事を言ってきた。







――何も、学院外の施設で張り出さなくとも良いのに……。


生徒によっては吊し上げじゃないか、コレ。


施設のロビーへと向かうと、そこには大量の学生達と、ソレを見に集まった観光客の姿があった。


王立学院の生徒というのは、外では有力貴族の子供だったりするのが大半だ。


そんな有名人達がどの程度の学力を治めているのか、知りたがっている庶民も多いという事だろう。


完全に娯楽だ、コレ。


……まぁ、別にいいけどさ。


そこに張り出されるのは、一年、二年、三年と。全ての学年を統合した総合実力順位である。


剣術・体術・魔術を総合して評価した戦闘術の点数。

学術・軍術・魔術を総合して評価した知学術の点数。

それらを足した総合点でもって生徒達は評価され、順位付けされる。


……王族にとっては、高ければ高い程次の王位が決まると言われている。


発表は下の順位から順に、梯子に乗った教師達が書き加えていくようだ。

今は――60位ぐらいか。


まだ知り合いの名前は一人もいない。


が、そろそろ――



「あ、32位……」

「……ふん」

「まぁ、このくらいかな?」

「チッ、鍛錬が足りなかったか……ッ!」


32位・ユーリア=マイスティア。

28位・カルナ=サヴァン。

23位・ルディン=シュトラウス。

15位・クルス=オーグメント。


次々と発表されていく、同級生の名前。


「ぬうう……ッ!!」


12位・ガルシア=ディ=リアネス。


ガルシアの奴は12位か……。

キツイな。

せめて一桁圏内には入っておきたかっただろう。


残るはアルマナとクロードとの一騎打ちか……。


「――ッ!」


9位・アルマナ=ディ=リアネス。


先に名を発表されたのは、アルマナの方だった。

今、アイツはどんな思いをしているだろう?

此処からでは後ろ姿しか見えない。

握られた拳は堅く。

その背には、様々な感情が綯交ぜにされているように思えた。


「勝ったか……」


呟きは、クロードのものだった。

気付けば隣にいた。

上を見ていたから気付かなかったぞ。


「え……」


安堵したその声が、今度は戸惑いの感情に変化する。


8位・クロード=ディ=リアネス。



『――ッ!?』



発表されたその名に、周囲がざわつく。


「8位って――まさか、王子が!?」

「早すぎる……」

「じゃ、じゃあ上位は誰なんだよ!?」


どよめく周囲とは別に、その結果が当然であるかのように、此方を見詰める集団がいた。


「――フッ」

「!」


クロードを、アルマナを、ガルシアを。

金章組の俺達を、そいつらは見下すような視線を投げていた。


「あの白いマント――教団組!」

「……ッ!」


アイツらが、そうか……!

そして、その中でも帯剣を許された六人……一人少ないが……成程、奴等がそうか!


――教団七聖剣。



7位・アーサー=フィレモント。


「ぎええええ!! 俺がドべかよ!!」


汚い声を発しながら、品が無さそうな不潔な金髪の男が叫ぶ。腰に差した聖剣を見るに、アイツも七聖剣の一人なのだろう。



6位・ガフ=コフィン。


「にゃはははは!! アーサーに勝ったぜぃッ!!」


灰色のスカーフを首に巻いた、目付きの悪い小さな少年が笑いながら喜ぶ。アレも一応同学年なのか? パっと見は俺より年下にも見えるが……?



