33話 一つの決着です。
こんなはずではなかったんです・・・
という事が多い私だけれど、本気でここまでとは思っていなかった。
夏の長期休暇(ようするに夏休み)にドロードラング領で一週間くらいの合宿をしようと思うんだけど、と誘ったら劣等特別クラス全員から参加申込があった。
一週間という期間で劇的な変化は起こらなくても想像力の足しにはなるだろう。残りの休みは里帰りしてね。
そして合宿あけにミシルの村へ行く予定。
事前にクラウスに相談したところ合宿人数三十名までOKをくれたけど、十一人だからと笑った私。
まあせっかくだから、仲良くなった他クラスの何人かを誘おうと声を掛けたら、集まりました約二百人。
はあ!?
合宿だよ!?
遊びじゃないよ!?
畑も耕すよ!? 狩りにも行くよ!? 雑草も取るよ!?
アイス先輩たち!あんたら社交シーズンは!? っていうか、お貴族様は金を出せっ!
寮の料理人たちもそっと手を上げてるし。だから観光じゃないってば!
エンプツィー様!? アンタまざらなくても行けるでしょう!
マージさん!? 旦那様はいいのかぃ!?
学園長他先生方!? エンプツィー様に自慢されて気になっていた!?
いやアンディ、笑ってる場合じゃないって・・・
今回はとうとうアンディもお付き君たちと専属シェフと共に外にいます。王子の登場に皆ド緊張だったけど、食べ物の匂いが漂うと緊張は弛んだよう。穏やか美人だから安心するんだろうな。
エンプツィー様を締め上げて、また丸一日の休日をもぎ取り、本日アンディのリクエストによる外ご飯。
ええ、米です。
焼おにぎり二種(醤油、味噌)と、塩むすびと、豚汁です。味噌がついに学園デビュー!
そしてわりと好評。
豚汁の一口目は顔をしかめるけど、肉の出汁がいいのかお代わり続出。いえ~ぃ。
焼おにぎりのおこげを美味しいと言うなんて通だね君たち。嬉しいよ!
だんだんと会を重ねる毎に参加人数が増えてきたので、もう寮の食堂から一番デカイ鍋を借りてます。三つ。米は先に炊いて保存。今回の野菜も領や寮の余り物。根菜は持つからね! 肉は買いました。エンプツィー様が!
豆腐とこんにゃくがまだ見つけられず、私的には具が足りないけど、根菜と茸と豚肉の具だくさんの汁物食ってこれからの暑さを乗り切ろう!
あ、調理場には日光が当たらないようにテントを組みました。
そうして焼おにぎり豚汁パーティーの後、平民生徒限定ドロードラング合宿参加権争奪ジャンケン大会が、「うちは貧乏子爵だーっ!!」と喚くアイス先輩その他を無視して開催。
と、今からジャンケンするよというタイミングでクラウスから連絡が。
『騎馬の里の空いた土地にテントを張りましょう。騎士科は野営も学ぶはずですから、男子は外で寝泊まりということにしてはどうでしょうか。予備の五人用テントが五張りありますよ』
「いや、男子をそんなにってか、食べ盛りをそんなに連れて行って大丈夫なの?」
『騎馬の里の事はハンクから言われたのですよ』
料理長が?
ならば良し!
ということで、特別クラスを除いた十九枠+追加のテント二十五枠=四十四名分。
なんだけど、乗り物の搭乗人数制限の関係で、最大四十名に。
女子は屋敷で雑魚寝十五名、男子はテント寝二十五名のジャンケンに変更。男子に限り貴族枠を五名分に。
あ、ミシルは基本私とセット。
おお、アイス先輩が勝った。良かったね。
いやぁ賑やかになりそうだな~。
「僕も行っていい?」
アンディがこそっと言う。
実はアンディたち(主に侯爵夫妻用)の部屋はすでに屋敷に完備されている。狭いけど。だからアンディが来るのはいつでもOK。
「・・・あまり構えないよ? いいの?」
「いいよ。仕事してるお嬢も好きだからね」
「ぶっ! 照れるなぁ! 頑張るね!」
「うん」
ああ。その笑顔が百人力だよ、アンディ。
***
「貴女いい加減にしなさいよ!!」
ぱっちーん!
朝。寮食堂での朝食中に、クリスティアーナ・カドガン嬢に平手打ちをかまされ、ウィンナーが口から飛び出した。
私の口を飛び出したウィンナーは放物線を描いてさっきまで乗っていた皿に着地。
・・・。
「ぁあ゛っ!? 人が飯食ってる時にわざわざ平手打ちするくらい卑怯な事をするなら、椅子から転げ落とすくらいに力入れろぉっ!! 軟弱なビンタで私の飯の邪魔をすんなあっ!!」
「お嬢、そこじゃない」
馬っ鹿野郎マーク! 食事は美味しく食べないともったいないでしょ! アンディとの待ち合わせにも遅れるし!
ふん! と言ってまた食べ始める。皿の上だからセーフよセーフ!
「無視しないで!」
「なぜ非のある人の話をわざわざ聞かなきゃいけない? ざけんな!」
「お嬢様、口調」「いや、ルルーもそこじゃないよ?」
「ならば非があるのは貴女でしょう!? サレスティア・ドロードラング! 王太子殿下の婚約者に成ろうだなんて! どこまではしたないの!?」
・・・・・・は?
マークとルルーも目が丸くなっている。
クリスティアーナ様はいつもとは違い、鼻息が荒く、興奮のせいか顔も赤いし、髪が少し乱れている。いつも冷めた感じの目力が凄い。
なんだこれ。
え、マジですか?
「クラウス!」
『おはようございますお嬢様。どうかされ「私が王太子の婚約者になるって何の事?」
『は? 聞いておりませんが』
「ありがと、忙しいとこごめん! 詳細は後で」
ウインナーを飲み込み、渋々と立ち上がってクリスティアーナ様と向かい合う。
ほうほう、それでも今日も朝からお美しいね。食事の邪魔をしたからその美貌は効かねぇぞ、こるぁっ!!
「そんなお話、私にはありませんが、どちらからお聞きになられたのですか?」
「しゃあしゃあと・・・王城の重鎮の間では四神の力を使える貴女がルーベンス殿下と一緒になればと話に出ているそうよ? 国母に成りたくて貴女がそう差し向けたのでしょう!?」
国母!?
「そんな面倒な職業成りたいわけあるかーっ!! 領地の事もまだまだ手が掛かるのに、そんな事考えるか!!」
「じゃあ何でそんな噂があるの!? アンドレイ様だけじゃなくて、シュナイル様まで! どれだけ私の」
!! 亀様! エリザベス姫の部屋へ!
《承知》
「好きな人ばかりを奪って行くのーーっ!!」
叫んだクリスティアーナ様の前には登校準備を終えびっくりしたエリザベス姫がいた。




