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ハインソード・サーガ  作者: 威風
第2章 ~傭兵団結成!城塞都市の攻防編~
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029 ハインリヒ VS ジェミナ~城塞都市の綺羅星~


――がっかりだ。

――本当に、がっかりだった。



期待していた幼馴染は、僕の理解者には成り得なかった。


元々甘い奴だと危惧はしていたが――決定的だったのは、あの貴族の人間だろう。



本当に、余計な真似をしてくれた。



貴族なら貴族らしく、差別主義に塗れながら汚らしく殺されていれば良かったのに……ッ!


何だ、あの茶番は?


窓からずっと様子を窺っていたが――何度飛び出して行って、縊り殺してやろうと思った事かッ!



そうして何よりの元凶――目の前のコイツはッ!!



「――はは」



ウルフディアンの中でも随一の速度を誇る、僕の追跡を躱しながら、飛ぶように――否、風の魔法で実際に飛び上がりながら、笑い声を上げる人間の少年。



ハインリヒ=セイファート。と、言ったな……ッ!



戦場は既に場所を変え、広さを変え。

城塞都市ポンペイ。その全域へと広がっていた。


建物の屋根を音速で駆け巡る二つの影。


月光に照らされながら跳躍し、僕の攻撃を回避しながら、片手間で眼下に広がる都市の一部へと魔法を行使する少年。


次いで上がるは――【狼】の悲鳴。

困惑した街の人間の声だ。



コイツは――僕を相手取りながら、目に付いた人間共を魔法で助けているのだ。


それも、笑いながら。


その余裕。その態度。



「――気にいらないッ!!」



吐き出しながら、僕はハインリヒへと肉薄する。



「――こっちを見ろォッ!!」

「……ほお?」







「グエン!! あの屋根で戦ってる人ッ!」

「あぁ――隊長だ!助けてくれた……」



言いながら、グエン=ドウェンは地上の惨状へ目を向ける。



――間に合わないと、思った。



暴れる【狼】の集団。その暴徒の一人が、幼い子供へと目を付け、弓矢で狙いを付けていたのだ。


気付いた時には、もう遅かった。


放たれた矢は子供へと向かい――突然大地から出現した樹の枝により、ソレは防がれた。


すぐさま、鎮圧に動く俺達。

取り押さえた亜人の【狼】は自我を喪失している様だった。


恐らくは、麻薬だろう。

暴徒として暴れる連中の中には、こういった手合いも存在するのか。


厄介だと思う反面――それでも何とかなると思うのは、あの人の所為だろうな。



「ハインリヒ=セイファート……」



頭上を飛ぶ星の様に、彼はポンペイの空を舞っていた。

相対する敵も、とんでもない強さなのだろう。

少なくとも自分では、その強さの全貌すら見えてこない。


だがそれでも――不思議と彼が負ける姿は、想像が付かなかった。



「……ッ」



ぶるりと、体が震える。

周囲を見ると、それは皆同じだ。



「はは……」



顔を見合わせながら、笑い合う俺達。


あぁ畜生――触発されてるなぁッ!!



「行くぞ!! まだ避難が完了しない人はいる筈だッ!!」


剣を抜き放ち、号令を出す。



「俺達が――この街を守るんだッ!!!」







「す、凄いッ!! これが無属性ッ!! これが先生の魔術ッ!!」



私――レイド=レヴァノフは、先生の御業を肉眼で目撃し、教会の屋根の上で叫び声を上げてしまう。



「あのー、もうちょっと静かにして貰えない……? 防備してくれるのは助かるんだけど、子供達も、もう寝ちゃったんだよねー?」



教会の神父が窓から首を出し、何かを言ってるようですけれど――何も聞こえませんな!


「都市へと放たれた魔法は無属性の誘導を付与しているのか! であれば、あの空を飛ぶような風魔法も恐らくは同じ原理!? 一般的に風魔法は飛び上がる事は出来ますが、あそこまで滑らかに角度を変える事は出来ない! 顕現した風を無属性の誘導で方向性を与え、推力だけでなく、姿勢制御にも使っているのか! しかも一度発動した魔法の再利用だから、マナの消費も最低限に抑えられる優れもの。あれほどの連続した飛翔を可能とするのは、計算されたマナ・コントロールあっての……」



「あー聞いてないのね……もういいやぁ……」



……一人で熱くなっていた私は、いつの間にか窓にいた神父が、首を引っ込めている事に気が付く。


何と勿体ない。


先生の活躍はこれからが本番だと言うのに。



とはいえ、人間の視力ではそこまで見通せないか……。



「中々、強い……」



目を凝らしながら遠くの戦闘を見ると、先生を相手に白い【狼】の亜人が、肉薄していくのを目撃する。



その間合いは――駄目だろう。


ほれ見た事か。


仕掛けた攻撃を捌かれ、地面へと蹴り落される亜人。


身体スペックは他に例を見ない程に強力だ。それこそ、あのレシィ=クリムゾンにも速度だけなら勝っていると思う。


だが、経験が――技術が足りない。


あれでは己の先生を負かす事など――到底不可能だろう。



「アレなら、私でも勝てる」



呟きながら、私は先生の姿を観察した。

その一挙手一投足。


見逃さぬように……。



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