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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第六章:神獣眷属と歩む日常、あるいは世界を揺るがすペットライフ編

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第376話:秋休みの朝餉と、絶対安寧不可侵の休日

チュン、チュン、チュン……。

抜けるような秋晴れの青空から、柔らかな陽光が木造家屋の縁側へと燦々と降り注ぐ、木曜日の午前八時半。

球技大会の振替休日を迎え、学校が休みの如月拓也は、二階の六畳間で大きめの毛布を頭から被ったまま、心地よい二度寝を貪っていた。

「……ん……ふぁ〜あ……」

少年の足元には、夜通し極上の体温で冷えやすい足先を温め続けてくれた体積三倍の巨大綿飴銀狼ザイオンが、フカフカの毛並みを沈み込ませて完璧な足温器を務めていた。

アビスゲート柔軟剤の甘いフローラルの香りがふわりと漂う中、拓也がゆっくりと瞼を開けると、ザイオンの銀色の耳がピクリと跳ね上がり、大きな瞳が嬉しそうに細められた。

「キャンッ……!(我が主、お目覚めになられましたか! 今朝も安らかな眠りをお届けでき、至上の喜びにございます!)」

「おう、ザイオン……。マジで毛布よりお前の背中の方が温けぇわ……」

拓也は寝癖のついた黒髪をガシガシと掻きながら、ザイオンのモフモフの首元をワシャワシャと力いっぱいに撫で回した。

ザイオンは喉をゴロゴロと鳴らしてとろけそうになりながらも、拓也が布団から起き上がると同時に、シュウウウッと純白の光の粒子を纏った。

昼間の活動時間に合わせて、グレーのパーカーと黒のカーゴパンツを着こなした凛々しい【銀髪狼耳の青年獣人】の姿へと滑らかに変身を遂げる。

首元には、昨夕授与されたばかりの純プラチナ鑑札プレートと、拓也の赤ドット柄バンダナ、そして『特級不可侵Fランク』の金ピカプレートが眩しく輝いていた。

「よし、今日はずっと家でゴロゴロするぞ……」

拓也はスウェットのポケットに手を突っ込み、階段をとんとんと下りてリビングへと向かった。

一階の台所では、黄色いヒヨコ柄のエプロンを着けた如月三月が、お鍋を火にかけながら楽しそうに鼻歌を歌っていた。

その横には、三月のお下がりである黄色いダッフルコートを着た猫耳少女・ルルが、踏み台に乗って小さな木製のお椀をコトコトと並べている。

換気扇の枠には、首に毛糸のミニマフラーを巻いたミニドラゴン・ポチがちょこんと両足を揃えてスタンバイしていた。

「あ、拓也! おはよう! よく眠れた?」

三月が満面の笑顔で振り返った。

「おはよう、三月。目覚まし鳴らさずに寝られるって最高だな……。

……ん? なんだ、朝からすっげぇ香ばしい匂いがすんな」

拓也の鼻腔をくすぐったのは、こんがりと焼き上げられた醤油の香ばしさと、昆布と鰹の上品な出汁の湯気であった。

「えへへー! 拓也、今日はお休みだからね!

昨日の残りのご飯で作った、特製の【焼きおにぎり出汁茶漬け】だよーっ!」

三月が誇らしげに食卓へ運んできたのは、大きめの陶器の丼であった。

丼の中央には、魚焼きグリルで表面をカリッと香ばしい琥珀色に焼き上げた焼きおにぎりが堂々と鎮座している。

その上には、ほぐした鮭の身と刻み大葉、白ごま、そしてたっぷりの刻み海苔が散らされていた。

急須からアツアツの特製和風出汁が注ぎ込まれると、ジュワァァァッという心地よい音と共に、香ばしい湯気が一気に立ち上った。

「うわ……朝から焼きおにぎり茶漬けかよ! 最高じゃん!」

拓也の目がカッと見開かれた。

「いただきます!」

拓也はお箸を割ると、まずはスプーンで焼きおにぎりの端を崩し、出汁をたっぷり吸ったお米ごと口の中へとかきこんだ。

ハフッ、ジュワッ……モグモグ……。

「…………っっっ!!!!」

口に入れた瞬間、拓也の全身の力が心地よくほどけていった。

その口から、魂の底から絞り出されたような感嘆の叫びが漏れ出た。

「…………っっっ、うっっっっっっっっっっま!!!!」

少年の頬が、至福の喜びに緩みきった。

「なにこれ……! 表面がカリッとお煎餅みたいに香ばしいのに、出汁を吸ったところがモチモチしててたまんねぇ……!

