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ハインソード・サーガ  作者: 威風
第2章 ~傭兵団結成!城塞都市の攻防編~
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006 惨劇~奴隷商の末路~


 城塞都市ポンペイ。


 その夜。普段通りの賑わいを見せるであろう"ブラックマーケット"は、不気味な静寂を漂わせていた。


 仄暗い地面に滴り落ちる、赤黒い液体。


 ソレは、四肢を投げ出し、床へと身動き一つせずに突っ伏した人間から流れ出ていた。


 血。血。血。


 流れ落ち、床を汚す紅き液体。


 商人は勿論、売られていた魔物さえ、その身をズタズタに引き裂かれ――殺されていた。



 現場は凄惨と言っても良い有様であった。

 動く者等、誰もいない。


 否――その場に二人。蠢くものは存在する。


 惨劇の影――極秘の隠し通路のその先に――男は、いた。



「――亜人達を何処にやった?」



 ブラックマーケットの支配人……小太りの男の首を掴み、男は恫喝する様にそう言った。


 裾の破けたジーンズに、赤いジャケット。針の様な黒髪を後ろへと流し、その左頬には真っ黒な火傷の様な痣を浮かばせる。夜であるにも関わらず青いサングラスを掛けたその男は、一目見てガラの悪そうな風体をしていた。


 血と暴力の臭いを漂わせたその男は――苛立ちを隠さず、再度支配人へと問い掛ける。



「売ったのか? 全員……!?」


「ぐぇッ、ぐぇぇえ……ッ!!」


 首を絞める手に、力が入る。苦し気な呻きを漏らす支配人へ舌打ちをしながら、男は少しの加減をしてやる事にした。



「テメエが亜人の子供を大量に仕入れたのは知っているんだ。正直に吐かねぇと……」


「――ヒ!? ヒィッ!! 売った! 確かに昼に売った!! ――全員、売っ払った!!」


「……昼? ……チッ」



 ――ツいてねぇ。

 ――つまりは、行き違いになったって訳か。



「誰に売った!?」


「……し、知らない……ッ!」


「――ッ」


「ぎゃああああああああああ――ッ!!?」



 返答と同時に、男は弱者を売り物にする肥えた豚の腕を――力任せにぶち折った。常人の腕力ではない。



「……もう一度聞くぜ? 誰に売った?」


「ヒグ、ほ、ほんと! 本当に知らないんだ! 金持ちのガキだった! それしか――」



 ――金持ちの、ガキ?

 ――それしか知らない、だぁ??


 ――そいつは何とも、無責任なやり口じゃねぇのか?



「テメエは、誰とも知れねぇ素性の奴に、亜人の子供を売り飛ばしたってのかッ!! あぁッ!?」


「ヒ、ヒィィィ――ッ!?」



 怒りのまま、男は支配人の背後の壁を殴り付ける。レンガで出来たその壁は、厚紙を破ったかの様に大穴が空いている。



「一億イラを積まれたんだ……ッ! だ、だから――ッ!!」


「――」



 言葉と同時に。

 男の左頬から――黒炎が放出される。


 黒炎はやがて、男の手、足、体、全体へと行き渡り――その影を異質に変貌させた。



「な、な、な……ッ!?」



 炎の中より姿を現したのは――黒銀の毛並みを持つ、一匹の人獣であった。


 亜人。その中でも【狼】と総称される種族。

 正式な呼称はウルフディアン。


 黒銀の毛並みを持つ【狼】は――その中でも、最上位の長の血統であると言われていた。


 陽炎にて人の姿を真似るウルフディアン。彼等が真の姿を現す時は、獲物を狩り尽くす時である。



「……ッ」



 ブラックマーケットの支配人は、その瞬間、己に起こる事の全てを理解し、何の抵抗も出来ぬまま――生きたまま、その身を食い千切られるのであった。



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