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過去の話の設定的な感じですね。
上関原子力発電所の件はフィクションです(になると良いな)
彼――菊川レイを殺したのはぼくだ。少なくともぼくはそう思っている。
幼くして危険人物と判断された子供達は矯正施設に入れられる。ぼくとレイ、そしてユーリイはそこで育った。何故ぼく達が施設に入れられたかというと、それはぼく達が特殊な環境下で育ち、特殊な体質を持っていたからだった。
「THE・DEAD」の暴走事件は死神事件と呼ばれている。死という名のナノマシンウイルス。死神事件と名付けられた惨劇。2050年は「死」が最も身近だった年だったと呼ばれている。勿論、文明が発展してから、の話だが。
この惨劇によって地球の人口の約三分の二が死んだと言われている。生き残った人類は、
1,感染前に「THE・ALIVE」を入れた者
2,特殊な気候に住んでいた者
3,特殊な体質だった者
の、どれかだ。ぼく達は勿論三番目だ。
ぼくが生まれたのはヤマグチだった場所だ。かつて日本という「国」の中の「県」だった場所。しかしもうぼく達は「国」という政治形態を感じることはない。特殊な体質を持った人々は、ヤマグチで自治都市を作り、生活した。楽園社会に見つかるまで。
そして、白髪の少年、レイに出会った。
ぼく達の自治都市には子供がぼくとレイしかおらず、ぼく達はすぐに仲良くなった。そして間もなく楽園社会に見つかって、楽園社会のシステムに組み込まれた。
ここで、疑問があると思う。何故50年以上もの間、楽園社会はぼく達を見つけられなかったのだろう、と。理由は簡単、「THE・ALIVE」が日本まで届かなかったからだ。
「THE・ALIVE」の開発者はロシアの軍事関係者だった。というのも、工作員を研究所に送り込み、原因を調査したのがロシアの諜報機関だったからだ。そしてロシアはWHOに「THE・ALIVE」を提供し、世界中に「THE・ALIVE」は配られた。しかし、日本には配られなかった。
なぜなら、日本がその時、日本全域に被害が及ぶほどの大地震による大打撃をうけたからだ。ほとんどの空港は使えなくなり、外国と日本とのアクセスが一切途絶えた。更に運の悪いことに、日本へ向かった救助隊の中に「THE・DEAD」が潜伏している隊員がいたのだ。「THE・DEAD」の被害が出始める二日前の事だった。それが原因で、生存者の確認まで時間がかかることになった。
ぼく達が特殊な体質を持ったのはぼくの祖父母にあたる世代が放射能の影響をうけたからだ。東日本大震災の後に、絶対安全を掲げる原子力発電所が市民の反対を押し切ってヤマグチの上関に設立された。しかし、今回の地震は東日本大震災をはるかに上回るとんでもないスペックの地震だった。地震と津波の影響を受けた上関は核燃料によって汚染された。これが東日本大震災より厄介だったのが、地震とウイルスによるWパンチで汚染をとめる余裕が無かったからだ。そのせいで、ヤマグチの上関に近い地域は汚染され、そこの人々は放射能の影響を受けた。そして、それが結果的に特殊な体質を生んだ。
放射能による何らかの影響をうけた人々の体では、「THE・DEAD」は活動が衰えた。つまり、特殊な体質によってヤマグチの人々は救われたのだ。
しかし、その体質の人々は楽園社会においては苦しむことになる。その体質の人は普通に過ごしていても測定値が高くなるのだ。
その理由として有力なのが、遺伝子に組み込まれた「記憶」だ。
測定値は絶望的な状況にあると上昇する傾向がある。遺伝子に組み込まれた絶望や恐怖の「記憶」が測定値を高くしているのだ。
ぼくらは施設に入れられ、教育を受けた。そこでは英語を基本言語として習うので、そこの子供達とはじきに会話ができるようになった。そこでユーリイと出会ったのは15歳のころだ。ぼく達三人は大概一緒にいた。
14歳のころから、レイは本を読み漁り始めた。レイが自らのイデオローグを語りだしたのはその時からだ。