出汁の優しい旨味に、鮭の塩気と大葉の爽やかな風味が完璧に合わさって、寝起きの胃袋にじんわり染み渡ってくるぞ……!」

ガツガツッ、ズズズッ……!!

拓也は、無我夢中でスプーンとお箸を動かし、あっという間に丼一杯の出汁茶漬けを飲み干すように平らげてしまった。

「えへへ、ポチちゃんがね、換気扇の上から焼きおにぎりの表面を【遠赤外線】でカリッと焼いてくれたんだよー!」

三月が嬉しそうに微笑みながら、小皿に小さくほぐした鮭の身と、薄味の出汁でふやかしたご飯を少し取り分け、床の三匹の前に置いてやった。

「はい、みんなもお疲れ様! 塩分控えめのところ、冷ましてあるからね!」

「キャンッ……!(あぁ……主と同じ朝の恵み……五臓六腑に染み渡る神饌……!)」

「にゃふぅ……お出汁がすっごく美味しくて、体がポカポカするのにゃ……!」

「キュピィィ……(和風出汁ト焦ガシ醤油ノ調和……生キテテ良カッタデスッ!)」

神獣たちは、その一口の温もりを涙を流しながらハフハフと味わい、拓也の足元で幸せそうに体を寄せ合った。

「ぷはーっ! 食った食った! 身体が温まったわ!」

お茶をズズッと飲み干した拓也は、コタツの前に腰を下ろし、録画してあった深夜アニメの再生ボタンを押しながら、大きく伸びをした。

テーブルの上には、漫画の単行本とゲーム機のコントローラーが完璧な配置でスタンバイされている。

「……あー、最高だな。学校もないし、部活もない。

今日という日は、一歩も外に出ずに、コタツで漫画読んでゲームして、昼寝して過ごすぞ」

拓也は、縁側のガラス戸の向こうの青空を見つめながら、至極気だるそうに、しかし心底からの本音を呟いた。

「なんかさ……昨日から近所の路地がやけに慌ただしいっていうか、パトカーやら黒塗りの車やらが遠くでウロウロしてんだよな。

せっかくの休みなのにさ、変なセールスマンがピンポン鳴らしてきたり、外でバタバタ騒がれたら、せっかくの休日が台無しじゃん。

今日一日はさ……誰一人としてこの家の敷地に近づけさせたくないよな。

不審者もセールスも、門扉の手前で音もなく全部シャットアウトして、家の中を【完全な絶対不可侵の休日】にしてぇよ……むにゃ」

拓也は、コタツに潜り込んで漫画をパラパラとめくり始めた。

何気ない、ただの「休日は邪魔されずに家でゴロゴロしたい」という男子高校生の気まぐれなぼやき。

しかし――。

その頃、東京・新宿の日本探索者協会本部、最上階の作戦統括室。

『――ぎゃあああああああああっっっ!!!!』

静寂を破るように、オペレーターのクロエ・アーヴィングの絶叫が木霊した。

フロア中の巨大モニターが、一斉に眩いばかりの純白の【絶対不可侵コード】に染まり上がる。

「ク、クロエ殿ッ! 何事だ!?」

日本探索者協会本部長・神宮寺蒼太が、氷の長刀を床に突き立てて身を乗り出した。

その横で、アメリカ最強のSランク探索者「雷帝」レオン・カーターが、葉巻を取り落として叫ぶ。

「た、拓也様より……本日一日を指定した、新たなる超特大神託が下されました!

【絶対安寧不可侵領域宣言(パーフェクト・サンクチュアリ・ホリデー)】、並びに【全外来接触の完全拒絶令】ですッ!!」

クロエが、血走った目でスクリーンをバンッと叩いた。

「拓也様は仰せなのです!

『本日は、全宇宙の調律者が現世の安息を愛でる聖なる休息日!