5位・ゲインズ=ベパルス。


「美しい……」


手鏡を手に、一直線に切り揃えられた前髪を弄りながら呟く、長身痩躯の青年。何だあのナルシスト? 順位なんて興味無さそうだな。



4位・マチュア=キュベレイ。


「4位か……ま、こーんなもんよね♪」


桃色の髪をした少女がぺろりと舌を出しながら、そう呟く。周囲を見下している様に見えるのは俺だけか? ……何だか、腹黒そうな女だ。



「! 三位……そうか、アイツがそうか……」


呟きながら、俺は七聖剣の中の髪を逆立てた男へと視線をやる。



3位・ディンハルト=シーザー。


「やっぱ、キルツには負けたか……しゃあねぇなぁ……」


緑色の髪を上に逆立てた、負けん気の強そうな青年が、やれやれと言った体で隣に立つ眼鏡の生徒へと話し掛ける。


「それでも流石だ、ディンハルト。七聖剣の中でも、やはり君の優秀さは抜きん出ているな?」


「へッ、俺に勝った奴に褒められてもな……」


ぽりぽりと頬を掻きながら、自嘲した笑みを浮かべるディンハルト。


「キルツ……そして、ディンハルト……」

「……おや?」


ガルシアの呟きが聞こえたのだろう。七聖剣の面々は金章組へと向き直る。


「へへ! 現実見せちゃったかよ、王子様ァ!?」

「おい、やめ! ……あんま煽るなや」

「あら。意外にお利口なのね、ガフ? お友達でもいたぁ?」

「チッ、そんなんじゃねぇわ!」

「ふ~ん♪」

「嘘は、美しくない……美しくないは――悪だ」

「まーまー! 良いじゃねぇか、皆!」


思い思いに喋る七聖剣の面子を、ディンハルトが大きく手を振って仕切り出す。



――王国組へと、目配せをしながら。



「――所詮、王国組なんてこんなモンだ。俺達が相手するまでもねぇ。あんまり言うのも可哀想だし、止めてやろうぜ?」



『――ッ!!』



それは、分かり易い挑発であった。


クスクスと笑う七聖剣の面子。

ガフは苦い表情を浮かべ、キルツは呆れた溜息を吐いた。



「――舐めてくれたわね? 七聖剣第四位【烈火】のディンハルト」

「おや? 俺の事を知ってたかい――王女様?」


金章組を代表するかの様に、先頭に立つアルマナへと、ディンハルトは飄々とした体を崩さずに対応する。


「もしかして……俺のファンだったり?」


「――ッ!」


知覚の出来ぬ素早さでもって、アルマナへと距離を縮めるディンハルト。

キリッとした目が驚愕で見開かれた頃には、ディンハルトの手はアルマナの顎へと差し延ばされ――


「――ッ」


バシン! と、その横顔に靴底がぶち当たる。


……まぁ、言うまでもなく俺の仕業だ。


「……おいおい【輝きの顔】のディンハルトの顔面に、靴を放る馬鹿がいるとはなぁ?」


「俺としては顔面を磨いてやったつもりなんだが……気に入らなかったか? ほら、お前の顔――汗でテカテカしてるだろう?」


「……」


途端に、無言になるディンハルト。


「やめろ、ディン。……挑発に乗るな」


「キルツ……」


「優劣を競うというのならば、もう既に結果は出ている。上位を独占する我ら教団組の優秀さは連中も良く分かった筈だ」


言いながら、キルツは金章組を見回す。



「同時に、自分達の低レベルさもな……」



『!』



言われた生徒達は、皆一堂に視線を下に向けた。

中間とは言え、こうして結果が出てしまっているのだ。


ルディンも。

クルスも。

ユーリアも。

カルナも。

ガルシアも。

クロードも。


そして――アルマナも。


誰もが、キルツの言葉に反論できない。

唇を噛み締め、下を向き、手を震わすのみだ。



「――どうでも良いが」


「ん?」


「まずお前らは――ちゃんと順位を見た方が良いと思うぞ?」


『!?』



張り出された成績順位。

その一番上へと、視線が集中する。




2位・キルツ=レヴァノフ。


「……馬鹿な」


呟きは、彼だけのものではない。


教団組七聖剣、その全員が驚愕する。

王国の金章組、その全員が唖然とする。


観光客が、下級生を含めた生徒達が、全員が――俺を見る。






1位・ハインリヒ=セイファート。



「――まぁ、当然よね」




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