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ハインソード・サーガ  作者: 威風
第2章 ~傭兵団結成!城塞都市の攻防編~
48/185

030 だからずっと、使わなかったんだってば


俺――ハインリヒ=セイファートは楽しかった。



ジェミナと言ったか?

下の名は何と言うのだろう?


とにかく、俺はコイツの事が気に入った。


何が良いかと言うと、コイツ――丁度良い強さなのだ。



ファング=コードレス?

アレは駄目だ。

俺が相手にするには弱く、弱いもの虐めになってしまう。



レシィ=クリムゾン?

いやいや、もっと駄目だ!

ちょっと強すぎる! 俺が相手にするには余裕が足りない!!



対してコイツは――ジェミナは良い。


程良く強く、程良く――弱い。


戦っていて、自身の技術の高さを再確認させてくれる。

あぁ――何だ、やっぱ俺って強いじゃん、と。



勿論、慢心は命取りだ。



世界は広い。

俺より強い奴なんて、一杯いるだろう。


だが――普段そうやって遜っていると、流石に疲れる。

たまには羽を外して暴れるのも良いだろう。



思いながら――俺はジェミナへと、拳を叩き込む。



「が――ッ!?」



飛んでいくボールの様に、建物の壁へとめり込むジェミナ。

まだまだ【気】のコントロールが甘い。


……不思議な奴だ。


レシィ並みの身体スペックを持っているのにも関わらず、その体捌きは素人丸出し。技術が無い。


一定以下の奴等には脅威かも知れないが……それ以上の奴には全く通用しないぞ。こんなの。



「ふざけッ、ふざけふざけふざけ――ッ!!」

「……」



まぁ、根性だけは認めてやるか。



馬鹿の一つ覚えの様に突進してくるジェミナへ向けて、俺は両手の指を伸ばし、貫手の構えを見せた。



――千手閃天貫手。



「ああ――ッ!?」



ジェミナの身体を貫く、瞬間連続突き。


だが、それだけでは終わらない。


無詠唱・風の第三魔法『エア・クリエイト』


風によって作り出したのは一本の剣だ。


今日はこの剣に――更に強化を重ねていく。


無詠唱多重奏、無属性の誘引を付与。

剣を中心に風属性を一点集中。



顕現するは――暴嵐の剣。



ソレは、空へと浮かぶ雲を巻き込み、強大な竜巻を巻き起こす。



「……ッ!!」



目を見開き、その光景を目撃したジェミナは――叫ぶ。



「ハ、インリヒィ――ッ!!!」


「ハッ」



言えたじぇねぇか。

嬉しいねぇ。


じゃ、またな。



軽く笑いながら、俺はその剣を振り下ろした。







「お、戻ってきた、戻ってきた」



領主の館へと、吹き飛んだジェミナを追って戻ってくる俺。

一応狙ってみたんだが、これがドンピシャ。


「アンタ、何やってんだよ……」

「信じられない事をしますね……本当に……」


ルーシー=スカイバーンと、テレサ=エンフィールから呆れられた反応を頂く。


あらら、見られてたか。

まぁあんだけ派手に戦えば、それも当然か。


まだヘトヘトな感じはするけれど、結構回復したな、この二人。

軽口が叩けるなら上等だ。



「ハインリヒ君、敵はまだ……ッ!」

「あー、分かってる分かってる」



警戒するスネップへと手を振りながら、俺は館の瓦礫へと埋もれたジェミナへ近付いていく。



「さて、どうするか……」



思案する様子を見せると、瓦礫の一部が転がった。



「がああああああッ!!!」



瞬間――飛び上がったジェミナが、俺へと鋭い爪を振り下ろす。


……タフな奴。


考えるまでもなく、身体が自動に対処する。


爪を捌き、足を払い、左腕でジェミナの首元を抑え、俺はコイツを押し倒す。


「くうッ!?」


「もう良いだろう? お前じゃ俺には勝てねぇよ。これ以上は殺すしか無くなっちまう。いい加減お前も観念して――」



言いながら――俺は、右手に感じる柔らかい感触に首を捻る。


「……」


右手はジェミナの胸元に置かれていた。

確かめる様に――俺はソレを揉む。



「あ――ッ」


「……」


柔らかい。男ではありえない感触。

まさか――まさかコイツ。


「お前、もしかして――おん」


「ぐッ!! あああああああ――ッ!!!」


「な――ッ!?」



俺が言い終わる前に、ジェミナの奴は俺の身体を跳ね飛ばす。

火事場の馬鹿力という奴かッ!?


「殺すッ! ハインリヒッ!! 貴様だけは絶対にッ、絶対に!!!」


「――うわ」


そのあまりの剣幕に、思わず俺は顔を青くした。

実力がどうこうとか、そういう問題ではない。

気迫負けだ。


――ぶっちゃけ、怖い。


「ああああああああああああああッ!!!!!」


雄叫びを上げ、俺へと突進してくるジェミナ。


その様子が余りにも怖かった為、俺は思わず禁じ手を使ってしまう。


強すぎて、卑怯すぎるから――封じていた技。



さらば、ジェミナ。



「空間――転移ッ!!」



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