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ハインソード・サーガ  作者: 威風
第2章 ~傭兵団結成!城塞都市の攻防編~
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004 時は金なり~貴族とは面倒臭い~

城塞都市ポンペイ――領主の館の貴賓室。

高級そうなソファに座り、紅茶を啜りながら――俺は、もう帰りたい気持ちで一杯だった。


「少しだけ待っててくれ」


そう言って、もう十分以上は経つんじゃないのか?

机に出された高級そうな茶菓子を食いながら、俺は亜人の子供達の姿を頭に思い浮かべる。


早いとこ飯の買い出しに行きたいんだがな……。

取り合えず持って帰れそうな菓子は袋に入れて……っと。



俺がそうこうとしていると、貴賓室の扉が二回ノックされる。


やっと来たか……。


「失礼」と言った声と共に、扉を開け、姿を現す貴族の青年。


金髪の髪に、もみあげをカールさせた様な髪型。

華奢な体躯に裾口が大きく開いたシャツを着た彼は――大袈裟な所作で俺へと一礼する。


「スネップ=アノンドロワだ。僕は気絶していたので良く知らないが――役立たずのメイドから報告は聞いている。ごろつきから、僕を助けてくれたのだろう?」


カツカツと、踵を鳴らしながら室内を歩く青年――スネップ。


「僕は人と人との貸し借りが嫌いだ――君のその行動……恩に着るつもりは毛頭ない」

「……はぁ」


俺としても、そこはどうでも良いんだが……。

大体、原因となったのも間違いなく俺だし。


「だがしかし! 働きには報酬を与えなければならない! アノンドロワ家の者として、僕は君の願いを一つ聞こうと思う……何か、願いは無いかね……?」


「……」


願い。

願いと言われてもな。



「それじゃあ――もう帰っても良いか? 飯の準備をしなければいけないんだ」



溜息を吐きながら、俺はその場から立ち上がり、貴賓室の扉へと歩き出す。



「ちょちょちょちょ――ッ!!!」



――が。何やら奇声発したスネップ=ガノンドロワにその行く手を遮られる。



「君ぃ……僕の話を聞いてたかい!?」

「あぁ、願いだろう? ……だから帰るよ」


つーか帰らせろ。


「駄目だって!? まだ何にもお礼してないじゃないか!? 帰っちゃ駄目だって!!」

「はぁ……? じゃあ思い付かないからツケにしてくれよ?」

「嫌だ! そんな事したら僕がモヤモヤする!!」

「……」


コイツ、結構な我儘野郎だな。


「だったらそうだな……あのメイドくれよ」

「メイド? ルーシーの事か? 確かに黙っていれば、アイツは中々な上玉だが……」


ふぅん? ルーシーって言うのかアイツ。

てか、何か変な勘違いをされてるな。


「言っとくが、傭兵団に欲しいっていう話だぞ? 必要なのは奴の腕っぷしだ」

「傭兵団? 君はその歳で何処かの傭兵団に入っているのか?」


何だか質問攻めだな。

まぁいいか。


「違う。これから作るんだ。――団長が俺の傭兵団をな」

「……」



俺の言葉に、一瞬唖然とした表情を見せるスネップ。



「君が? ……団長?」


「ああ」


「……助けて貰っておいて、こう言うのも何だけど……ごろつきとの喧嘩で勝ったくらいで、調子に乗らない方が良いよ? 僕は立場上、王都の騎士団にも顔を出した事があるんだ。本物の戦争をしている人間というのは、やはり普通の人間とは違うものさ」


「……」


「悪い事は言わない。傭兵団を作るだなんて、馬鹿な事――」


「――ストップだよ。お坊ちゃん」



スネップ=アノンドロワの言葉は、お盆を持った目付きの悪いメイドに遮られる。

お盆の上には、二人分のケーキが乗せられている。


一つを俺へ。

もう一つをスネップへ。――やると見せかけて自分で食うメイド。


唖然とし、怒りの表情を見せるスネップだが、メイドは我関せず。

随分と舐められているなぁと、他人事なら思ってしまう。



「悪い口には、ケーキは合わないねぇ」

「お、お前! メイドの分際で舐めた事を……ッ!」

「……フン。メイドにしたのはアンタの趣味だ。アタシはただの護衛さ」

「その責務だって果たせなかっただろうがッ!?」

「違いない!……クククッ!」


何を言っても気にした素振りを見せないメイドに、スネップは疲れた顔で諦める。


「ルーシーって言ったか。……下の名は?」

「スカイバーン。――アタシもアンタの名を聞きたい」

「ハインリヒだ。ハインリヒ=セイファート」

「……良い名だ。覚えておくよ」

「おい、何を勝手に……」

「――お坊ちゃん」


口を挟むスネップに向けて、ルーシー=スカイバーンは正面に立って言葉を発する。


「ハインリヒは強いよ」

「……ッ」

「ごろつき共をやった手管――未だに私でさえ理解できない」


ルーシーは、俺へと視線を向ける。


「何も見えなかった。気が付いたら倒れていた。正直――屈辱だよ」

「……種明かしをした方が良いか?」

「そういうのが余計腹立つ。ま、そういう訳で見当違いな発言は止めな。恥掻くだけさ」


主人へと言葉を返すルーシー。

だが、スネップ=アノンドロワに返答は無い。


代わりに――



「……まてよ……ハインリヒ?……何処かで……」



思考に没頭しながら――ぶつぶつと、何かを呟き――



「――あぁ!?」



と。何か思い出した様な声を出す。



「――ハインリヒ=セイファートッ!!」

「うお!? 何だいきなり!?」



がっしりと。

突然俺の名を叫びながら、両肩を掴んでくるスネップ。



「礼は後日必ず!! ――だから、また来てくれ!!」

「……はぁ?」

「ルーシーを使いに出す! すまないが、僕は用事が出来た!!」


「また会おう!! ハインリヒ!!」


そう言って、慌ただしく貴賓室へと出ていくスネップ。




「……」




取り残された俺とメイドは、思わず互いに見つめ合う。



「……とりあえず、送るわ」

「……ああ」




何だか色々と、引っ掻き回された一日だったなぁ。


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