敷地の門扉より内側へのあらゆる接近者、セールス、不審者、下界の俗物どもを、音もなく原子レベルでシャットアウトせよ』――とッ!!」

「な、何ということだ……ッ!!」

神宮寺が、顔面を蒼白にして後ずさった。

「あのお方は……世界を救いし激闘の果てに、ようやく『完全なる休養』を求められておられるのだ!

それを妨げることなど、全人類の存亡に関わる大罪に他ならん!」

「全軍へ最優先超戒厳令!!」

レオンがデスクの通信機を鷲掴みにして咆哮した。

「極星、八咫烏、並びに都内全域の探索者パトロール部隊へ通達!

本日、練馬区如月邸を中心とする半径二キロメートルを【絶対防衛聖域】に指定!

宅配便、郵便配達員、自治体の清掃車に至るまで、事前に当協会が身元を完全保証した特務エージェントの変装に差し替えろ!

怪しい不審者、裏社会の残党が一歩でも聖域の境界線を越えた瞬間……あのお方の視界に入る前に、一秒で虚無へ消去しろッ!!」

世界最強の特務組織が、少年の「家でゴロゴロしたいから誰も来ないで」という呟き一つによって、空前絶後の「鉄壁の休日警護作戦」へと突入した瞬間であった。

しかし――。

この「如月家の静まり返った休日」を、最大の好機と捉えた最凶の闇が、すでに動き出していた。

如月邸から五百メートル離れた、住宅街の地下下水道。

青白い生体発光に照らされた暗闇の中に、異様な殺気を放つ八基のポッドが音もなく並んでいた。

彼らは、昨夕成層圏で母艦を失ったアラクネ機関の背後に君臨する真の元凶――【原初の狂気錬金術師】が直属として従える、生体暗殺特化キメラ部隊『ネザー・キマイラ』!

ザイオンやルルを製造した初期実験のデータを基に、痛覚を完全に切除し、古代の魔獣オルケストラの細胞を組み込んだ、純粋なる殺戮マシンであった。

ポッドのハッチがプシューッと開き、中から這い出てきたのは――黒光りするキチン質の外骨格に覆われ、四本の腕に高周波ブレードを生やした、人狼型の異形キメラたちであった。

(……造物主様よりの絶対命令を受信)

リーダーのキメラが、複眼を血のように赤く明滅させた。

(ターゲットは、裏切り者の最高傑作【フェンリル】、並びに初期型【キャット】。

探索者協会の監視網は、地上に集中している。

我が部隊は、地下の水道管を腐食酸で溶かし、如月邸の庭先の真下から直接【空間位相転移】で奇襲を仕掛ける。

無能力者の人間どもを首から刈り取り、フェンリルの核を摘出せよ……!)

八体の異形キメラが、音もなく床のコンクリートを透過し、如月邸の庭先へと向けて地下から侵入を開始した――!

午前十一時――如月家・縁側。

秋の柔らかな木漏れ日の中、コタツに入った拓也は、漫画のページをめくりながらスナック菓子をパリポリとつまんでいた。

三月は台所で鼻歌交じりに昼食のうどんの準備をしている。

縁側の板張りの上では、グレーのパーカーを着た銀髪青年狼獣人のザイオンが、拓也の足元に寄り添いながら、静かに目を閉じていた。

その横には、三月のお下がりを着たルルが、がま口財布を抱きしめてコタツの温もりにうとうとし、ポチが縁側の柱の上で翼を休めている。

その、まさに刹那――。

ピクッ。

ザイオンのピンと立った銀色の耳が、微かに跳ね上がった。

真下――庭の芝生の地下三メートルから、腐食性の強酸と、忌まわしき【造物主の魔力コード】が急激に浮上してくる気配を捉えたのだ。

(……この波長……! かつて我らを冷たい培養カプセルに閉じ込め、解体と再構築を繰り返した……あの悪夢の研究所の残り香……!)

ザイオンの銀色の瞳が、漆黒の闇よりも冷徹な光を帯びてスッと開かれた。

その視線が、縁側の足元――自分が履いていた、何の変哲もない百円ショップのスリッパへと落とされる。

(拓也様は仰せられた……『今日一日は、誰一人として敷地に近づけるな。完全な絶対不可侵の休日にせよ』と。

そして今、あのお方は至高の漫画とコタツの平穏を満喫しておられる……!)

ザイオンの全身の銀毛が、怒りではなく、主の安寧を守るための【完全な静寂】へと研ぎ澄まされた。

(我が主の聖なる休日を……貴様らのような出来損ないの泥人形どもで汚すことなど、万死に値する……ッ!!)

ザイオンは、コタツで漫画を読む拓也の視界を遮らないよう、ただ右足のスリッパの踵を、縁側の板張りの上で【トン】と軽く一度だけタップした。

拓也直伝の「至高の脱力(ぽふっ)」。

振動ゼロ。

音量ゼロ。

しかし――放たれた衝撃波は、木造の床を通り抜け、庭の地下空間だけに向けた【局所事象反転重力網】として垂直に撃ち込まれたのだ。

シュバッ……!!

地下三メートルから地上へ抜け出ようとしていた八体の異形キメラたちは、何が起きたのかすら理解できなかった。

浮上しようとしていた四肢の分子結合が、ザイオンのタップ一つによって瞬時に反転。

自らが放っていた腐食酸ごと、地下水脈の泥水一つ跳ね上げることなく、内側へ内側へとギュウゥゥッと圧縮されたのだ。

「ギ……ッ!?」

さらに――縁側の柱の陰から、ルルがふわりと音もなく身を乗り出した。

「拓也の漫画の邪魔をするななのにゃーーっ!」

ルルは、がま口財布を胸に抱いたまま、地中に向けて右手の白い肉球を【ぽふっ】と優しくかざした。

シュウウウウウウウウッ……!

触れられた八体の異形キメラの生体組織、高周波ブレード、外骨格に至るまでが、火花一つ散らすことなく完全に分子レベルで分解され、十センチ四方の綺麗な「アルミ缶サイズの四角い金属ブロック」八個へと完全無力化されたのだ。

「キュピィッ!(回収班、どうぞ!)」

柱の上からポチが小さく合図を送ると――。

スッ……。

芝生の影から不知火凛率いる八咫烏の部隊が音もなく染み出し、ちりとりでその金属キューブをサッと回収すると、一秒で影の底へと消去していった。

庭の芝生には、土煙一つ上がっていない。

音量、完全ゼロデシベル。

所要時間、わずか〇・四秒。

造物主が誇る最凶の暗殺キメラ部隊は、男子高校生の漫画のページをめくる音一つ乱すことなく、完全にこの世から「お掃除」されたのである。

「ふぅ……! 拓也、気づかなかったのにゃ!」

ルルが小さな胸を撫で下ろし、ザイオンの膝元にちょこんと座り込んだ。

「キャン……(うむ。我が主の休日は、完璧に守られたのだ)」

ザイオンは満足そうに微笑むと、再び静かに目を閉じて主の足元を温め始めた。

「……ふぁ〜あ。なんか、今日めちゃくちゃ静かで落ち着くなぁ」

漫画を一冊読み終えた拓也が、大きくあくびをしてコントローラーを握りしめた。

外からは、秋の心地よい風がスーッと吹き抜けてくるだけ。

怪しい物音も、迷惑なセールスのチャイムも、一切聞こえてこない。

「お前らも、静かにゴロゴロしてて偉いじゃん」

拓也は笑うと、足元に寄り添う青年獣人ザイオンの銀髪の頭を、ワシャワシャと力いっぱいに撫で回した。

さらに、膝の上のルルの猫耳の付け根をくすぐり、肩に乗ってきたポチの頭をポンポンと叩いてやる。

「くぅ〜ん……(あぁ……拓也様……!)」

「にゃふぅ……♡」

「キュピィィ……(至高ノ平穏……生キテテ良カッタデスッ!)」

「よし、じゃあ昼飯食ったら、午後はゲームの続きやるか!

三月ー! うどんできたー?」

「はーい! 拓也、揚げ玉と温泉卵たっぷりの特製ぶっかけうどんできたよーっ!」

台所から三月の明るい声が響く。

世界を揺るがす造物主の刺客を、スリッパのタップ一つで更地に変えた最強の姉弟と神獣たち。

澄み切った秋の木漏れ日に包まれた如月家には、どこまでも温かで、どこまでも幸福な休日の笑顔が満ち溢れていたのであった。

(第377話へ続く)


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